第3話−2
「本当に……?」
「本当です」
「そんなまさか……。あれ?でも、確かにさっきよりも、真っ白ですね!すごい腫れも赤みもかなりひいてますね」
「そうでしょう?」
オクトは、目を丸くして、握手していない方の手で口元を抑えたまま、ラーナの指先や手をじっと見つめていた。
「今まで他の治療は効いたことがないんですか?」
「はい」
「白魔術も?」
「はい」
「薬も医療も?」
「全部です」
彼は言葉を失っていた。なぜか泣きそうな顔で唇を噛み締めている。
「オクト様?」
「……すみません」
「え?」
「少しだけ、驚いてしまって」
彼は困ったように笑った。
「効いたと言われたのも、こんな形で腫れや熱がひいているのを見るのも、初めてだったので」
オクトの目を見つめながら、ラーナは本当に心からの感謝の気持ちを伝えた。
「私は、久しぶりに、動かしたいように動く右手が嬉しくてしょうがないです。本当にありがとうございます!!」
笑顔のラーナを一瞬見たオクトは、まだ信じられないものを見るかのように、手をじっと見つめ直した。そして、ゆっくりと片方の手で指先を優しく撫でてくれた。
長いこと手を握り合ったまま、そこから二人でしばらく固まってしまっていた。
(わわわ。考えてみたら、生まれて初めて、男性と手を触れてしまったわ……彼にとっては普通のことかもしれないけれど……)
「ふふふ。あのう、手を一度離しますね」
思わず恥ずかしくなって、ラーナは彼の手から自分の手を離した。
「あ……はい」
ぼんやりとした彼の様子を見ながら、しつこいかな、とも思いながら、お願いしてみた。
「あのう……ご飯が終わったら、左の手足にも施術をお願いしたいのですが……だめでしょうか?」
その言葉に、オクトは一瞬にして、我に返った表情になった。
「今痛いところはそれだけですか?他にもありますか?普段、痛むけれど、今は出ていないところもありますか?それから、一度、生まれた日や場所、問診のようなこともしていいですか?」
一気に饒舌になる彼の様子を見て、ラーナは内心驚きつつ、頷いてお答えした。
「両膝も、今ひどく痛いです。今日は左手は痛みがかなりひいていますが、普段はあります。それから、生まれは……」
ラーナの言葉を聞きながら、彼はペンと紙を取り出して素早くメモを取り始めた。
「明日、神官達にしっかり相談もしますが、一応、食後に両膝にも、先ほどの処置をさせていただきますね」
「はい。どうぞよろしくお願いします」
彼女が頭を下げる様子を見て、彼は一瞬、身体を引いて胸に手を当てた。
「少し、脈を測らせてください」
「はい」
左手の脈を取った後、オクトはまたさらに筆ペンにインクをつけてメモをしてから
ラーナを見上げた。
「念の為、明日、腫れている様子を神官達にも見せられるように、ここだけ痛みを残してもいいという場所はありますか?小さな一部で大丈夫ですが……」
「では、左手の指で……」
「わかりました。小指と、薬指だと、まだ痛みがキツくないかと思うので、残しておきますね」
「はい!」
二人は笑顔で温かな食事を終えると、一緒に食器を洗って拭いて、身支度を整えた。そして、長椅子のある礼拝堂で、処置をすることにした。




