表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディストピアの反魂使い  作者: 柊アキラ
29/33

第3章 第9節 銀の反魂使い

※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。

シェアワールド『テラドラコニス』のリンクはこちらです。

https://terradraconis.com/


反魂使いのダークファンタジーです。

「い、い、命を呼び戻す事はできないけどさ

傷を治すことなら、できるんだあ」


褐ミノは、パラリと鈍色の書をひらいた。


分厚い本の真ん中に、深い海の色をした栞が目に飛び込んできた。

ひらいたその頁には魔法陣が描かれてあって、ゆっくりと魔法陣の円をなぞり、褐ミノが歌うように文字を読みあげていく。



「ち、ち、血を穿て」


刹那、鈍色の書が発光するーーーーーーーーーーーーー


闇夜に発火したかの如くに、鮮やかな光を放ち、キラキラと明滅する。褐ミノは、右手で輝く書を持ち、左手を俺の傷口にそっ……と添えた。


「あれ? なんかあったかい……」


右手の甲にあった傷が、なんとなく柔らかな熱を持っている気がしたんだ。不思議なんだけど、暖炉の前であったまってるみたいな感覚で。じんわりと傷口に、優しく響いた。



「闇より出でし羽衣よ

血脈の言の葉に添えて

花の如くに その芽を閉じよ

いざ、裂けし帳をこの世に降ろさんーーーーーーーーー」



詠唱のあと、褐ミノの掌がカッ!! っと燐光を放った。


「むっちゃ眩しっっっ!!!」


目つぶし!!

って感じの、鮮烈な閃光。

俺の右手の甲にガンガン当たってるーーーーーー!!


「あれ?」


血が滲んでいた傷口から、血がジンジンと消えていく……!

赤い一本の線みたいな傷が、みるみる塞がっていくと、やがて何もなかったように、ツルンと傷のない手の甲になった。


「うっそだろ!? 治ってる!!」


「う、う、嘘じゃねえよっ!

これが、鈍色の反魂使いの力だ」


「傷を治す力……これがお前の……」


「あ、あ、ああ。俺には、命の蘇生はできねえ

でも、傷を治すことだけは、できるんだ。

この鈍色の書さえあればーーー」



深淵の書とソックリな、鈍色の書。

父さんから受け継いだ「反魂の力」とは、全然ちがう力じゃないか!? 一体どういう事なんだろう……。


もっと他にも、ちがう色の反魂使いが存在するのかな?

てか、反魂使いって知らないだけで、たくさんいるとか?

うーーーーーん、全然わかんねーな。聞いた事もないし、なんだか謎がいっぱいだ。



「なあ。俺の血族は、何色の反魂使いなんだ?」


すると離れて見ていたギルフィが、俺たちの方に近づいてきた。漆黒の狼だけに、艶やかな毛並みが風にたなびく。その瞳は、深淵の書の表紙、ダークローズの色を映していた。


「お前の血族は、おそらく『銀の反魂使い』だ」


「銀の……反魂使い……?」


「そうだ。本の残留思念にハッキリと映る。たくさんの血と魂を込めて、その本は生まれたんだろうさ。おそらくは、最古の血脈」


「最古って……」


「お前の血を辿ればきっと、その答えがわかるんだろう」


「俺たちの血と、この本に……反魂使いの答えがあるのか」



ダークローズの表面を、俺はゆっくりと撫ぜる。

父さんも、その父さんも、ずっと昔のご先祖様も、この本を大切に守ってきたんだろう。……俺は継げなかったけれど、銀の反魂使いの何たるかを、知りたいような気がした。


「ギルフィ、貴方に聞きたい。もしも他にも、残留思念から読み取れる記憶があれば、俺も聞きた……!」


「ダリウス!?」


ギルフィに話しかけていたダリウスが、突如倒れた!!

え、え、なんで急に……っ?

その顔は真っ青で、陶器のような肌が、人形みたいに白く見える。さっきミノタウロスを詠唱で蘇生させた時は、あんなに元気だったのに、どうして……!?


「大丈夫かよ、ダリウス!!」


「ぐっ、なんだか頭が……痛くて」


ダリウスが倒れたまま、頭を押さえて『ぐっ』と呻いている。苦しそうな吐息が漏れていて、どうしたらいいのか全然わかんないっっ。


「アレキ、反魂の術の副作用かしら?」


「まさか」


「だって前も、ルダの記憶が消えましたわ」


「そっか、そうだよな」


どうしたらいいんだろう。

そう思いあぐねていると、ギルフィがスッとダリウスを抱き上げた。漆黒の狼だけに背も高いし、力もあるんだろう。軽々とした仕草で。それはあまりに流麗だったから、俺は普通にビックリしたよ!!


「お節介で悪いな。アレキといったっけ?

何かの縁を感じた。俺が宿まで運ぼう」


「え、ちょっ!? 

なんでギルフィが、そんな事すんのさーー!!」


「リザ、お前も手伝ってくれ」


「なんでだよっ!! 

いつも、そんなキャラじゃないじゃんかっっ」


「そうだな」


「らしくねーよ!!

ギルフィはいつだって『関係ねー奴に深入りすんなよ』とか、説教するくせにっっ!!」


「この人は特別なんだ」


「と、特別うっ!?」


「そうだ。気になる事があってな

共に旅をしようと思う」


「はあああああああああああああああああああああああ!?」


「だからリザ。お前も、一緒に来てほしい」


「ーーーーーーーーっっ」


リザって少年が、地面をにらみ黙ってしまった。

その指が、わなわなと震えている。この二人、どういう関係なんだろうか? 兄弟かな、とか思ってたけど、どうも違うように感じた。


わななく指をギュッと握ると、リザが唇を噛み締めて、静かに言葉を紡ぎだしたんだ。



「ーーーギルフィの特別ってさ、そんな簡単なモノ?」


「リザ?」


「俺が、俺だけが……

ギルフィの特別なんだと思ってた」


「おい、それはさ……」




「俺にはギルフィだけが特別だ……っ

世界には他に、なんにもいらない」




ギンと眼光を、ギルフィに向ける。

翡翠の瞳は真剣で、殺気すら感じるほどに真っ直ぐだった。


風が、若草をサヤサヤと揺らす。黒髪に一筋だけ、炎のように紅い髪。それが燃え立つ焔の揺らぎのようで、リザって少年に合ってるように感じた。



「リザ、俺の話を聞けよ」


「聞かないっっ!!」


「お前っっ!」


「だってギルフィは言った、俺は特別なんだってっ!!

特別は『たった一人』だ

そんな、何人もいてたまるかよーーーーーーーーっっっ」




リザは咆哮すると、ギルフィに背を向けて走りだした。

ブックマーク、評価、していただけますと

とても励みになります。

(最新話のページの下部に評価を入力する場所があります)


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 反魂使いの謎が少しだけ見えてきた今回。 なんか新しいものが見えてきたみたいで、新鮮味がありました。 やっぱりギルフィ格好いい(///∇///) でも、「共に旅をしようと思う」ってセリ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