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初めて訪れる異世界の村!

『「いってきまーす!」』



 これちょっと楽しい。



「あんまり遠くには行かないように!」


 

「分かってるよー」



『分かったよー』



 違ったか。ミミちゃんが家を離れるぞ。気持ち的にはジェットコースターに乗る気分だ。



 あれ、あんまり速くない。



 今日もマッハなのかな、と思ってたけど、自転車位の速度で安心した。

 


『お姉ちゃん、うるさい』



『さーせんさーせん。昨日から思ってたけど、ミミちゃんのお母さんちょっと過保護だね?』



『うーん、そうなんだけど、心配して当然というか……』



 こっちの世界じゃ普通なのかな?



『ふーん。レインセレス村がここから一番近いの?』



『そうだね。後ちょっとでつくんじゃないかな』



 この世界の住民、みんなミミちゃんみたいに規格外の身体能力を持っているんでしょうか。全く異世界ってもんは予測不能ですわ。



『それにしても、昨日みたいな速さじゃなくて安心したよ』



『まあ、レインセレス村に至るまでの道はあんまり速く走らない方がいいからね』



『どうして?』



『敵襲だと勘違いされるからかな?あんまり考えたことないや』



 この世界じゃ自転車も車も必要ないから、人間に速度制限でも付けてるんすかね。私のいた世界じゃ絶対聞かないわ。人間に速度制限って。



『私のいた世界の人間は全力でこのスピードって感じかな』



『え、うそ!?』



 こんなの匍匐前進だよ、とでもいったような感じだ。いや、匍匐前進でこのスピードは怖いか。テケテケが脳裏に浮かぶ。



『マジなんだなあ、これが。その代わり科学という偉大なもんがあるんでね』



『お姉ちゃんがいた世界のことも詳しく知りたいけど、まずは……』



 森の中の小道を抜けると、ぱあっと視界が開いた。



『おおっ、これは綺麗だ!』



 目の前には木々と日光が交錯する幻想的な風景が広がっていた。そんな世界のもと、この村の住人は生活を営んでいる。豊かな自然に囲まれているからか、家、道、などのだいたいのものが木で出来ていた。豊かな木々の香りが心地良い。



 美しい自然を感じながら村を散策する。



 第1村人発見!って、だいたいの奴が斧を持ってやがる。

 次の瞬間、信じられない光景が目に入ってきた。



『おいおい、マジかよ……あの大きさの木を片手ですか?』



『え?驚くことでもないでしょ』



 この世界の普通って規格外過ぎやしやせんかね?



『私の世界じゃミミちゃん1人持ち上げるだけでも相当な力を使うんですわ』



『ほんとに?私のお母さんでも私のこと小指で持てるのに』



 もうツッコミすらいらないわ。



『なんか周りの人の視線冷たくない?』



 なんとなくミミちゃんが避けられているような雰囲気を感じる。



『まあね……』



 あれ、この話はあんまり掘り下げない方が良さそうだ。



『この村で何をするの?』



『そうだなあ。案内するって言っても、私じゃできることが少ないし、本買ったり、いろんな国に入る資格を手に入れたり?』



『国に入る資格?』



『うん。ある程度の力が証明されないと国には入れないようになってるんだよね。だから、私はこの国から一回も出たことがない。出た所で他の国に入れないからね。あ、でも"グローリアス・アリーナ連邦"は例外で、資格がなくても立ち寄れるんだよね。私みたいな普通な人は立ち寄らないけど』



