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前へと進む少女と幽霊

 昨日の夜は長かった。永遠かのように感じられた闇も、いつしか朝日によって照らされて散っていった。



 些細な物音にも過敏に反応してしまい、ミミちゃんを逆に不安にさせてしまったかもしれない。



『……ミミちゃん』



『お姉ちゃん、ありがとう。昨日よりは落ち着いたよ』



『ゆっくりでいいから、これからのことを考えていこうね』



『うん、ありがとう。』



 ミミちゃんはお母さんが手にしていたペンダントを手に取り、ポケットに入れた。ペンダントを握る手は強い。



 その後すぐに立ち上がり、ミミちゃんの指から火が出る。魔法を見るのはここが初めてだ。



「お母さん、私、ちゃんと役目を果たすからね」



 涙ぐんでいるが、昨日のような動揺は見られない。これは別れの涙なのだ。



〜〜〜



『お母さんのお墓はどこにするの?』



『「パンドラの守り手」が眠るところがセレスティア王国内にあるから、そこに一緒に入れてもらうことにする』



『うん。じゃあ、行こっか』

 


 ミミちゃんは足を動かそうとして立ち止まる。



『お姉ちゃん』



『なに?』



『昨日はありがとう。私、お姉ちゃんがいなかったらバカなことしてたかもそれない』



『昨日のことはいいよ。私もミミちゃんに十分助けられてるし。今だって、ミミちゃんがいなかったら私何もできずに浮いてるだけの幽霊なんだから』



 ミミちゃんのいつもの朗らかな笑みが戻ってきた。



『そうだね。お姉ちゃんポンコツだったの忘れてた』



『お、いつものミミちゃんだ』



『私いつもこんな酷いこと言ってる?』



『自覚はあったんだね!』



「『……あはははは!』」



 二人で一斉に笑い出す。



「……ふう、ここから一番近い『パンドラの守り手』がいる所、『グリーンセレス』にまずは向かおうと思う。走っていくから、心の準備しといてね」

 


 ジェットコースターの準備、ジェットコースターの準備……。



『もういいかな、行くよっ……!』



 最初に走ってた時より速いぞ……!でも、一番最初の頃と比べると大分怖くなくなった。



 それとも、恐怖という感情が薄れて来ている……?"死なない"っていうのが一番大きいだろうな。



 幽霊だけど、心は人間でありたい。恐怖も大事な人間的な感情だ、と私は思うし。



『ちょっと気になったんだけどさ、野生動物ってセレスティア王国にもいるの?』



『そりゃもちろんいるよ。"グローリアス・アリーナ連邦"にいるようなとんでもない生き物はいないけど、私が出会ったら太刀打ちできないような生き物はいるかな』



 楽観的な所を見るに、そこまで問題はないようだ。



『"魔法"について話をしてもいい?』



 ミミちゃん走る速度が徐々に遅くなり、停止した。



『……ごめん、その話はまだしたくない』



 迂闊だったか。ミミちゃんのほうから話をしてくれるのを待とう。



『お姉ちゃん、別に責めてる訳じゃないからね』

 


『うん、迂闊に聞いた私がいけなかった』

 


 ミミちゃんはまた走り始める。



『後どれくらい?』



『うーん、後少しで街道と合流するはずだから、街道に出ちゃえば目と鼻の先かな』

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