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面影



 買い物を終え、ショウタ達はルカの家に戻る。

 途中軽い街の探索をしようと店を覗くが、直ぐルカに裾を引かれ戻される。


 家の方に戻ると、怒号が再度聞こえるが先程とは違う。今度は逆に、じいさんが浴びせられてる側らしい。


 「おうおう、じいさん...あんた薬代がまだ払い終わってないんじゃないか?期限はもうとうに過ぎてるはずなんだけどなぁ?」


 「あーんな虚薬、誰が金払うか。ほれ散った散った」


 「虚薬だと?...クックックッ.....あれだけ飲んでおいてよくもそんなことを.....」


 「さっさと金出せ金!!!」


 じいさんは負けじと応戦するが、リーダー格らしき若者が胸ぐらを掴むと空気は変わる。3人でじいさんを囲い1人が脅しをかけ始める。


 「別にあんたの息子夫婦がどうなったっていいんだぞ?リュウジさんは金にはうるさいからなぁ.....?」


 「くっ.....」


 弱みを握られているのか、先程の威勢は嘘のように消えていた。しかし最後の抵抗か、目だけは若者達に睨みを効かせたままだ。


 「じいさんが危ない.....ショウタ...」


 「あぁ分かってる」


 少し離れたところで見ていたルカは助けに行こうとショウタに促し、ショウタもそれに了承する。しかしショウタはルカに説得するように言葉を続ける。


 「けど、お前はここで待ってろ。ここは俺1人で何とか——」


 「ま、待つもんか!僕達光の民は仲間は見失わない!例え喧嘩しているじいさんでも!」


 「わ、分かった!じゃあ俺が前に出るからルカは後ろから着いてこいよ?これは決して危険な目に合わせないためではなく、後ろは任せたぞという男と男の信頼だ!いいな?」


 「うん!」とルカは大きく顔を縦に振り、ショウタの後ろに付く。


 ショウタは若者達の前に立ち、強気な言葉を言い放つ。


 「おい、お前ら!じいさん1人虐めて何してる!そんな3人で寄って集ってやる事がこれな———」


 「やい末端供!お前らなんて上の連中に使われてるだけの傀儡だ!」


 少し威嚇するつもりのショウタとは裏腹に、ルカは相手の機嫌を逆撫でする挑発。確かに後ろにはいるが、ルカはその位置から援護射撃をしている感覚。その後に「やってやりましたよ」と言わんばかりのにんまり笑顔をショウタに見せつけた。


 「ま、末端ってどういう意味だレド兄さん?」


 「.....1番下って意味だ、グリ。いいだろう、目にもの見せてやれ。ブル、グリ!」


 「し、下だとぉ!お前らの方が住んでる場所は下だろ!ムキィィーーー!!!」


 「...クックックッ.....分かったよレド兄さん。丁度リュウジ様から預かった最新の武器、『銃』の試用といこうか.....クックックッ.....」


 3人いる若者のうち、グリと呼ばれる背は小さいが身体つきは丸々と太った奴が末端の意味を知り激怒する。もう1人、ブルと呼ばれる若者は高身長だが痩せ細っており、懐から『銃』を取り出す。


 「あぁ、ただし『殺し』はするなよ?面倒事を起こしては、リュウジ様になんと言われるか分からんからな.....」


 丸々とした腕や腹に力を入れ、グリは突進を開始する。その後ろで拳銃を構えたブルは、ショウタに向けて一発、迷わず撃った。


 しかし、ショウタに銃は効かない。

 見事に頭を狙われたが、ショウタは人差し指で蝿を払うように銃弾を弾いた。ブルは初めて拳銃を使ったせいか、反動を考慮出来なかった。痩せ細った身体は一発KO。


 「うおおぉぉぉ!!!」


 後ろでブルが倒れたことも知らず、尚もグリは突進をやめない。顔を下げ、腕を前面にタックルを仕掛けるが、何故か足が進まなくなる。高さは小柄だが、横の幅は確かな自信を持っていた。そんなグリを先程弾いた指先で、そのままグリの頭に当て突進を指一つでショウタは止めていた。


