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さまようよろい



 「お、お、落ちるぅぅぅ!!!」


 ボフンという音と共にショウタは砂に埋もれる。

 既に砂ドリルは砂海豚(デザートルフィン)を倒した時に霧散していたようだ。


 「よく勝ったね、ショウタさん。.....まぁそれだけの力があればもっと余裕だったと思うけど」


 「いちいち一言余計だな。結構頑張ったんだぞ」


 「特に最後なんてよく来るのわかったよね」


 「あーあれか。たまたま遠く見た時に他とは違う反応が見えたんだよな。それで賭けに出たわけよ」


 「.....ハイになって闘うのはみんな共通なのかな?」


 勝負後のアフタートークを楽しんでいるとゆっくりと様子を見るように、ミウが合流する。未だ風で砂を避けながら歩く。その途中、近くにあった砂海豚の頭にビビりながらも。


 「やるじゃない。根性見せたわね」


 「おう」


 ミウが勝利の証に手をグーにして差し出す。ショウタもそれに応えて、グーを合わせる。その流れのままミウはショウタの手を取り、立ち上がらせ砂を払ってやる。


 「それにしても血だらけね。.....何とかならないの?」


 「.....俺に言ってるの?せめて目は合わせて話そうよ、ミウちゃん.....んーそうだな、確かに強化された肉体は回復速度も上がってる。けど身体はまだその能力についてこられてない。傷ついて回復してを繰り返していくうちに強化された能力は身体に染み込んでいく.....と思われる。なんせいきなり億単位で強化するなんてしなかったしね、俺」


 「あやふや解説どーも。まあ血は止まってるみたいだし、見た目はグロいが見た目ほどじゃない」


 「そう、ならもう心配しない.....それよりどっちに向かえば良いか覚えてるの?」


 「あぁ、それならこっちのほ....う......」


 カズトが振り向き、ルミナリエへの方向に指差す。


 しかしその先にあったのは唯黒の景色だった。

 それは本当に景色だったのか?

 いや違う、それは何者かの足だ。

 

 「っ?!な、何だこいつは!」


 「.....」


 「黒い甲冑.....テツジ...さん.....じゃねえよな?」


 「ショウタさん、今確実に言えるのは二つ。

  一つはこいつはテツジさんじゃない。

  もう一つは.....

  こいつには勝てない.......!」


 突如として現れた謎の巨体。その姿は、かつてショウタが見た黒い甲冑の姿が。その中身は確実にテツジじゃないことをカズトに告げられるが、それと同時に絶対に勝てないことも同時に聴くことになる。


 巨体は腕を振り上げ腕に魔力を纏わせ、腕を『魔具化』させる。その魔具化はショウタの比ではない.....いや比べることも烏滸がましい程圧倒的な魔力量、魔力の質を有して『魔具化』を成功させる。その腕に宿す魔具化は天にも昇り、その鋭さは名研師が100年間休まず磨き続けたが如くの鋭さ。


 「流石にこれはやばいっしょ......!」


 「カズト、こいつはどうす.....」


 カズトは振り上げられた腕に宿す魔力にたった一瞬、気圧されてしまった。ショウタがカズトに指示を仰いだ時には初めて、カズトの冷や汗を見た。


 そんなにまずい状況なのか......。

 くそ、そりゃあ俺にだってこいつがやばいってことくらい分かる。けどお前が歯が立たない程なのか、カズト。いや、もしかしたら俺とミウという足枷があるせいなのかも.....。


 緊迫したこの数秒は、振り下ろされる巨体の腕によって次のフェーズへと移り変わる。


 ショウタ達3人を狙うには、見せつける力が大きすぎた魔具化。それは振り下ろされた瞬間、30階建てのビルが崩れ落ちてくるような衝撃をもたらす。


 「ぐああああぁぁぁぁ!!!」


 「うぅぅぅぅ!!!」

 

 「はっ...はっ...はっ...」


 三者三様の反応があったが、ショウタ、カズトは少しでも相手から目を逸らさないためか倒れないように踏ん張りを効かせる。ミウは早々に戦意を喪失し、呼吸を早くさせることしかできなかった。


 体が熱くなる。血が巡る。生きなきゃと心が叫ぶ。

 ショウタ、カズトは眼すら合わせず一斉に攻撃を仕掛ける。


 「はぁぁぁぁ!!!!」


 「っくゔん!!!」


 ショウタは走り出すと、直ぐに木刀を取り出し全力で巨体の顔をぶっ叩く。一撃で仕留めるために、ショウタは甲冑の首を狙う。その木刀は感情に呼応したのか取り出し手に持った瞬間、既に魔具化されてした。 だが巨体はぴくりとも動かない。


 カズトはショウタの攻撃を後押しするように魔具化された脚で木刀を蹴り、相手の首を目掛け狙う。カズトの全力の蹴りを入れても尚、巨体はその場を少しでも動くことなく、静止する。


 「くっ.....こいつ全く喰らってねぇ.....」


 「.....」


 首を狙った後も、脚を狙って動きを封じようとしたり、腕を狙って今と同じ魔具化が出ないように攻撃した。しかしどれも結果は無残なもの。ショウタ達が息を切らした攻撃は巨体に流れる時間は少しも澱むことはない。


 痺れを切らしたか、巨体は自分を中心に魔力の凝縮を始める。先程見せた天を突くほどの魔具化。あれを体現させるほどの魔力の凝縮は一体何が起きるのか、ショウタには見当もつかない。唯、この男はその危険さを想像することができ、最良の判断を下した。


 「ショウタ!悪い!」


 「なっ.....!!!」


 凝縮された魔力は、巨体を中心に爆発を起こす。腕の魔具化が振り下ろされた地形は何百メートルにもなる軽い渓谷のようなものが出来るほどだったが爆発はより規模が大きかった。砂嵐は常に吹き荒れているが、爆発後数十秒は空から降る砂は存在せず、地面の砂は巨体の周りには抉れて存在を小さくしている。まるで陰性が降ってきたかのような大きなクレーターが出来上がっていた。爆発後、巨体は自らの脚を止めない。かつての罪を償うように、この砂漠を彷徨い続ける.....


 その姿は、かつて世界を闇に陥れようとした魔王と酷似していた。力は圧倒的、知略、求心力など様々な力を手に支配を目論んでいたが勇者によってその企みは打ち砕かれた.....


 .....はずだった。。。

 

 ー


 「.....うぅん.....はっ!」


 目が覚め、周りを見渡すともう近くには巨体は居ない。ショウタはホッとしたような、気が緩むような。 しかし再度見渡してある事に気づく。


 「.....あいつら、どこ行った?」


 砂は足を掴み、砂は視界を塞ぎ、砂はその心身を蝕む。

 高濃度の魔力は侵入者の魔力を吸収した証でもあり、侵入者を模倣して撃退することも厭わない。


 ここはオンブラ砂漠。

 1人で侵入することも危険だが、仲間と逸れたオンブラ砂漠はより危険度を増す......。


 

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