第104話 還元
アルクス達が純白龍に連れられて、漆黒龍のところへ連れてこられてから数日が経過した。
漆黒龍に鍛えられつつ、稀に扉から不定形の生物がやってきてそれを漆黒龍が倒して食べると言う日々が続き、アルクス達は何故ここに連れてこられたのかということに疑問を抱き始めていた。
『漆黒龍様、すいません。僕達は何の為にここに連れてこられたのでしょうか?
鍛えていただいているおかげて日々強くなっている実感はあるですが…』
アルクスの質問に対して、漆黒龍は何を当たり前のことを聞くといった顔でこちらを見つめてきた。
『それはもちろん強くなるためだ。全員で協力してあいつらを倒せるくらいの実力は最低限つけておいてもらうからな!』
『はい、頑張ります!
ところであいつらは一体何なのでしょうか?
あとこの場所にいるだけで強くなっている様な気がするのですが。』
漆黒龍はアルクスの質問に対してどの様に答えたものかと思案顔であった。
『その質問に答えるためには色々と教えることがあってだな。
まずはここにいると強くなっている気がするというのは、龍脈の力を使える以上正しい感覚だ。
この場所には大陸中の龍脈の力が集まっている。特に夜間に集中して集める様にしている。
流石にいつも自力だけで戦っていると疲れてしまうからな。
龍脈の力を上手く扱える様になれば、自分の力を使わずとも戦える様になるもんだ。』
『夜に街の外に出ると力が吸われていたのはそのためですか?』
『あぁ、そうだ。街や村には結界が敷かれているので問題がないが、昔は夜間に外を出歩く必要もな買ったのでそうしていた。最近では龍陣を使うことができない者がほとんどになってしまったから、夜は外に出てはいけないという教えだけが残っていたんだろうな。
それで龍脈の力だが、お前達はそれが何であるかを理解しているか?』
普段自分達は龍気と呼び、龍脈の中を流れている便利な力だと思っていたが、それが何かと聞かれても具体的な答えは思い浮かばなかった。
『ウィスやエレメントの源という話を以前聞きましたが、答えとしては違いますよね。』
『あぁ、間違ってはいないが本質ではないかな。
アルクス、お前は龍珠を持っているな。
覚えているかわからないけど、龍珠を作り出す時に「大地に眠る龍の力よ、其は世界の根源なり。」という一節を聞いたはずだ。
大地に眠る龍の力、つまり龍脈の力は世界の根源の力。
ここの世界よりも上位の世界にある根源と言われる場所から流れ落ちてきている力と言われている。』
『言われている、ということは漆黒龍様も誰かから聞いた話なのでしょうか?』
『そうだな、俺は大昔に兄者より教わった。
だが上位の世界と言われてもそんなものは理解の及ぶものではないので話を進めようか。
そしてたまにやってくるあの不定形生物達だが、あれはこの世界の生き物ではないと言ったな。
あいつらはこの世界の外側にある、崩壊した他世界の生物の成れの果てというのがわかりやすいかな。
あれら根源の力に誘われてここに来ている。
スペルビアだったか、天空竜のところから来たのならお前は以前に暮らしていた世界のことは覚えているか?
崩壊する世界から運良く助かり他世界へ行くことが出来る者達もいるが、助からずに運命を世界と共にする者達の方が多い。
そして助かることなく、世界が崩壊した後も生き残り、死ぬこともできずに世界と世界の狭間を漂っている者達がいる。
それがあいつらだ。
長い時間を経て自我を無くし、ただただ力の残滓に誘われるがままに浮遊しているだけの存在だ。
そして奴らが何故ここにくるかというと、ここがこの世界の出入り口みたいなものだからだ。
いつも成れの果て達が現れる扉の先は世界の狭間へと繋がっている。
神なんかは他の方法で他世界に行くこともできるらしいがな。』
『世界の狭間には何があるのでしょうか?』
『何も無いと聞いたな。基本的には各世界から漏れ出た力が光となるので、それを目印にしていくらしい。夜空に浮かんでいる星の光のことだな。』
『はい、夜空の星が他世界ということは天空竜様から聞きました。』
『それでだ、成れの果て達はただ力を求めて彷徨っているだけなら良いのだが、力溢れる生物を喰らい尽くそうとし、根源へと還元させない限りは再生してしまうという厄介な性質を持っているのだ。
そこでお前達には成れの果てを根源へと還元させる方法を覚えてもらう。』
そうしてアルクス達は成れの果ての還元方法を漆黒龍から教わり、成れの果てが現れる度に漆黒龍が弱らせた後に何度も成れの果てを還元させようと挑戦を重ねた。
アルクスとスペルビアはなんとか感覚を掴むことができたが、他の3人は何度やっても感覚を掴むことができなかった。
