第4話:朝日の元に晒される正体 (オクト目線)
ーー夜明け。
明るい日差しと共に、神官たちが帰ってきた。
「今日は二人ずつ交代で寝よう。すぐに患者が来る時間になるぞ」
「そうだな……」
「ただいまー!」
「オクトー!」
「あれ?患者さん来てたのか?」
礼拝堂から、ガヤガヤと大きな声が響いてくる。
いつも彼らは、まるで賑やかな市場が近くにあるのかと思うほど活気がある。
オクトとラーナは食堂で、ちょうど朝食を終えたところだった。
「おかえりみんな。昨晩いらした患者さんだ。昨日は旅館もどこも行くあてがなかったから、昔の客室に泊まっていただいたんだ」
オクトが立ち上がって、神官たちにラーナを紹介した。
「ラーナ・ミネルと申します。よろしくお願いします」
彼女もオクトにならって立ち上がり、深々と頭を下げた。
「おそらく、手足の病で……遥か遠くのマール地方からいらして……」
大抵のオクトの発言が終わる前に、神官たちから様々な声が上がる。
「わあ!とても遠いところからいらしたのですね!」
「本当に大変だったでしょう?」
「ご家族はいらっしゃらないのですか?」
神官達は、ラーナの両手首や指の様子を見に、一斉に集まってきた。
「オクト、お前また……包帯も外れてるし、湿布もひどい状態だ……」
「こんな雑にされて、大丈夫でしたか?」
年寄りから若い集まで、神官達は様子を見て全員でオクトの方を責め始めた。
オクトはすぐに立ち上がって、彼らに頭を下げていた。
「ご、ごめんなさい……」
「でも、お前がお引き止めして、泊まっていただいてよかったよ」
そのうちの一人、キリルは意気消沈していたオクトの肩を優しく叩いた。
「ああ、よくやった」
そう言いながら、一番年長者であろうステファン神官も、ラーナに声をかけた。
「私の専門かもしれませんので、ぜひ診せていただけますか?」
「は、はい」
「食事だけ済ませるので、少しだけ待っていてもらえますか?」
「はい。では、私も支度して参ります」
ラーナが食堂を出ると、ステファンとキリルは、よっぽどお腹を空かせていたのか、三杯ずつのスープやパンを平らげていた。
食器を片付けているオクトの方へ、別の若い神官達がやってきた。
「おい、オクト。大丈夫だったか?ラーナ・ミネルって言えば、すごく有名な侯爵家の令嬢じゃないか」
「ええ?隣国まで名が知れるほどの大金持ちなのか?」
オクトが聞き返すと、彼らは身体を寄せてきて、眉をひそめ、意味ありげに笑った。
「いや、ただの金持ちじゃない。悪女さ」
その言葉が、まるで氷の矢のようにオクトの耳に突き刺さった。
(?!)
「確か、『狂乱の悪女』とか言われて、有名だったはずだ」
二人が背を丸めて囁く様子に、オクトは顎を上げ、目を細めて彼らを睨みつけた。
「えええ〜?また冗談ばっか言って……俺のこと騙そうとしてるな」
「本当だよ!噂を何度も聞いたことある」
「俺もだ!」
二人が真剣に言い張るので、オクトは皿を拭きながら反論した。
「ラーナさんは、悪女どころか、礼儀正しくて、気品ある方だったぞ」
「オクトは毎回やらかすからなあ」
「恐ろしい悪女まで、修道院に招き入れちゃったんじゃないか?」
からかうように、神官達はオクトをこづく真似をした。
「失礼な!」
オクトがジト目で彼らを睨んでいると、隣の部屋から大きな声が聞こえてきた。
「オクトー!ラーナさんを呼んできてくれ!」
キリルが食堂からオクトを呼んでいた。
「はーい!」
「お前も一緒に、問診に付き合ってくれ」
今度はステファンにも声をかけられた。
「わかりました!」
オクトは、ニヤニヤとからかってくる神官たちをその場に残し、水場を出た。
そしてラーナに声をかけ、診療室へと案内した。




