表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

ディベ・ルミナリエ



 祈りのような言葉を呟く少年はかつての敵、砂海豚(デザートルフィン)に跨りショウタの前に現れる。砂海豚はミウ、カズトの模倣を轢いてしまう。死体(模倣)から溢れるのは、赤い血ではなくそこらにあるものと変わらない砂。


 「お兄さん、大丈夫?ここの人.....じゃあないよね?」


 少年は砂海豚の背に乗って、ショウタに手を差し伸べる。砂海豚も少年に懐いてるようで、手を差し伸べやすいように屈んでみせる。


 「お、お前が乗ってるこれって.....攻撃とかしないのか...?」


 「攻撃?砂海豚(デザートルフィン)が?まさか、こんなに大人しい生物見たことないくらいだよ」


 「そうか...」という脱力した返答しかできなかった。ショウタは差し伸べられた手を力強く握り、砂海豚の背中に乗せてもらう。砂海豚の乗り心地は悪くなく、背中にある鞍には数人乗れる様なスペースがある。


 「それ!」


 少年が掛け声を上げ、砂海豚に着けられた縄を一振りすると走り出す。砂海豚は砂嵐などお構いなしに、ただ同じ方向へと一直線。ショウタは少年にしがみつくのに必死だった。


 「うぐぅぅぅ.....!なんかこの感覚久しぶりな気が.....!!」


 いつかのバイクの時と似た様な風圧を一身に受ける。身体が今にも剥がれ落ちそうになるのを必死に抑え、いくつか疑問を少年に投げる。


 「俺はこのままこいつらの巣に連れてかれて.....食べられるとかいうオチじゃあ.....ないよな?」


 「うーん.....巣というか僕達の家に向かってはいるけど...」


 ショウタは過酷なこの状況をものともしない少年に、異端さを感じる。少しでも状況を掴むため、心の距離を縮める。


 「名前.....とか聞いてもいいのか.....?」


 「ルカです。ルカ・ルミナリエ」


 「ルミナリエ.....って俺たちの目的地の名前じゃん」


 「...恐らく、あなたの目指している場所と僕の名前は似て非なるものです」


 自分でも知ってる名前が聞けて安心したが、どうやら違うらしい。いやしかし、ルミナリエなんて名前地名以外に聞かされてないしなぁ.....。


 「そろそろ着きますよ。光の街、ルミナリエへ」




 ——吹き荒れる砂嵐の先に、光が差し込む。

 今まで肌に当たってた砂が嘘のように無くなり、目の前に広がる景色は砂の街と一目でわかるような景色だった。少し遠くから見ても、絨毯を敷いた商売や、人が住んでる家に払っても払っても積み上げられる砂がある。そして街の奥には、巨大な山があり大きく通行止めと書かれているような感覚に陥る。


 「ほら、近づいてきました」


 街に近づくにつれ砂海豚の速度は落ち、やがて街の1番外れの建物近くで止まった。どうやらそこは砂海豚を飼育する施設らしく、首輪を施設に預けショウタとルカは降りる。


 「なんか既視感があるような、無いような。中世アメリカというよりかはエジプトとかそっちの方か?」


 「エジプト.....?なるものは分かりませんが、ここはルミナリエという地名ですよ」


 「うーん...あまり信じられないな。聞いた情報だと、沈まない街だとか、商業都市だとか」


 「それは.....あっちの街、ディベ・ルミナリエの事ですね」


 ショウタが周りを観察し、街の雰囲気を感じ取る。 しかしカズトから聞いていた情報とかけ離れた街の現状に、ショウタは疑問に思う。勘違いしてるのを察したルカは、抵抗がありながらも上に指を刺す。指先が指す先は、先程景色が開けた瞬間目に大きく入ってきたあの山の頂上。


