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ディストピアの反魂使い  作者: 柊アキラ
32/33

第3章 第12節 俺の知らないラウムの好きな人

※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。

シェアワールド『テラドラコニス』のリンクはこちらです。

https://terradraconis.com/

ダリウスは、いつもと変わらなかった

その灰色に変色した腕、以外は。


「なあ、ダリウス

そんなポンポンに腫れてさ……、痛くないのか?」


「ああ、痛みはないかな」


「でも、おかしいだろ? 肌の色じゃないぞ、その左手」


「うん。なんか懐かしくないか? この色」


「は?」


「アレキ、この腕の色さ。どこかで見たことないか?」



刹那、記憶の琴線がふるえたーーーーーーーーーーーーーーーーー



その昔、ライラックの花が満開の頃

そうあれは、失踪する前の……父さんの右手の肌……!


「それさ、似てる」


「え?」


「ダリウスの左手。失踪する前の、父さんの右手にソックリだ」


「へえ、どんな色だっけ?」



ゾクリと肌が泡立つ。

覚えてないのか?

毎日いっしょにいたのに!?

何よりあの頃、家族でいちばん父さんの腕を心配してたのは、ダリウスだったのに。


カチャンと音がして、視線を向けるとルダの顔が蒼白だった。食べていたパンを、皿の上に落としてしまったらしい。唇がピクピクと細かく震えてる。当のダリウスは、特に気にしてる風でもないらしい。


カノンの隣の席にストンと座ると

曇りのない青空みたいな笑顔で、パンを指差した。


「ま、いいさ。そのうち思い出すだろ

カノン、このパン一個もらうな!」


「え、あ、うん」


「これ、うまいな。んー、でもちょっと薄いかな」


「薄い?」


「うん。もうちょっと、甘くてもいい気がする」


「そうかなー、あたしは丁度いいと思うけど。甘いの好きだし〜」


「そっか」


ダリウス、なんか元気だな。

腕があんな……、奇形じみた感じで肥大してるのに

なんだろう、自分の腕とか心配にならないのかな? 


俺だったら、めっさめさ気になるけどな。

だって、いつもの倍以上は腫れあがってるし、肌の色も灰色だし。『もしも、治らなかったらどうしよう』とか、『ヤバイ、医者ってカルラ・オアシスにあったっけ?』とか、すげー心配になっちゃいそうな気がするよ。


まず普通にゴハンとか、食べれるかなー俺?

けっこう心配性なんだよな。

あ、そうだ! この朝メシ食べたら、まず医者に行こう。ダリウスの腕、診てもらった方がいいような気がする。そんな想いがグルグルと脳裏をめぐる中、ふとダリウスの方を見ると、熱いスープを口に運んでいるところだった。



「薄いな」


「薄い?」


「アレキ。このスープさ、なんか薄くないか?」


「え、普通においしいけど」


「えー、薄いだろこれ。シャビシャビの水に近いぞ」


「そんな事ないけどなあ〜」


「まーいいさ、この塩もらうな」


そう言うと、ダリウスはテーブルに置いてあった塩の瓶を持った。


バシャバシャ

バシャバシャ

バシャバシャ

バシャバシャ

何度も何度も何度も何度も、スープの上へと振りかけた

俺はなんだか衝撃すぎて、ダリウスの揺れる手を必死で止めたんだ。



「ダリウス、おいっ!! どんだけ振りかけんだよっ」


「うん、やっぱこのくらいのが美味いな」


「そんなバカな、かけすぎ案件だろ〜

塩のスープになっちゃうぞっ!」


「んなことないって、アレキも食べてみろよ

うまいぞ?」



笑いながらダリウスが、俺の口へと強引にスプーンを運ぶ。ジャリ……っと、塩の粒がスープの中から押し流れてきた。


「うわ、しょっぱっっ!!」


スープは喉の奥へと流れていったけど、後味まで辛すぎる。塩でジャリジャリするスープなんて、どう考えても食べらんねーよ!!


「そんな辛いか?」


「か、辛いわーーーーーーーーーーーー!!!!

辛くて死ぬかと思ったよ!!」


「おいおい、大袈裟だなーアレキ」


「ダリウス、お前……ほんっと冗談がすぎるぞ」


「普通にうまいじゃん」


「嘘だろっっ!?」



ダリウスは、おいしそうにスープを口へと運ぶ

その唇の端には、笑みが浮かんでいた。


……本気、おいしそうだけど……

いや、それ塩の味しかしないだろ?



「変なダリウスっ」


「なんだよアレキ、これウマイのに」


「うわーーー!! なんでカノン、メタモルフォーゼしてるの!?」


ルダの絶叫で、隣を見ると

カノンが、メタモルフォーゼしていた。


いやいやいやいやいやいやいやいやいや

なんで突然!?

朝ごはんの時間ですけど!!


「カノン、どうしたんだよっ!?」


透明なゼリーみたいになったカノンが、みるみるラウムの形に変化していく。やがて漆黒の翼が形になっていくと、黒髪ストレートロングのラウムの形が完成した。

艶めいた黒髪は、サラサラで

雪華の肌は、マシュマロのよう

大きな瞳は、真紅の輝きを宿し


そこにいるのは紛れもなく、邪神ラウムだった。




「すっげーー、なんで急に?」


「ふう、このパンが食べてみたかったのですわ」


「ベルリーナ・プファンクーヘン、これの事か?」


「そうですの! わ〜アプリコットジャムが蕩けて、おいしそうですわ〜」


ラウムはベルリーナを手に取ると、目を煌めかせて食べはじめた。

ジャムの中身を確認すると、『はわああ……! 夢の食べものっ』といって、ほっぺを押さえる。その表情は、至福そのものだ。

なんか、幸せそうだな〜。


「ラウムってさ、邪神なのにパン好きだよな」


「そうね、ガラテアがよく作ってくれましたから」


「そっか、前に言ってたな」


「誰かのために作るパンは、おいしいですわね

ガラテアのパンも、淹れてくれたお茶の味も

今はもう、どこにもないけれど

鮮やかに、覚えておりますわ」


そう呟いたラウムの瞳には、遠い日の何かが映ってた。

俺の知らない、ラウムの好きな人

俺の知らない、ラウムの好きな味

ちくり。


「ん?」


なんか今、心臓が軋む音がした。

なんだろう、この気持ちは……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 途中、ラウムの登場で雰囲気が変わるので、最初の出だしの衝撃もやわらいだようにも感じるけど、 やっぱりダリウスの左手がーーー。。。 え。。。父さんの腕の事は覚えていないのもめちゃめちゃ気…
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