SCENE6
茜色の西日が差し込む教室。
生徒たちが帰り支度をする中、湊だけが異常な早さで教科書を鞄に詰め込んでいる。
顔面は蒼白で、手元が激しく震えている。
ガシャン!
手が滑り、筆箱が床に落ちる。中身が散乱する。
その大きな音に、残っていた生徒たちが驚いて振り返る。
大石、異変に気づいて駆け寄る。
大石「おい、どないしたん? 筆箱落ちたで」
大石が拾おうと手を伸ばすが、湊はその手を激しく振り払う。
バシッ!
湊「触らないで!」
教室が静まり返る。
湊は呼吸が荒く、目は泳いでいる。いつもの冷静さは微塵もない。
大石「……湊? なんかあったんか」
湊「……聞いたんだ。さっき、職員室の前を通った時」
大石「え?」
湊「先生と、父さんたちが話してた。『もう限界だ』って。『専門の施設に移した方がいい』って……!」
湊、鞄を胸に抱きしめ、後ずさる。
湊「僕を……捨てる気なんだ。家からも、学校からも追い出して……厄介払いしたいんだよ! 僕が壊れていくのが迷惑なんだ!」
大石「そんなわけないやろ! おっちゃんもおばちゃんも……」
湊「わかるもんか! 君に何がわかるんだよ! 記憶がなくなるだけじゃない、僕は『人間』じゃなくなっていくんだ。みんなそう思ってるんだろ!?」
パニックで過呼吸になりかけ、膝から崩れ落ちそうになる湊。
大石、反射的に湊の体を強く抱きしめる。
湊「はなせ……っ! 離してよぉ!」
湊は暴れるが、大石は絶対に離さない。
背中を強く叩き、耳元で叫ぶように囁く。
大石「落ち着け! 俺がおる! ここにおる!」
湊「うあぁぁ……っ、怖い、怖いよぉ……」
大石「大丈夫や。誰にも捨てさせへん。お前が何になろうが、俺が絶対離さへん!」
大石の体温と心音が伝わり、湊の抵抗が徐々に弱まる。
湊は幼児のように大石のシャツを握りしめ、泣きじゃくる。
大石の目は、激しい怒りに燃え上がっていく。
大石「……待っとけ。俺が話つけてきたる」