 「あの上.....ってあそこにまた街があるのかよ。信じらんねぇ...」


 「ええ、そうです。元々あの街も、こんな山すら存在しなかったんです。でもいつからか私達のこの街にあんなに大きい山が出現して.....」


 街を歩きながら、会話を弾ませる。いや、この会話が弾んでるとはとても言い難いが。あまり明るく無いトーンでルカは話を続ける。


 「お父さんもお母さんも上まで出稼ぎに行っちゃって...しばらく会ってないんだ」


 「ルカ.....よし分かった。助けてくれたお礼だ。俺も上に用があるし一緒に連れてってやろうか?」


 「ほ、本当に?!でも、じいさんの許可が.....」


 一瞬目を輝かせたルカだったが、思い出したようにまた暗い顔に。もじもじと言葉を濁していると怒号が聞こえてくる。


 「ダメじゃダメじゃー!あんな金の亡者共の集まり。お天道様に1番近い奴らが、どうもあんな意地汚い奴になるんか.....」


 家の前に着いた途端、ルカはビクッと反応し老人の方へ向く。老人は最初こそ怒号を放ったものの、後半は喉が小さくなったのかボソボソと喋る始末。



「あのーおじいさん?ルカが行きたいって言ってるんだから行かせてやればいいんじゃ?」


 「貴様もその子を誑かしにきたんじゃろ!分かっとるぞ!その子の両親かて行きたくもないだろうけども、何者かに誑かされて連れ去られたんじゃ。可哀想に.....」


 「お母さん達は僕やじいさんのために出稼ぎに行ったんだ!悪く言うな!」


 寂しい街だったから、人だかりはない。そのお陰か家族喧嘩は10件先の家まで響いただろう。ルカは怒り、半ば説得のような物言いでじいさんに迫る。


 「ま、まぁまぁ。お互い言いたい事も分からなくもないからさぁ.....とりあえず家の中で休まない?ほら座りながらお菓子でも食べながらさぁ?」


 「じゃあこれでべえせんでも買ってこい!」


 「べえせん以外も大量に買ってくるよーだ!」


 「食える量だけ買ってこい!」


 ショウタが宥めた後、じいさんは角状の炭をルカに投げ渡す。べえせんなる物を買ってこいとルカは怒鳴られるが、そこでも軽い家族喧嘩が見られた。


 ルカは炭を持ち、また街を歩き始める。炭を両腕に抱え、ぷんすか怒りながら歩みを進める。それにあたふたしながら、ショウタは走り追いついた。


 「お、おい。そんな炭持ってどこ行くんだよ」


 「お菓子屋に行きます!またじいさんと『話し合い』をしなきゃいけないので.....!」


 「俺のせいか?悪かったよ。まさかあんな怒るとは思ってなくてさ」


 「いーえ!これはもう何遍もしてきた事ですから、今更です!」


 街に着いた時の会話は目を合わせてたのに、喧嘩後は目も合わせず目的地へと向かうルカ。その後ろには反省の色を見せつつ落ち着かせようとしたショウタが居たがこの喧嘩がデジャブであることを知ると、仲裁を諦めていた。


 

 ー



 「はい、これ炭!べいせん.....18枚!」


 「毎度。袋に6枚ずつ入ってるから、3袋持ってきな」


 じいさんの家から10分程歩いた先、菓子屋「バルメ」に到着した。店は昔ながらの駄菓子屋スタイルで、奥に座ってるおじさんに代金を渡して店の中にある菓子を貰えるようになっている。しかし変わった事があったのかショウタはルカに尋ねる。


 「なぁ、ルカ。お前達ってミュールで払わずに炭.....というか物々交換で毎回買ってるのか?」


 「はい。外の世界にはお金というのがあると聞いてますが、この街では使用できません。なので物と物で商売し、相手のお眼鏡に適う物だったら他の人よりお得に買える事だってあるんですよ」


 「ふーんそうなのか。いや待て、その理屈だとルカの両親は何の為に出稼ぎに行く必要がある?」


 「.....それは先にも言った通り、僕とじいさんの為です。そもそも外の世界のものを調達するには、お金が必要なんです。ここの物を売ったりできれば多少は外のものも調達しやすいんですが、この街にあるものはあまり価値がないようで.....僕は外の世界の冒険に、じいさんは外の薬が必要で。僕の分は絶対必要ではないんですがじいさんの薬は、外でしか手に入らないんです.....」


 「なるほど.....少なくとも両親の立場は分かってしまうな」


 ルカの両親は親や子の為、出稼ぎに行ったのだ。その事実は今、詳細に聞いたことによってより重くのしかかる。


 「でも、クヨクヨしてられません。はやく上に行って、二人を助けに行かなくては」


 「ルカ、お前強いんだな」


 「いーえ。まずはじいさんの説得をしなきゃです。お名前は.....そういえばまだ聞いてませんでしたね」


 「佐藤翔太。皆んなからはサトショーって呼ばれたり呼ばれなかったり.....まぁ呼び方なんてこの際どうでもいい。俺も仲間が上で待ってるかもしれないんだ。早く行こうぜ」


 べいせんをかわりに持ってやったショウタ。軽く自己紹介を済ますと目線を山の上にやり、仲間がいると思われる頂上を目指すことを決意する。

 

 頂を見る目は、模倣するのは難しい。


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