SCENE7
・職員室 会議スペース
重苦しい空気。
担任の真田、父・健一、母・佐和子。
机の上には、療養施設のパンフレットが広げられている。
健一「……やはり、学校生活を続けるのは、周りの生徒さんにも迷惑が……」
真田「迷惑というか、今の福田の状態では、いつ事故が起きてもおかしくない。彼の安全を考えると……」
バーン!!
ドアが乱暴に開け放たれる音。職員室中の教師が振り返る。
肩で息をした大石が、鬼の形相で立っている。
真田「大石!? なんだその入り方は!」
大石、ズカズカと会議スペースへ歩み寄り、机の上のパンフレットを叩きつける。
大石「あんたら、湊になに言うたんや!!」
佐和子「ひ、陽向くん……?」
大石「あいつ、教室で震えて泣いとるわ! 『自分は厄介者や』って! 『捨てられる』って!」
健一「……捨てるとか、そういうことじゃないんだ。あいつのためを思って……」
大石「何がためやねん!!」
大石の怒号が響く。大石は健一を睨みつける。敬語など消し飛んでいる。
大石「あいつは荷物か? 壊れたら修理工場に出すんか? まだ生きとるがな! 俺の隣で笑っとるがな!」
真田「大石、言葉を慎め。ご両親だって苦渋の決断なんだ」
大石「うるさいわ! あんたは黙っとれ!」
大石、涙目で大人たち全員を睨み回す。
大石「10年しか生きられへんのなら……なんでその時間を、知らんジジババしかおらん白い部屋で過ごさせるんや!?」
「あいつが最後に思い出す景色が、天井のシミでええんか!? 俺らがおるこの教室で、バカやって笑って過ごすほうがよっぽどええやろ!!」
佐和子「でもっ……! 私たちだって辛いのよ! 毎日記憶をなくしていく息子を見るのが……!」
佐和子が泣き崩れる。
大石、一瞬表情を緩めるが、すぐに真っ直ぐな瞳で訴える。
大石「おばちゃん。……辛いなら、俺を使ってくれや」
「俺があいつの手足になったる。あいつが忘れること全部、俺が覚えたる。学校での面倒は全部俺が見る」
「だから……頼むから、俺から親友を奪わんといてください」
大石、その場で土下座をする。額を床に擦り付ける。
大石「お願いします。卒業まででいいんです。あいつを、俺の隣にいさせてください」
健一、震える手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。
真田は眼鏡を外し、目頭を押さえる。




