新たな仲間、ルルちゃん
ミミちゃんの言う通り、街道についてからは歩いて行っても秒で着くくらいの距離だった。
『ここがグリーンセレスかあ。レインセレスと似たような場所だね』
『まあね。村に用がある訳じゃないから「パンドラの守り手」が居る所に早く行こうか』
ミミちゃんは森の中を突っ切っていく。
『おおおお、場所は把握してるんだね』
迷いなく前へと進むミミちゃん。
『うん。普通の人には分からない"足跡"を辿っていって「守り手」の所へ行けるんだよ』
"足跡"か。蟻のフェロモンみたいなもんかな?
『よし、ついた』
もう着いたのか。
『お姉ちゃんの存在についても聞いてみようかな。隠す必要もないし』
考えてみればそうだ。ミミちゃんだけが私を認識できているのも謎だし、分からないことだらけだ。
『うーん、除霊されそうで怖いけど、聞くだけ聞いてみるのはアリだね』
『じゃあそうするね』
そう言うとミミちゃんは鐘を鳴らす素振りをし
「ミスティックコード『ウーノス』」
目の前の木々が家に変わっていく。
『おお〜、すごい!これは魔法なの?』
『魔法というより、合言葉かな?知ってれば誰でもできるんじゃないかな?』
はっきりとした家の輪郭が見えてすぐ、家から人が出てきた。
「ミミちゃん!……でも、こんなところまでどうしたの?次のアクターまでは時間があると思うけど」
これまた幼い少女だ。ミミちゃんに会えて嬉しそうだったが、様子がおかしいことにすぐ気付いたようだ。
「とりあえず中に入って」
「ありがとう。ルル」
ミミちゃんの家と似たような構造だった。居間であった悲惨な出来事が脳裏にフラッシュバックする。
『ミミちゃん、大丈夫?』
『問題ないよ。ありがと』
ルルという少女の母親が居間にいた。
「ミミ、起こったことを全て話して。ゆっくりでいいからね」
ルルの母親は概ね察しがついているようだった。
「はい……」
ミミちゃんは家であったことの全貌を明らかにした。
「リヴァランス」が動き出したこと。「シールドセライト」が奪われたこと。敵対者に対抗するには魔法だけでは足りないこと。次の襲撃には時間があること。ミミにだけ見える幽霊がいること。そして、ミミちゃんの母親が亡くなったことを……。
ルルという少女は唐突な出来事に開いた口が塞がらないといった感じだ。
「……辛い思いをしたわね。お疲れ様。申し訳ないけど、その、幽霊については何も分からないわ」
まあ、期待はしていなかったけど。
「彼らが動き出したとなると、私達もじっとしていられない。だからと言って、この場を離れるのは使命を放棄したと見なされてしまう。でも、今は急を要する事態だから」
ルルの母親は少し考えて、二人に向かい丁寧に話しかける。
「二人とも、いいかしら。私はここを離れられないから、二人で他の『パンドラの守り手』に事の概要を伝えて。『シールドセライト』を全て奪われる訳にはいかないから……」
ルルの母親がおもむろに宝石のようなものを取り出す。どこから出たのかは分からない。これが「シールドセライト」だろう。
「ね、ねぇ。お母さん。今すぐに私出ていかなくちゃいけないの?お母さんはどうなるの?」
「ルル。『パンドラの守り手』として生まれたからには、こういうことが起こる覚悟もしていたはずよ」
ルルは頭では分かっている様子だが、全てを受け入れることはまだできていないことが伺える。その表情は複雑だ。今にも泣き出しそうである。
「大丈夫。いつものように出かけるだけだと思って、ね?」
ルルのお母さんの声が震えてきた。
『ミミちゃん、ここは家族二人にさせたほうがいいと思う』
『そうだね、お姉ちゃん』
「ルル、私は外で待ってるね」
ゆっくりと居間を立ち去る。
「……お母さん、これで会うのが最後じゃないよね……」
廊下を歩いている時、そんな悲痛な叫びが聞こえてきた。




