↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/33

第5話ー2

ーー深夜。丑三つ時。

オクトはローブを深く被って、忍び足でラーナの部屋の方へ向かった。

ガラス瓶に水を入れ、薬を用意して、廊下を進んでいく。

するとーー。


ドッタン、ーードタン、、、ドサッ!!


彼女の部屋の中から、何度も大きな物音が響いてきた。

(いったい、何事だ?)


まるで、誰かが立ち上がろうとしては、何度も床に倒れてしまうような音だった。遠くの部屋で眠っている神官たちには、聞こえないだろうが……それでも、若い神官が言っていた物音がこのことだとすぐにわかった。


(まさか、ラーナさんがまた転んで立ち上がれずにいるとか?)


「失礼します!」

客室の扉を叩いて、開けるや否や、ベッドから離れたあたりでラーナが倒れているのが見えた。


「大丈夫ですか?歩けなかったのですか?」

柔らかそうな長い髪が、肩や腕までふわりとかかっていて、表情が見えない。


オクトはすぐに扉を閉め、駆け寄った。しゃがみ込んで、ラーナの肩を抱き起こそうとした、その時ーー。

包帯が取れてしまっていた彼女の右手の指先から、ボワッと黒炎が舞い上がった。

(これは……!?)


あまりのことに驚き、オクトは思わず仰け反った。そのまま、尻もちをついてしまう。



すると彼女は床に手をつきながら、オクトの頬のすぐ側まで顔を寄せ、にっこりと微笑んだ。


「珍しいなあ。こんな妖力。初めて見た」

彼女らしくない言葉に、驚いた。

「いい香り〜」

彼女の鼻先が、首筋のすぐそばまで近づいてくる。


(いや、どう考えても、ラーナさんの方がいい香りだよ……)

柔らかそうな肌から漂う、薔薇のような香り。生成り色の寝巻きは、以前見た厚手の服とは違い、身体の柔らかなラインをはっきりと浮かび上がらせていた。


そんな無防備な姿の彼女は、ゆっくりと床に膝と手をついて、オクトの方へ迫ってきていた。


真っ黒に燃える彼女の瞳は、こちらを何度も舐めるように見つめる。そして、左手でオクトの頬にふわりと触れたかと思うと、その首筋まで指でなぞった。思わず背筋からブルっと震えてしまう。


「なんてすべらかな肌」

愛らしいピンクの唇。

そこから漏れる、甘い吐息。

指先まで柔らかい肌。

オクトは激しい眩暈に襲われた。

(ああ、ラーナさん……かわいい……)


彼女に手を引かれると、そのままベットに倒れ込んでしまう。

(わわわ、だからって!!ちょっと待って……)

慌てて起き上がろうと身体を起こすと、白いシーツの上を、彼女の美しい手が滑るように近づいてきた。




真夜中の修道院の客室には、月明かりが差し込んでいた。

真っ白なシーツの上。

ラーナは、オクトの手に柔らかな自分の手を重ねた。

全身が心臓になったように、ドキドキし始めた。頭のてっぺんまで血が昇っているみたいに熱い。

「綺麗な唇……美味しそう」

囁きながら、ラーナはうっすらと口を開き、紅潮した頬を近づけてきた。

「ラ、ラーナさん?」

彼女の白い指先が、もう少しでオクトの唇に触れそうになる。

「キス、してみたいな」

囁きと共に、温かな吐息が頬をかすめた。

透明感のある長いまつ毛。ほんのりと紅潮した頬。


(え、かわいい……とろけそう……。なんて綺麗な肌と頬だろう……触れてみたい……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。