 ミミちゃんでも勝てそうにない奴らがうじゃうじゃいる国だって?だめだ、焼け野原しか思い浮かばない。国として成り立ってるのが不思議でしかない。



『そういえば、私達が今いる国の名前って何ていうの?』



『えーっとね……』



 ミミちゃんは言うのを躊躇ってるみたいだ。なんでだろう。



『セレスティア王国だよ』



 ん?セレスティアって……。



『え!いや、仮にも国の名前を私につけちゃうなんて。ていうか、ミミちゃん私の名前全然まともに考えてくれてないじゃん!』



『まあまあ。他人に名前付けるなんてことしたことないし、多分お姉ちゃんは私以外の人間から認知されないし、いいかなって』



『んな適当な……』



 私が"グローリアス・アリーナ連邦"でミミちゃんと会ってたら「グローリアス・アリーナ」って名前になってたと考えると嫌だなあ。



 やっぱり異世界だと地図とかないのかな。



『ミミちゃん、地図ってあるの?』



『この世界の?うーん、お金もちの人しか持って無いんじゃないかな。あったとしてもはっきりとした位置は分からないと思うし、今だって新しい大陸が発見されてるくらいだからなあ。どんな国があるか知りたいの?詳しくは知らないけど。』



『是非聞かせてください!』



 ミミちゃんの知る限りの国の情報を教えてくれた。



 まずはここ、セレスティア王国。


 セレスティア王国は他の国に比べて魔法の残滓が所々に感じられる珍しい国だと言う。私がセレスティア王国に転生したのもその影響かな。


 ミミちゃん以外にも「パンドラの守り手」がレインセレス村のように人が比較的多い所の近くにいて、魔法が解き放たれないようにしているらしい。


 魔法が禁忌となった理由はミミちゃんにもよく分からないと言う。


 まあ、この世界にいるほとんどの人が魔法のこと知らないっぽいし。魔法派閥と筋肉派閥で戦って、筋肉が勝って魔法が邪悪なものにされたのかな、とか勝手に考える。



 セレスティア王国の北には"グローリアス・アリーナ連邦"があると言う。


 連邦自体が大きな競技場と見なされていて、国境を一歩でも超えたら「戦いに参加した」と見なされて戦闘が始まるらしい。38度線みたいやな。


 幽霊の身であるとはいえ、間違って立ち寄るなんてことがないようにしよう。



 その連邦の隣にある国、というより関所みたいな場所らしいが、その関所は通称「トランクワル」と呼ばれている。


 そこは「戦慄の休憩所」だか、「狂戦士の眠る地」だとか物騒な名前もついてるという。



 実際"グローリアス・アリーナ連邦"に立ち寄る際、ほとんど全員の人がこの関所から入るという。


 「トランクワル」は戦いが禁じられており、事実、闘気が封じられているため好んで戦おうとするやつはいないらしい。



 宿、食事、観光や観戦で栄えているという。なるほど、戦いだけでも国が成り立ってるのはそういうね。



 "グローリアス・アリーナ連邦"という名前だが、成立したての頃は作物を育てるのもうまくいかず、最凶最悪の動植物が跳梁跋扈するまさに地獄みたいな環境だったそうだ。


 統治者が困り果て、その動植物を売りさばいたり、傭兵稼業をしたり、他国へ侵略したり等、様々な経緯を経て今の形になった、というから実際国では無いとミミちゃんは言っていた。


 私の想像は合ってたワケだ。



 実際今の形になってから戦争が減ったというので当時の統治者の名前、「グローリアス」の名前が「トランクワル」では称賛の意を込めてあちこちに見られるという。



 この世界の住民、血に飢えすぎじゃないですか?



