第7話:二人の旅立ち(ラーナ目線)
二人はそれぞれ準備して、お昼をいただいたあと、すぐに出発しようと話を決めてた。
ラーナは、自室に戻るや否や素早く旅立ちの荷物をまとめていた。
(こんなに手が動くと準備もあっという間だわ!!)
つい昨日まで、痛みのせいで思うように動けなかったのが嘘のようだ。
こちらへ来て一週少々の間に、悪魔との問題で進められる駒が、ほんのわずかに見つかっただけでも大きな進展に思えたし、手足が動くだけでもありがたいとラーナは思っていた。
(ここへ来てよかった)
オクトのほうも、神官たちに自分の仕事を引き継ぎを済ませ、旅の荷物は本当にわずかな時間で済んだ。
いよいよ出発の時。
オクトの隣に並んで大きなリュックを背負うラーナを見て、見送りに集まった神官たちは急に不安になってきたようだった。
「つい、昨日まで歩けなかったんですよ?本当に歩かれるのですか?」
「5日後の乗合馬車を待った方がいいですって!今日じゃなければいけないのですか?」
不安そうに群がる彼らを前に、ラーナは弾けるような満面の笑みだった。
「はい!全く問題ありません」
キリル神官はとても不安そうな表情で、ラーナの足に目をやっていた。
「すぐに馬の手配もできるので、もう少し待ってください」
「大丈夫です。もしも手が痛んで、手綱をコントロールできなくなって、他の方にぶつかってしまう方が危険ですので……」
「こんな時なのに、周りの人への配慮の方を優先されるなんて……」
修道院の誰もが気遣いから口出ししている間、オクトがそっとラーナの荷物に手を伸ばした。
「大丈夫ですよ!私、今本当に調子が良くて、これくらい軽く持てます!」
「ラーナさんに軽いものは、僕にとっては羽のように軽いので。どうぞお任せください」
微笑むオクトの様子を見て、ラーナはお辞儀をした。
「優しくしてくださって、本当に嬉しいです。ありがとうございます」
修道院の門の前で、神官たちがラーナに水筒や干し肉を手渡している間、ステファンがオクトを少し離れた場所へ呼び寄せた。
「東の大きな街道へ向かうよりも、まずは西の牧場へ向かうといい」
「どうして遠回りを?」
「ここから夜まで歩けば、馬の調教で腕の立つ魔馬の牧場がある。この時期なら、魔術の専門家が二人乗りで長距離を走らせてもびくともしない、体力をつけた馬を用意しているはずだ。お前が手綱を引いてやればいい」
「ありがとう、ステファン。確かにそれなら、ラーナさんも納得して馬に乗ってくれそうだ」
「あの牧場の馬なら、一週間そこらで首都に着くことができるかもしれない。それから、牧場主から頼まれていた持病の薬だ。持っていけ」
ステファンは立派な顎髭に触れながら、ゆっくりと頷いた。
「ステファン先輩、本当に、今までありがとうございました」
「色々と、お前の真価がわからないまま、こき使ってしまって悪かったが……これから先は、お前にとって、何かとても大きなことが待っている気がしてるよ」
「ああ。聖霊に守られてるあなたがそう言うなら、きっとそうなのでしょうね」
二人は硬い握手を交わして、別れを告げていた。
ラーナが一歩足を踏み出すと、後ろから神官達の声が聞こえてきた。
「次会うときは、もっと元気に会いましょう!」
「みんなで笑って、またスープを囲みましょう!」
緑の風が吹き抜けるあたたかな日。二人は神官たちの見送りに何度も大きく手を振りながら、慣れ親しんだ村を後にした。




