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第21話ー2

オクトは二人の前に長い指をぴんと立て、少々まくし立てるように言った。ところが、その指先を見つめた瞬間、ふと先ほどの出来事が頭をよぎった。


(……あれ? 悪の魔王が、さっき何か言っていなかったか?あの女の邪気にやられた、とか……。あの女は親戚だとも言っていた。聖女と呼ばれている女性のことを、どうして魔王が知っているんだ?)


オクトは指を立てたまま、先ほどの魔王の言葉を思い返していた。すると、ラーナがこちらを見つめ、記憶をたどるようにゆっくりと口を開いた。

「オクト様。悪の魔王は、聖女のことを知っていたのではありませんか?なぜか私の親戚だと知っていたような……そんな記憶の断片があるのです」

「……話していましたね」


オクトはようやく思い当たったように、表情を引き締めた。

「何だろう……。僕にも、まだ何が何だかわかりません。悪魔と聖女の存在には、何か関係があるような気がします……」


オクトとラーナが思わず驚きを声に出すと、ミルコは呆れたように手を振って二人に制止の合図を送った。

「おいおい、俺がここにいることを忘れていないかい? まだ悪魔だとか言ってんのか?ラーナさん、あなたはやはり極度のストレスによる精神疾患だと思いますよ? 過去に、その聖女と名乗る女性からひどく傷つけられた経験があるのではないですか?」


「……確かに、過去に傷つけられた事実もございます。けれど、私の中にはやはり別の『異質な存在』が確かに蠢いていると確信しています。……それに、ソフィア様の抱えていらっしゃるこの事件と、私の身体の異変は、どうしても根底で繋がっていると思えて仕方がないのです」


「……それらの真意を整理するためにも、やっぱりすぐボンス大神官の元へ向かわないと!!」

オクトの切実な問いかけに、ラーナとミルコは強く首を縦に振った。

「そうしよう!むしろ、大神殿へ行くのなら、そこにもソフィアさんを連れて行った方がいい。俺は精神疾患にしろ、彼女が傷つけられている聖的な力にしろ、ラーナさんに悪魔がいるにしろ、まずは大神殿の人たちの意見を仰ぐべきだ!もし、そこで解決できないなら、今度は俺が首都の中央病院に掛け合おう!」


ミルコの鋭く論理的な意見を聞き、オクトもまた深く納得して胸の突っかかりが下りるのを感じた。


「確かに……! ソフィアさんの件とラーナさんのお身体のことが繋がっているのだとしたら、今が絶好の機会ですね。もしここでソフィアさんを連れ出し、教団が追ってきたとしても、数時間、必死で馬を走らせて大神殿へ駆け込めば、彼らも手出しはできないはずです」

「ああ。教団のやっていることは明白な詐欺行為であり犯罪だ。向こうは色々と言い訳を用意してくるだろうが、全容を公機関である大神殿へ暴露すれば、近づいてきた時点で王宮自警団に拘束されて処罰されるのは、むしろあっちだ。大神殿はこの国の正規の公共機関であり、王宮の騎士団すら動かせる巨大な権力構造なのだからね」

その説明を聞いていたラーナも、強く頷いた。

「この街から、首都の大神殿までは急いで数時間……ですか?」

「ああ。俺の馬のペタルも最高級魔馬だ。二人乗りでも、余裕で二時間以内には着くだろう」

「では……あとは、ソフィアさん本人の意志を確認しなければいけませんね」



三人が話し込んでいると、ほどなくしてソフィアが葡萄酒を持って戻ってきた。

「みなさんも、ご飯を食べますか?」

「僕たちもパンと干し肉を買って持ってきました」

「俺も葡萄酒とチーズを持っているよ」

「それなら、よかったら一緒に夕食にしましょう!」

ソフィアが明るく声をかけると、四人は再び円卓を囲み、それぞれが持ち寄った食べ物を並べた。ささやかな食事ではあったが、こうして一緒に食卓を囲むのは、どこか楽しいものだった。

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