第20話:抑圧され続けていた奇才(オクト目線)
「ソフィア、ちゃんと大人しくしていましたか?」
「エモーユ様の教えをしっかり守っていますか?」
愛らしい女性達が二人で、部屋に入ると、ソフィアの元へやってきてにっこりと笑った。
「はい、メフィス様、リユキ様」
ソフィアはその二名に対してスカートを両手で持ち、深く腰を下げて挨拶をすると、彼女達は嬉しそうに手袋をはめ始めた。
「今日は何体出来上がっていますか?」
「十体はできています」
「えええ?ちょっと少ないのではありませんか?」
声を張り上げる女性たちに対して、ソフィアは肩を震わせて小さくなっていた。
「も、申し訳ありません……」
「もっとできているはずです……」
「木の材料もこれで最後だったので……」
「じゃあ、新しいのはこれよ」
二人の女性は、木材をポイっと投げると、ソフィアが作った木像を丁寧に、品定めし始めた。
その様子を、オクトは真っ暗な棚の中からじっと見つめていた。
そう、彼の腕の中には、男性の格好をしたままのラーナがいた。
眠っていた彼女をお姫様抱っこして、急いで棚の中に入り、そのまま扉の前に座り込んだのだ。
(密着しすぎてる……。困ったな……。ああ、彼女の肩が柔らかくていい匂いがする……。
閉じているまつ毛までくるんとしていて、かわいい……)
すぐ目の前にある彼女の顔。
頬にかかるかすかな吐息。
暗闇の中でも白く見える頬に、思わず顔を寄せたくなる気持ちを、オクトは必死にこらえていた。
(今はそんなことを考えている場合じゃないのに!!! ううう……)
一人で邪な心と戦っていると、ふと、ラーナの口元が動いた。次の瞬間、ぱっと目を開ける。
どうやら目が覚めてしまったらしい。驚いたように目を見開くラーナの口元に、オクトは慌てて人差し指を立てた。
「しっ!!」
そして、彼女に目配せをすると、彼女は一瞬だけ瞼を閉じて、頷いた。
オクトとラーナが息を殺して、穴から部屋を見つめる先で、二人の女性達はとても細やかにソフィアの彫刻を見て点検をしていた。
「ここの口元の部分が甘いのでは?」
「すみません!!すぐに直します!!」
「こちらも少し腕が太いですよ」
「わかりました!!」
「本当に、いつになったら指導しなくて済むのかしら。これだから無能だって言われるのよ」
「やはりあなたのような実績のない人は困るわ……。こんなんじゃいつまで経っても実力がつかないわね」
「これがエモーユ様に知られたら、大事になっていたところよ」
「本当に申し訳ありません!!!」
女性二人に散々嫌味を言われて急かされ、ソフィアは焦りながら一生懸命それらを修正して、綺麗にヤスリで削っていた。
(そこまで違いはなかいぞ?)
(あんなに素晴らしい技術を持っている人に、なんて言い草だ……)
その様子を覗き穴から見ていたオクトは、向こう側の棚の穴から覗いているミルコと頷き合った。
(優しいふりをして、ものすごく彼女を抑圧している)




