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第4話ー2

◇ ◇ ◇(ラーナ目線)

個室に入ると、ステファンはラーナに診療台へ腕を置くよう促した。

そして、あえて治療せずに残しておいた左手の小指と薬指を、ゆっくりと観察した。二本の指は、相変わらずひどく腫れている。

ステファンはキリルと顔を見合わせ、頷いた。

「天風の病ですね」

(それ以外にも……本当は、呪いのことも相談しなくては……)


けれど、いきなり悪の魔王との関係を打ち明けても大丈夫なのだろうか。

ラーナは二人の神官を前に、ひそかに思い悩んでいた。

「かなり痛みますか?」

指先の異様な腫れを見たステファンに尋ねられ、ラーナは笑顔で答えた。

「そこだけ少し。でも、いつもよりずっと痛くありません。普段は両手首、両足首と、全ての指が激痛で腫れていますが……。昨日オクト様に巻いていただいた湿布と白魔術がかなり効いたようです」

「ええ?!!」


神官二人は、驚いて顔を見合わせたかと思うと、高い笑い声を上げた。


「昨日の塗り薬って、オクトの巻いたこれですよね?とても効くとは思えないのですが……」

「そうですよ。こいつ……ものすごいポンコツでして……。すみません」


二人の唖然とした様子に、ラーナも驚いた。


「ええ?いいえ。そんな、ポンコツだなんて……」

ラーナが二人の神官に首を振っていると、キリルがラーナの左手を取って、指先をまじまじと見直していた。

「こいつの処方で人が死にかけたことはあっても、助けられたなんて。ははは」

「そんなはずは……」

「お前、何したんだ?」

ステファン神官は、厳しい目をしてオクトの方を向いた。


ラーナは、彼らにオクトが責められるのをどうして止めたくて、食いぎみに声をかけた。

「あのう!でも!左の指先は、わざと見ていただくために残していました。それ以外は、本当に今までにないくらい痛みが引いて、腫れもかなり良くなっているんです!久しぶりに、手足を自由に動かせるんですよ!」


ラーナは、二人の目の前で右手をぎゅっと握ってみせた。


「あれ?……一体どうし……て……」

驚く神官二人は、同時に彼女の方を向いた。


そんな二人にはお構いなしに、ラーナはふわりと立ち上がった。

「足も全然痛くないです!いつもはびっこ引いて歩いてたんですが……ほら!この通り、今日はとても軽いんです!こんなこともできます!」

歩き回ったり、ジャンプしたり、スキップして見せると、二人は呆然としていた。



「本当ですか?」

それでも、まだ信じられない様子だった。

「とりあえず、一旦、まずは正しい処置に戻しますね。それから経過を見ていきましょう」


神官たちは香ばしい香りのする湿布を貼り、この世界では一般的な、光を放つ白魔術でラーナの手足を改めて処置した。


「左の薬指と小指も、今日、治療しておきましたからね」


「はい……」

ラーナは少し首を傾げながら、二人にお辞儀をした。

その間、オクトは診療室の隅で、ただ黙って話を聞いていた。


「遠方からいらしたとお伺いしたので、しばらくはそのまま、部屋に滞在していただいて、様子を見ていきましょう。いかがですか?」

ステファンからの提案は、それでもありがたいものだった。


「はい、とても助かります」

「まずは今日、滞在に関するご案内もオクトがさせていただきますね」

「ありがとうございます」

診療室を出ると、すぐに別の患者がやってきた。ステファンとキリルは、さっそく次の診察に取りかかる様子だった。



(この様子では……魔王については、まだ相談できそうにないな……)

滞在している間に、どうにか話せるように考えなければ。

そう思いながら、ラーナはその場を後にした。




なんだか腑に落ちない気分のまま廊下へ出て、ぼんやりと立ち尽くしていると、長身のオクトが身をかがめ、ラーナの顔を覗き込んできた。


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