第102話 双竜
アルクス達がスペルビアをゴーレムから救い出し、全員揃った時に絆の試練最後の関門として、オクタとオクトが変化した双頭の竜が現れた。
周囲に風が吹き荒れる程の勢いで尻尾を振り回す双竜。
『俺より前に出るなよ!』
バルトロが難なく受け止めるも障壁の外側は地面が抉られる程の威力だった。
『バルトロ兄さん以外があの尻尾に当たるとまずいね。基本的に距離をとって戦おう。
スペルビアはここぞという時に備えて力を溜めておいて。』
『わかった!』
アルクスの指示に対して瞬時にアリシアが短剣を投擲したが、双竜は簡単にはたき落としてしまった。
『大きい体の割にちゃんとよく見えているみたい…』
『それならこれで!水迅穿!』
アルクスが撃ち出した岩をも穿つ一撃は竜鱗を削れはするも、大した出血もなくダメージを与えている様子はなかった。
傷付けた箇所もすぐに出血が止まり、少し光を放ったかと思うと元に戻っていた。
『傷が元に戻っている!?もしかして再生…?』
『小さい傷が駄目なら大きな傷を作れば良いでしょ!ニンブス、お願い!』
クリオの合成魔術とニンブスの嵐により、氷の礫と風の刃が吹き荒れる竜巻が出来上がり、さらに中では放電現象も発生していた。
『これでどう!』
竜巻が双竜に襲い掛かり、全身にダメージを与えるも少し時間を置くと徐々に傷が再生していった。
『そんなぁ…』
ニンブスとの合体攻撃が決め手にならず、気落ちするクリオとそれを慰めるニンブス。
『1人ずつ攻撃してもダメだ、これは絆の試練ってことは仲間同士の協力が肝なはず。
回復する隙を与えずに畳みかける様に連携してみよう!』
『でもどうやって!?』
バルトロが攻撃を受けている間、アルクスは仲間達に連携内容を伝える。
『は、早くしてくれ。結構しんどいぞ!』
アルクス達が話し合っている間もバルトロは双竜の尻尾振り回し、爪による切り裂き、ブレスなど様々な攻撃を耐えきっていた。
『大丈夫、今終わった!何をするかはナトゥが耳元にいったから聞いて!』
ナトゥがバルトロの肩に座り、これからやることを伝えた。
『あぁ、わかったぜ!』
バルトロの返事に併せてヘルバが双竜の足元に蔦を絡み付かせた。
力ずくで蔦が引きちぎられるも何重にも巻きつけることで、一瞬動きを止めることに成功した。
『よし、喰らえ!』
双竜の足が止まった瞬間にバルトロが今まで溜め込んでいたダメージを衝撃波で撃ち出した。
想定以上の衝撃に双竜がよろめいた瞬間にナトゥが地面をわずかに隆起させることで、双竜は体勢を崩した。
『えい!』
双竜の隙ができたところにアリシアが片方の頭の目と口を目掛けて連続して弓を射た。
矢は当たった瞬間に爆発し片方の竜の頭が苦しみのたうちまわった。
『今よ、ニンブス!』
クリオとニンブスが再度氷と風と雷の竜巻を生み出して、双竜の全身に大きなダメージを与えた。
竜巻が散ったタイミングでスペルビアとアルクスが飛び出した。
『龍気解放!いくよ!』
『あぁ!竜爪斬!』
スペルビアとアルクスがそれぞれの頭に向かって全力で斬りかかった。
双竜の硬さもあり、反発する衝撃で2人は弾き飛ばされた。
『ハァ、ハァ…これでどうだろうか…』
衝撃のあまり周囲に砂煙が生じ視界が悪くなっていたが、視界が晴れてくると双竜が佇んでいるのが見えた。
『これでもダメか…』
アルクスがそう呟いた瞬間、双竜はぐらりと倒れ込んだ。
『もしかして…』
『倒せたのか!?』
双竜が光に包まれると、元のオクトとオクタの姿へと戻った。
『見事な連携攻撃でした。』
『貴方達の絆、見せてもらいました。』
『これで絆の試練は合格です。』
オクトが指を鳴らしたかと思うと、今までいた周囲の空間が一瞬にして元いた領主館へと切り替わった。
