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第22話:傷付けられていた自由のために(ラーナ目線)

 朝、ソフィアはどこか複雑な表情を浮かべたまま、落ち着かない様子で過ごしていた。

オクトとミルコ、そしてラーナの三人は、先に水場で身支度を済ませると、廊下に集まって話し合った。

「何だか、断られそうな予感がするな……」

「ああ。ずっと俯いている」

「……どうにか説得したいのですが、本当に彼女の生活を左右してしまうことですからね。どう切り出せばいいのか……」


 三人で声をひそめて相談しながらも、実のところ、ラーナはずっと心のどこかでソフィアについて別のことも考えていた。

(オクトさんやミルコさんのことは、前世でこの物語を読んだ時の記憶にないんだけど……。どうしてかわからないけれど、ソフィアさんのことは、何か、どこか引っかかるのよね。物語に出てきた気がする……)


挿絵がほとんどない、文章のみで表記された登場人物たちの記憶。それでも、ソフィアの髪の色や話し方に、何か覚えがあるような気がしてならなかった。



 三人が廊下で話していると、ソフィアもこちらの気配に気づいたのか、部屋の扉を開けて出てきた。そして、三人の前まで歩み寄ると、深々と頭を下げた。


「本当になんとお礼を申し上げたらいいのか……。私、皆様とのお話も、とても楽しくて、ご提案いただいたことも、人生で一番、本当に嬉しくて、心から感謝しています。ありがとうございます」

「……いいえ」

「当然のことをしたまでです」


三人が穏やかに微笑みかけると、ソフィアは少しだけ顔を上げたものの、すぐに真剣な表情へと戻った。

「本当は、私、一人で頑張ってみたいと思うんです。でも、今は食べていくのもやっとの状態で、お金もありませんし、これからどうすればいいのかも分からなくて……」

「……」


ラーナは、その言葉を聞いた時点で、彼女が何を言おうとしているのか、何となく察してしまった。

(ああ……断られてしまうよね……)


ソフィアの気持ちは、痛いほど分かる。今の生活から抜け出したいと思っていても、そこを離れた先に食べるものも寝る場所もないとしたら、簡単に決断できるはずがない。


「本当は、皆様と一緒に行きたいです……。でも、また食べられなくなってしまうかもしれないと思うと、どうしても踏み出せなくて……。ごめんなさい」

「……分かりました。ソフィア様の選択を尊重します」

ラーナは、ゆっくりとうなずいた。無理に連れて行くことはできないと思った。


「きっと、皆様は今日、このまま急いで出発された方がいいですよね?」

ソフィアは申し訳なさそうに三人を見つめた。すると、オクトもミルコも、そしてラーナも、彼女を責めることなく、優しい表情で微笑み返した。


「そうですね。そろそろ、ここを出ようと思います。ただ、もしもソフィア様の気が変わって、やっぱり今の場所を離れたいと思ったら、首都の大神殿にいらしてください。最低でも、一週間ほどは滞在する予定です」

「はい」


ラーナはさらに実家の連絡先や、弟夫婦の名前などを書き記した紙を取り出し、ソフィアに手渡した。

「これは私の実家です。隣国ですが、逃げ込むこともできます!ソフィア様のこれからのご活躍を、私、ずっとずっとお祈りしています!」

「ありがとうございます……!」


ソフィアは紙を両手で受け取り、今度は先ほどよりも少しだけ晴れやかな表情で頭を下げた。


四人部屋に戻ると、ソフィアは床に座り、再び黙々と木を削っていた。その姿を横目に見ながら、三人は準備を進め、大きな荷物を抱えると、軽く挨拶を交わして部屋を出た。

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