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第19話ー2

「あなたの東方の魔術はだいぶ効いているみたいですが……あくまで一時的なものですよね?まだ悪霊が身体の奥深くまで入り込んでいるようですし、このままで本当に大丈夫なのか、心配です」

「ええと……患者の身体のことを、ほかの人もいる前でそんなにペラペラと話されては困るんですが」


オクトは少し険しい表情になり、ラーナへ近づこうとする彼女を制して、一歩前へ出た。そのとき、ミルコが部屋のランプに火を灯した。パッと室内が明るく照らし出される。

「……!!!?」

「なんだ? お前、さては囚人か?」

突然、背後からミルコの大きな声が響いた。


ランプの明かりに照らされたのは、チェスナット色の髪をぼさぼさに乱した若い女性だった。ぼろぼろの服を身につけているものの、顔立ちは驚くほど整っていて、きりりとした目元には凛とした美しさがある。

しかし、二人が驚いたのは、その容姿だけではなかった。


なんと彼女の左足には、足枷がはめられ、そこから大きな鉛の球体が繋げられていた。しかも、その鉛の横には大量の木屑が散らばり、女神をかたどった像がいくつも転がっている。


「この彫刻……もしや、教団からすべて盗み出したものなのか?!」

「ああ、これはちょっと……」

「なんだ、お前!さては、この像を盗んだ犯人だな?」

「名を名乗れ!自警団に突き出してやる!!」


オクトとミルコは、思わず身構えた。二人に取り囲まれた女性は、予想もしなかった疑いをかけられたことに、こちらが驚くほど大きな声を張り上げた。


「お前らこそ何者なんだ?!なんて失礼なことを言うんだ!まずは自分たちが名を名乗れ!!」

ぼろぼろの衣服に身を包み、足枷までつけられているというのに、彼女の態度には少しも卑屈なところがなかった。むしろ、二人を相手に一歩も引かず、堂々と胸を張っている。


(まさか……彼女には、魔術で結ばれたこの足枷が見えていないのか?)

オクトは不思議に思い、ちらりとミルコの方を見た。すると、彼も同じことを考えていたらしく、女性の足元をじっと見つめていた。


(これは一般的な魔術でできる足枷だ。ミルコの目にも、はっきりと見えている。それなのに……ミルコよりも霊感が強そうな彼女には、見えていないなら……彼女にだけ見えないような魔術をかけられてるんだな?!)

不可解な状況に戸惑いながらも、オクトは先に冷静さを取り戻し、女性の前で丁寧に一礼した。


「僕は、ヌジーニの修道院で神官をしている、オクト・ハミスだ」

「俺は、近隣の村や町を回っている医師のミルコ・ホジッチだ」

二人が名乗ると、女性はようやく警戒を解いたようだった。ほっとしたように表情を和らげ、今度は笑顔で答える。


「なんだ、ちゃんとした身分の方々だったのか。私はソフィア・ローランという。ところで……もしかして、ここは大部屋だったのか?」

「宿の婆さんに案内されたのは、ここしかなかったんだ」


ミルコが答え、ランプの明かりを頼りに部屋を見回す。確かに、よく見ればベッドが四つ並んでいた。どうやら、最初から複数の宿泊客が泊まるための部屋だったらしい。


「それより、あんたは誰なんだ? どうして彫刻がこんなにたくさん、部屋中に散らばっているんだ!」

ミルコに問い詰められたソフィアは、ぼさぼさの頭をがしがしとかきながら、うーんと唸った。そして、困ったようにため息をついた。


「ああ、やらかしたなあ……。見られてしまっては仕方ないか。実は……誰にも言わないでほしいんだが、この女神像は私が作っているんだ。私は、白い鳥教団で彫り師をしている者だ」

「えええっ?!」


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