『すごい…』
『それでは挑戦者の証を出して、いただけますか?』
言われた通りに挑戦者の証を提示すると、遂に全ての証が埋まった。
するとそれぞれの紋章が光を放ち、1つの紋章へと重なり合い球体になると地面へと転がり落ちた。
『ではこの宝珠を持って都へ向かってください。』
『これにて八竜震天の試練、達成です。』
オクタとオクトにそう告げられ、アルクス達は軽く休んだ後に追い出される様にすぐに都へと向かうことにした。
『今回は宴とかなかったね。』
『全部達成したから都でお祝いしてくれるとか?』
街を昼過ぎに出発し、その日のうちに都へと到達できるものと考えていたが急に周囲が霧に包まれてしまった。
あまり濃くはないがこれ以上進むのは危ないと判断し、野営をすることにした。
『そういえば最初の村で夜は決して街や村の外に出ないようって言われてたけど、あれってなんだったんだろう。』
『確かにこの大陸で野営をするのは初めてだね。とりあえず気をつけようか。』
そうしてアルクス達が野営の準備をしていると急に周囲の音が静かになった。
『あれ、なんだか静かじゃない。』
『確かに普段聴こえる動物達の音もしないな。』
そして普段はない、何かの気配が感じ取られた。
『なんだか、おかしな気配がしない?』
『魔獣かな?』
『とりあえず無いよりマシだろうから小屋でも作るよ。』
アルクスは危険を感じ、ナトゥと協力して土壁を作り出して小さな小屋を作った。
『すごい…』
『とりあえず一晩寝るくらいならこれで良いかな。』
アルクス達は交代で見張りを立てて、小屋の中で寝ることにした。
夜が深まるごとに徐々に気配が増えていった。
『一体何なんだろう…。うっ…』
アルクスが見張りをしていると力を吸い取られる感覚に襲われた。
『これは龍陣…?とりあえず対抗しないと…』
アルクスが龍陣を展開し、小屋の中は龍陣で守られる様にした。
そのため、その晩アルクスは一睡もできなかった。
翌朝、前日の疲労と一睡もできなかったことで、アルクスはぐったりしていた。
『アルクス、大丈夫?』
『あぁ、皆が大丈夫なら良かった。昨晩龍陣かわからないけど、大地全体の龍脈が力を吸い取る感じだったから龍陣を展開して防いでおいたんだ…』
『そうだったのか…気付かずに寝てしまってすまない…』
『昨日の気配ってそれだったのかな?』
『最初の村の村長さんの忠告に従っていなければ、龍陣を会得する前だったら全滅していただろうね。
一体なんだったんだろう…』
『とりあえず早く都へ行ってゆっくり休もうぜ。』
バルトロがアルクスを背負い都への道を急いだ。
前日の霧が嘘の様に晴れて、都までの道程は特に問題なく進むことができた。
『おっ、見えて来たんじゃないか。』
少し離れた場所に低い壁に覆われた街が見えてきた。
『あれが都?お城とかは無いのかな。』
『今までもあまり高い建築物はなかったしそういう風習なんじゃないか。』
『とりあえず行ってみよう!』
都まで辿り着くと正面に門があり、衛兵が立っていた。
特に都に入るために並んでいる様子もなかった。
『何者だ!』
その頃には自分で歩いていたアルクスが達成の証の宝珠を見せた。
『こ、これは…八竜震天の試練の達成者様でしたか!
どうぞこちらへ!』
衛兵に連れられてあれよあれよと都の中心らしき巨大な建造物へと案内された。
そして謁見の間へと通されるとそこには巨大な年老いた龍が寝そべっていた。
『よくぞお越しくださった、龍騎士殿。八竜震天の試練達成おめでとう。』
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