 セレスティア王国を東に行くと海を跨いで大陸があるみたいだが、未開拓だという。一応名前はあって、「ロストテラ」または「征服されざる深淵」と呼ばれている。


 東へ行った人がことごとく帰って来ないので、その地は楽園だとか、地獄だとかさまざまな噂があるらしい。



 西、南にも国はあるとミミちゃんは言っていたけど、詳しい情報を知るには都市に行かないと分からないという。



『なるほどねー。ありがと!ミミちゃんはレインセレス村以外の所に行くことはあるの?』



『ほとんど無いね』



『え、じゃあほとんど村と家を行き来する生活をしてるの?』



『基本的にはそうだね。"パンドラの守り手"として生まれたからにはしょうがないんだけど』



 生まれながらに生き方が決定してしまっているとは。なんと嘆かわしいことか。



『まあ、ちょっと前までは「そんな生き方嫌だ!」って思ってたけど、もう諦めたよ』



 笑って言っているが、本心ではないことは明白だ。



『自分の気持には素直でいたほうがいいぜ。それに、今は私がいる!物理攻撃が効かない私は、多分最強だから!』



『ありがと、お姉ちゃん!』



 健気なことだ。泣けてくるぜ。



『話も終わったことだし、何か一冊本でも買おうか』

 

『できれば絵本で……』



『ふふふ、分かってるよ』



 ぎしぎし、というきしむ音を立てて扉が開く。



「いらっしゃ……ちっ、『カオスノワール』かよ」



 いらっしゃい、と言いかけたが、ミミちゃんの顔を見てすぐさま顔を背け、隠す様子もなく不機嫌な態度を取る。



『ちょっと、あの態度なんなの?お客様は神様だろ!カオスノワールって……そんな悪の組織みたいな』



『私達の村での扱いはこんな感じだよ。みんな「パンドラの守り手」がなにしてる集団なのか分かっていないから恐れてるんだと思う』



『正直に言っちゃえばいいじゃん!「禁忌とされている魔法を封じてます」ってさ!』



『言ったとしても無駄だと思う。魔法なんて知る人ぞ知るレベルじゃないくらいマイナーだし。後、「パンドラの守り手」の掟に「魔法のついて人々に言及するな」みたいなことが書かれてるから、どちらにせよ無理』



『そうだとしても、あの態度はないよ。許せない。よくこんなにかわいいミミちゃんに悪態つけることができるな!』



『そう言ってくれてありがとう。しょうがないと割り切ってたけど、お姉ちゃんが変わりに言ってくれてちょっとスッキリしたよ』



『ミミちゃん……』



 幼い頃から迫害を受けていたと考えるとやるせない。



『お、これなんかどう?【統治者グローリアス】』



『さっき話してた連邦の人か。うん、字を読む練習にもなりそうだし、それでいいかな』



『他にもあるけど……』



『こんな所、さっさと立ち去った方が良いよ』

 


『もしかして気遣ってくれた?お姉ちゃんやさしいね』



『ぐへへ、褒められると照れちゃうなあ』



 さあ、この後はどうなる。



「160ペソアだ」



 商売に関しては公平なのかな?と思っていると



「見た目が子供っぽいからって騙そうとしてるの?80ペソアって書いてあるから」



「いや、160ペソアだ」



 これは何を言っても難癖付けて160ペソアだ、って言ってくるパターンだ。



『ミミちゃん、こんな奴ほっといて帰ろう』



『いや、お姉ちゃんにお返しがしたいから』



『でも……いや、ミミちゃんありがと』



 人の善意は断るものではないだろう。しかし、160ペソアっていくらなんだろう。



「ふん、持ってけ」



 ミミちゃんは本を抱えて店から足早に立ち去る。


 

『ミミちゃん、本当に良かったの?』



『うん、これでお姉ちゃんに文字を教えられるね』



『ちょっと聞きたいんだけど、1ペソアで買える物ってなに?』



『1ペソア……うーん、あんまり買い物はしないからなぁ。もしかして値段気にしてるの?心配ないよ。私達お金はいっぱいあるから。80ペソアでも160ペソアでも変わりないよ』



 お金は稼げるかは分からないけど、80ペソアはいつか返そう。



『80ペソアは"命"に替えてもお返し致します……!!』



『ふふふ、お姉ちゃんおもしろいね』



『あはは、こういう言葉も幽霊の私だとおもしろくなっちゃうね』



 私も笑ってそう返すと



『じゃあ、そろそろ帰る?』



『うん。ミミちゃんのお母さん心配させると悪いし、帰るか』



 私達は帰路についた。

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