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ディストピアの反魂使い  作者: 柊アキラ
31/33

第3章 第11節 煉獄、地獄とアプリコットジャム

※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。

シェアワールド『テラドラコニス』のリンクはこちらです。

https://terradraconis.com/


反魂使いのダークファンタジーです。

書いてたら思いのほか、おいしそうな感じになりました。

読んで、楽しんでいただけたら

とてもとても、うれしいですー!

「だってギルフィは言った、俺は特別なんだってっ!!

特別は『たった一人』だ

そんな、何人もいてたまるかよーーーーーーーーっっっ」



リザが叫び、走り去った後

ギルフィは、追いかけなかった。


ダリウスは、頭痛に苦しむあまり、パタリと気を失ったからだ。

ギルフィは心配して、ダリウスを背中に背負い、宿屋まで運んでくれた。なんか、すげーいい人すぎて申し訳ないくらいだよ。

本当は、リザの事だって心配だったろうにな。


若草の草原に、涼やかな風がザザーーッと吹いて

波のようにユラユラと揺れる。

褐ミノは去り際に、こんな言葉をくれたんだ。


「も、も、もう会えないかもしれねえが、どこかで会ったら。

他の反魂使いについて、教えてほしいなあ」


「ああ、きっと教えるよ」


「お、お、俺もさ、この本については謎が多いんだあ

いつか、他の反魂使いに会ってみてえな」


「だよな、俺も会いたい!

てかさ他の反魂使いって、一体どんだけいるんだろうな〜」


その時、ミノタウロスが何かを制するように、口を挟んだ。



「好奇心旺盛なのはいいが

いい奴ばかりじゃねえぞ、うちの弟は稀なタイプだ。

『煉獄の反魂使い』もいると聞く」


「煉獄ゥ!?」


「そうだ。反魂使いを狩るらしいなぁ」


「反魂使いハンターーーー!?

え、マジで!? 命狩られるってこと……?」


「かもな。まだ俺たちは出逢っちゃいねえが

このテラドラコニスは広い

闇に染まりし者たちも存在するから

あんまホイホイ関わると、命狩られるぞ」


「うわーーー……、はい、気をつけますっっ!!」


こ、怖っっ!!!

反魂使い狩りとか、シャレになんねえな……

会いたくねえええええええええええええええええええ!!


『煉獄の反魂使い』か……

めっちゃ気を引き締めて生きようと、俺は心に誓った。


「じゃあまた、旅路のどこかで!」


それでも、大きく手を振って別れたあと

新緑の草原の向こうへと消えていく、褐ミノたちを目で追いながら


旅に出なければ知らなかったであろう、手応えを知った。

やっぱ、いろいろ経験値積んでいかないとダメなんだなあ。


なんか、頑張ろう。




宿屋へとつづく細い路地は、煉瓦の壁が整然とならんでいて美しい

石畳の坂を登ると、街の灯りが煌めく通りへと、辿りついた。


「わんわんわんっ!」


「しーーーっ。バロン、ダリウス好きなのはわかるけど

今は静かにしてくれよな」


バロンは、宿屋の路地で飼われている犬だ

ハナの辺りが白くて、あとはセピアの毛並みに覆われている。

すっげーかわいい!!

すっげーかわいいけど、ダリウスの方に懐いているんだよな〜


カルラ・オアシスに着いてからは、暇さえあればダリウスが、バロンをもふもふしていた。いつものように、ジャンプして抱きつこうとしたから、頑張って制したんだ。


「また明日な、バロン」


「クゥゥン」


バロンのおでこを優しく撫でると、俺は宿屋の入口へと急いだ。


「は〜マジで助かったよ、ギルフィ!」


結局ギルフィに、宿屋までダリウスを運んでもらったんだ

俺はすっげーホッとした。

ミノタウロスが死んだり、生き返ったり、ちがう反魂使いに会ったり。イロイロありすぎて、きっとどこか緊張してたんだと思う。


「ああ、こんな事は造作ない。

リザがみつかったら、共に旅をしてもいいか?」


「もちろん!

