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第12話ー2

「えーっと……ちょっと、よく分かりませんでしたが……」

ラーナは耳を澄ませてみたものの、彼が気づいたという音を聞き取ることはできなかった。


「どうやら僕たちの先を行ってくれたようです!大丈夫そうですね」

「すごいです! よく気配に気づかれましたね」

「ふふふ」


オクトはようやく肩の力を抜き、ホッと緊張の解けた柔らかい笑みを浮かべた。

「では、予定通りあの池のほとりでお昼にいたしましょうか」

「はい!」

二人が頷き合うと、ククルをすぐ側にある澄んだ池のほとりへと導いた。



◇ ◇ ◇ 


 池のほとりには、ちょうど腰掛けるのにおあつらえ向きな大木がいくつか転がっていた。旅人たちが足を休める休憩所として使われているのだろう、奥の方には古い木製の桟橋も見えた。


二人はまず、ククルにたっぷりのニンジンを並べてから丸太に腰掛け、宿でいただいてきたサンドイッチを取り出した。 今日は豪華にフレッシュな野菜と香ばしいお肉がたっぷりと挟んできたので、見ているだけで幸せな気持ちが胸に広がる。


(とても贅沢だわ!ゆっくり味わっていただこうっと!……)

ラーナが両手を合わせて「いただきます」とお祈りをしているすぐ横で、オクトはすでに半分ほどを口に運んでいた。 二人が夢中で食事を楽しんでいた、その時だった。

——突如として、目の前の水面から激しい水音が響き渡った。


ザバザバザバーーーッ!!



水しぶきを上げ、全裸の男性が馬を引き連れて勢いよく岸辺へと上がってきたのだ。

「きゃあっ!?」

あまりの出来事に、ラーナは手に持っていたサンドイッチを落としそうになった。

「わわわっ!?」


オクトは瞬時に立ち上がると、水から上がってきた男性の姿がラーナの視界に入らないよう、サッと彼女の前に立ちはだかった。


「ははは、これは失礼」

濡れた金髪と肌をさらしたまんまで、その男性は、悪びれもせずオクトへ軽く会釈した。そして馬の手綱を引きながら、二人が座る丸太から死角になる木立の奥へと向かい、身体を拭いて着替えを始めた。


姿が見えない場所に移動したとはいえ、すぐ近くで豪快に着替えられていて、ラーナは気まずさのあまり、食事を持ったまま固まっていた。でも、自分の目の前に突っ立ったまんまで男の様子を睨みつけていたオクトを見て、ラーナは大急ぎでサンドイッチを口に詰め込んだ。


「大丈夫ですよ。僕がついていますから、どうぞゆっくり召し上がってください」

「うう……っ」

急いで食べようとして、硬いパンの皮を両頬いっぱいに膨らませているラーナが、オクトを見上げると、口元に手を当てて笑っていた。


「お水も飲んでくださいね」

「ふぃ、ふぁりがとうふぉざいふぁす……(ありがとうございます)」

オクトに甲斐甲斐しくお世話されながら、ラーナが口をもぐもぐと動かしていると——先ほどの男性が、手ぬぐいで濡れた金髪を拭いながら二人の前へと姿を現した。


「……ああ、やはりな。どこぞの少年かと思えば、ラーナ・ミネルじゃないか」

低く落ち着いた男性の声に、オクトとラーナはぴくりと動きを止めた。ラーナは恐る恐る彼の方を見上げてみた。


彫刻のような目鼻立ちに緑色の瞳。

真っ白な肌で、細く鍛え上げられたような大きな身体。

——やはり、どう考えても見覚えのない、精悍な男性が立っていた。


「ごめんなさい……どこかでお会いしましたでしょうか?」

「そんなまさか。覚えていないはずはないだろう?」

水気を帯びた金髪をサッとかき上げる彼の顔を凝視しても、ラーナの記憶には一切引っかからなかった。


ラーナが絶句していると、オクトがすかさず庇うように前に進み出た。

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