第2話−2
「あのう、実は、こちらの修道院の治療がとても有名だとお伺いして、参りました。今、白魔術で処置していただきましたよね?とても効いているような気が……」
その言葉を途中で遮るように、彼は右手で制して、ブンブン首を振った。
「いいえ、僕の処置では、全く、とてもダメなのです」
(……これだけ劇的に効いておいて『とてもダメ』!?)
オクトの本気で申し訳なさそうな顔と深いため息に、ラーナは思わず言葉を失ってしまう。
「今、熟練の神官たちが全員、事故の対応で出払っていて申し訳ないです。明日の朝には戻るはずですから、それまで本格的な診察は待ってください」
オクトは困ったように眉尻を下げて、ラーナを覗き込んだ。
「そう……なのですか?」
「はい。よろしければ、今夜はこの修道院に泊まっていきませんか? 広くてたくさん部屋もありますし。普段、多くの療養のお客様は、近所の旅館で宿泊されるのですが、今はどこも満杯か、出払っていると思うので……」
彼の言葉を聞いて、ラーナは嬉しくなった。
「いいんでしょうか?……とてもありがたいです。実は、泊まる場所が見つからなくて困っていたので」
彼はやっぱり、と言う表情でラーナに説明した。
「実は近所で倒木事故があって、重症の怪我人が数名出たんです。みんなそちらへ付きっきりなんですよ」
「そうだったんですね……?皆さん、ご無事だといいのですが……」
「ええ。きっと大丈夫です!!みんなすぐに治りますよ。この村の医師も神官も、とても優秀ですから」
迷いのない言い方だった。自分自身の治療を「気休め」と言いながら、仲間のことは全幅の信頼を置いているらしい。
「それよりも、ラーナさんのご病気が心配です。明日、神官達と相談できたらいいですね」
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
ラーナの胸は期待に膨らんでいた。今までのどこへ行っても感じたことのない手応えだった。
もし、こちらの修道院の噂が本当だったら……。
明日以降、さらに優秀なお医者さんや神官様に診ていただけるかもしれない。
そう思うと、少しだけ明るい兆しが見えてきた気がした。