 「な、何だとぉぉ!!俺の攻撃を止めるなん——」


 「うるせッ」


 「うわあああぁぁぁ!!!」


 グリは自らの攻撃が通用しない憤りを爆発させたが、そんなのお構いなしにとショウタから反撃を喰らう。止められた指先を軽く突き返すと、グリは後ろにゴロゴロと後転しブルと激突。これにより両者共に気絶してしまう。


 「つ、強い.....ショウタさんこんなに強かったの.....!」


 グリの突進には目を閉じていたルカも、目を開けた後の光景を見ると思わず感嘆する。2人の強襲を軽く退けたショウタは、リーダー格であり、武闘派な身体つきをしたレドに話しかける。


 「お兄さん、あんたもやるか?こっちとしても面倒事は避けたいんだが」


 「.....俺だって武道家の端くれ。実力差が天と地程の差があるのくらい今の一瞬で分かる。今日のところはここいらで退かせてもらう。.....なぁあんた...あんたもリュウジさんと同郷なんだろ?」


 「.....さぁ、俺はその『リュウジさん』とやらに会ったことはないからな」

 

 「フッ、ならそういうことにしておいてやる.....但しタダじゃあ帰れねえ。あんたの目的一つくらい、聞いてもいいか?」


 「一つか.....とりあえず今は上に行くことだな」


 レドは目を開き驚く。これほどの武人が、まだ上を目指すのかと。しかし冷静になれば、『ルミナリエ』が目的地だと言っているのだと気づき微笑を浮かべる。


 「そうか。そのくらいは報告させてもらう。.....じゃあ俺は『気絶したコイツら』を背負って上へと帰るか」


 そう言い残しレドは気絶したグリ、ブルを背負い街の何処かへと消えていった。


 若者達から解放されたじいさんは、既に家の中で腰掛けていた。茶を飲み一呼吸置いた後、じいさんはショウタ達を呼び近くに座らせた。


 「...二人共、座ってくれぬか」


 「あぁ、これ頼まれてたべいせんってやつだろ」


 「すまない、あんたにはつくづく世話になるばかりだ。.....ここでもう一つ、頼まれて欲しい事がある」


 「.....じいさん、それって...」


 頼まれた使いの物を渡すと、ショウタはさらに頼み事をされる。ルカはもうなにを言われるか分かっているように、体をじいさんに寄せる。


 「あぁ...孫を.....ルカをディベ・ルミナリエまで連れていってやって欲しい.....!」


 「もちろん、俺は良いが.....じいさん的には、良いの?」


 じいさんは手を机につき、頭を下げショウタに懇願する。ショウタは慌てて確認を取るが、もう向こうは覚悟が決まっていた。


 「儂から頼み込んでいるのがなのよりもの証拠。


 バルト・ルミナリエ。儂のこの名前に誓い、ルカをあんたに預けたいと思う!」


 「ショウタさん、僕からもよろしくお願いします。」


 「.....うん、分かった。必ず無事に家族全員帰れるようにしてやる」


 二人して頭を下げて、ショウタに頼み込む。その甲斐あってかショウタはその願いを受け入れる。お近づきの印にと、買ってきたべいせんを多く渡そうとするがショウタはやんわりと拒否する。しかし他人様の子供を預かることの大変さは重々承知していた。


 .....これはロリスの時の記憶か?

 いや、それよりもっと前の.....?


 


 〜




 ルカが連れた客人が、あの愚図共を追っ払ってくれた。それはとてもありがたい。


 ありがたいことなんだが、儂はこの光景をやけに覚えている。


 あれはまだルカも産まれておらず、砂漠をこんなに荒れていない時代。


 一人の青年が、困った儂を助けてくれた。


 「どうかしたか、ご老人。良ければ私に何か手伝えることは?」


 そう差し出した手は、今ある百の苦悩すら軽々と持ち上げてくれそうな。そう喉を震わせた音は、万物が安らぎそうな。そう触れた心は、あの魔王すらも虜にしてしまいそうな.....。


 儂は助けてくれた彼に、ほんの一瞬.....いや瞬き程度には面影を重ねてしまっていた。


 青年は後に、勇者◼️◼️◼️◼️と呼ばれるように成っていた。

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