俺たちそんな強いわけじゃないから、一緒に旅してくれると助かるよ」


「よかった。じゃ、明日またここで」


「ああ」


宿屋でギルフィと別れたあと

俺は傍に眠るダリウスの顔に、目を落とした。


白い枕に顔をうずめて眠る顔は、どこかあどけない

まだ少年の残り香を感じるな。

窓からは、朝のさわやかな光が差し込んでいる。こうしていると、まるで何もなかったみたいだ。変わらぬ日常の中で、俺たちだけが変わったと感じたんだ。


「ま、しばらく寝かせとくか〜!

ゆっくりな、ダリウス」



俺はトントンと階段を降りて、下の階で朝食をとることにした。

一階には、宿屋で泊まった者たちが、いっしょにゴハンを食べられる食堂がある。大きな木製テーブルに、ルダとカノンが座っていた。

あれ、ルダ無事だったのか!!


「あ、アレキーーー!!

昨日は、ごめんな!」


「ルダ! お前、あの酒場から一人で帰ってきたのか!?」


「うん。一人になっちゃったから、ダッシュで宿屋に戻ってきたんだ〜」


「お、おお、そっか! よく無事だったなー」


「ふええええええ、精神的にはズタボロだよ〜

もう酒場とかないわ〜怖すぎだもんっっ」


「よしよし」


ルダ、怖がりだもんな〜。無理もないや

俺も正直、ちょっと怖かったもんな。


あの酒の薫りとか、白くけむる煙草の霞とか

いろんな人種、人じゃない獣人や妖精も混ざってて、あれを「楽しい」と思えるほど、俺はまだ大人じゃないんだなって思った。



ギルフィがいなかったら、どうなってただろう



無事に帰ってこれただろうか?

想像すると、ゾッと冷たいモノが背筋を駆け抜ける

『強くならなきゃいけない』

心底、それを思った。


「おはよ、アレキ」


「カノン!」


「ルダがね、ここの焼き釜借りて、パン焼いてくれたんだよ〜!」


「え、マジで!?

うわーめっちゃおいしそー!!」


みると、長テーブルの上に大きな皿があり、プレッツェルと、丸いパンが山盛りに置いてあった。おっわーーーーーおいしそ〜!!

丸いパンには、粉砂糖が雪のように儚げにかかっていた。よく考えたら、お腹はペコペコだ。乱闘の末に草原で生き返らせたり、いろいろあったもんな。


「カノン、この丸いパンなんていうんだ?」


「これはね、ベルリーナ・プファンクーヘンっていう『揚げパン』だよ」


「揚げパンか〜俺、食べたことないや」


「甘くてフワッフワだよ、中にアプリコットのジャムが入ってるの」


「マジで!? すげー、中のパン生地やわらか〜い」



俺はベルリーナってパンを、半分にちぎった。

中からは、瑞々しいアプリコットジャムがトロトロに入っていて、思わずかぶりつく。


「うっま!!」



果実の優しい甘さが、口いっぱいに広がる!

外の粉砂糖と、ふんわり食感のパン生地

そして絶妙にあま〜い、アプリコットジャム……!



「はーーー何これたまらん……」


「おいしいよね〜

ルダってほんと、パン屋さんになれると思うもん」


「だな! 世界一うんまいっ!」


「ね、アレキ!

こっちは中にね、クランベリージャムが入ってるんだって

半分こしない?」


「半分!?」


「そう、半分」


にこにこと、花のような笑みを浮かべるカノン

なんか、癒されるな……。

フワリ半分にちぎると『いっしょに食べよ』と、俺の白い皿の上にベルリーナを置いてくれた。


皆でいっしょに食べるパンは

一人で食べるよりずっと、おいしい。


この、なんてことない日常が

なんだかすごく、温かく感じたんだ。



「おはよう、先に起きてたのか」


木の階段を降りて、ダリウスがやってきた。

陽光に照らされた食堂は、キラキラと柔らかな色彩に満ちていた

ただ一点の、違和感を除いてはーーーーーーーーーー



「ダリウス、その左手さ

どうしたんだ?」


「ああ、これ?

なんか朝起きたら、プックリ腫れててさ

でものこの灰色の腕、ちょっと懐かしい感じがしたんだよな」



ははははっと、軽快な笑顔で灰色の左手を振ってみせる

それは、人間の腕には見えなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々のルダとカノンに癒される回でした( *・ω・)ノ ミノタウロス、鈍色の反魂使いとか、色々と緊張する展開だったので、ルダとカノンに癒される\(^o^)/ 懐かしい家に戻ったような感覚…
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