『やはり全員は無理だったか…まぁ誰にでもできるとは思っていなかったからしょうがない。』
『以前にも挑戦した方々はいたのですか?』
『そうだな、龍騎士達の通過儀礼みたいな形でとりあえず試してもらったな。
体得できた場合は本人が望む場合はしばらく手伝ってもらうこともあったが、なかなか短命の人種に長期間の滞在を頼むことは難しいしな…』
『では漆黒龍様はずっとここに..?』
『本体、という意味ではそうだな。普段は使っていないが分身体で出回ることもあるし、眷属達が色々教えてくれるからお前達の考える意味でのずっとここにいるというのとは違うな。』
アルクスとスペルビアが還元を身につけ、漆黒龍と話していると純白龍が誰かを連れてやってきた。
『親父殿ー、帰ったぞー』
『義父上、戻りました。』
『げっ、お前らなんでここに⁉︎』
純白龍が連れてきたのはアートルムと黒い鱗をつけた龍人だった。
『なんだ、アートルムとノックスじゃないか。アルクス達と知り合いだったのか?』
『はい、八竜震天の試練の途中で襲われました。』
アルクスがしれっと答えたところにアートルムが何かを言おうとしたが、漆黒龍に遮られた。
『またか。何でそうやって無闇に襲いかかる。しかも自分達より弱いとわかっている相手に…』
『いや、こいつらだって試練に挑戦してるわけで。』
『竜装を使っても全滅しなかったし、弱くはなかったと思うけど…』
『竜装まで使って倒しきれなかったのか?アルクス達もなかなかやるじゃないか。』
漆黒龍に褒められてアルクス達は満更でもない感じだった。
『ですが1度目は僕達は龍陣を扱えなかったのであっさりと負けてしまいましたよ。
2度目は勝てると思ったのですが、竜装ですか?アートルムとノックスが合体して巨大になった後は流石に無理でしたね。』
『そうだろうな。竜装、いやお前達だと龍装か。龍装ができて龍騎士としては一人前だからな。こいつらもかろうじて一人前と言えなくもない。』
『あれ、でも俺達見習いは終了したって言われたよな。』
『まだ見習いを終了しただけで、一人前とは言われてなかったかも?』
『そうか、そういえばまだ第1位階だったな。先は長いな…』
『『何、まだ第1位階だったのか!?』』
バルトロの第1位階という言葉にアートルムと漆黒龍が反応した。
『第1位階を竜装で倒せなかったなんて…』
『お前達が第1位階だと?アートルムの竜装に耐えたんだよな?
アートルムはギリギリ第4位階に到達しているんだが…
少なくとも第2位階はありそうだと思ったが、どれ。』
漆黒龍がアルクス達に向けて光を放ったかと思うと、以前と同様に3人の纏う龍装鎧が眩い光を放ち始めた。
光が収まった後、再び龍装鎧の形状が若干変わり、籠手に嵌っている宝珠が1つ増えていた。
『やはりな。これで第2位階だ。お前達なら第3位階もすぐだろう。第3位階に上がれば、龍装も少しはできるはずだ。アルクスはアーラがいるから良いが、バルトロとアリシア。お前達は共となる龍を見つけないと龍装はできない。龍騎士と龍が心を通わせて身に纏うことで龍装はできるのだからな。
それにしても5人で協力したとは言え、第4位階に立ち向かえるとはな。
八竜震天の試練を乗り越えるだけあって、絆の力とでも言うのか。』
『アートルムにはない力だね。』
『俺はノックスがいれば1人で大丈夫だ!』
アートルム達の話は聞かずに龍装鎧の成長に喜んだアルクス達3人だったが、共となる龍が必要だと言われてどうしたものかと悩むバルトロとアリシア。
そしてそれを羨ましそうに眺めるクリオ。
『クリオ、お前の持ち物も何だか光っているぞ。』
『あ、天空竜様からいただいた竜鱗かな…』
スペルビアの指摘により、クリオが天空竜から預かった竜鱗が光を放っていることに気がついた。
『ほぉ、天空竜の鱗か。それは力無き者が所持しても意味がないが、力ある者には強固な守りとなる。
確かお前はハイエルフを目指しているんだったな。ラピスも孵化しているみたいだし問題なさそうだな、俺の鱗もやろう。』
漆黒龍はそういうと天空竜の鱗と自分の鱗とを重ね合わせると竜鱗が光り輝き袖のない外套の形となってクリオの身に纏う形となった。
『この外套を身につけておくと良いだろう。いずれ龍脈の力を自然に感じ取れる時が来る。その時にはお前はもうハイエルフと名乗って良いだろう。その外套も龍装鎧へと変わるはずだ。』
漆黒龍からの思いがけない言葉にクリオは感極まったのか、泣いてしまった。
憧れのハイエルフへの道がもうあと少しというところまで来ていたのだった。
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