第3章 第4節 いちめんの緑と漆黒の鴉
※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。
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ラウムさん、大変な回です〜!
「教えて差しあげましょうか
神の怒りというモノを……!」
ラウムがスウ……っと、右手を掲げる
その手は、みるみると闇色に染まっていく!
指先は、漆黒の翼へとメタモルフォーゼを遂げ
黒い花びらが、ひらひらと舞うように
漆黒の羽たちが、揺らめいて落ちた……!
「ラウム、やめろーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「もう、遅いですわ」
酒場の天井に頭を打ちつけそうなほど
巨大な漆黒の鴉の姿……!
酒場のざわめきは、一層大きくなる。
ヤバイって! こんな人目につくところで、どう回収したらいいんだよ、これは!?
「デカーーー!!」
「こんな……巨大な鴉、どこから……!」
「さっきの姉ちゃん、変化してたぞ!」
「俺、酔いが回ったのかな……ミノタウロス捕まれてないか?」
はい、掴まれてます!
お腹をギュギュッと鴉の爪で挟まれて、ミノタウロスが赤い顔を火照らせて、怒ってるのが見えた。憤怒の表情を浮かべ、足をバタつかせているけど、鴉化したラウムは微動だにしない。
これは……、圧倒的に強すぎる!!
俺は喧騒の中、いつの間にか隣に立っていたダリウスに、救いの声を求めた。
「ダリウス〜! あれもう、どう回収すりゃいんだよ〜!」
「まずいよな。スキを伺ってミノタウロスを……え!?」
「飛ん……だ」
刹那、視線の先のラウムが……飛んだ!
ミノタウロスのバタついた両足が、ヒュッ……と、上空に浮かぶ。
いやいやいやいやいや、まさかここで……飛ぶ……とか!?
いやだって、酒場にはドアとかあるでしょ。
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバッキイイイ
「ラウムさん、ドア折れてますーーーーーーーーーっ!!」
「アレキ、あれは折ったというより、ぶっ壊してる」
「うん、正解」
「追うぞ、ミノタウロスを隔離して
ボコボコにする気かもしれない!」
「ボコボコにすると思う」
「アレキ、俺もそう思う!」
「気があうな、さすが俺たち!」
こんな時なのに何故か、猛烈に双子である事を実感する。俺たちはルダを残すことにして、砕けたばかりの「先刻までドアだった大きな穴」を抜け、クライネヒュッテを飛び出した。
すまん店主、いつか出世したら破壊した分は、返す!
(多分だけど、出世する予定です。自分的にはっ)
と・に・か・く!!
俺たちは、飛び立ったラウムの後を追う事にした。
店の前に立ち、抜けるような蒼い空を見上げる。北の空に、巨大すぎる漆黒の鴉が、一羽。
バサリバサリと大きく羽ばたいている姿が、瞳に映った。
なんかこう……天空の神みたいだな。
そのまま視線を下の移動させると、ジタジタと忙しく手足を動かし、もがいているミノタウロスの絵があった。
「ラウム……めっちゃ、ミノタウロス掴んだまま飛んでる……」
「すげーシュールだが、牛頭……
むちゃくちゃ元気に生きてるな」
「ダリウス、とにかく急ごうぜ!」
「ああ、息があるうちに止めよう!」
俺たちは、空を飛ぶラウムの姿を目印に、思いきり地面を蹴った。走り続けるうち、ラウムはガクンと急降下したんだ。そこはいちめんの緑の大地。葦の生い茂る野原だった。
ミノタウロスを掴んだまま、漆黒の鴉がみるみる若草の野原へと、身を沈めていく。
あーダメだ……、すっごい嫌な予感がする……!
「ラウムーーーーーーーーーー!!!」
俺はたまらなくて、彼女の名を呼んだ。
その刹那
黒き羽がザワザワと、緑の野原に舞う蛍のように舞い散った。
ザシュッッッッッ……!
なにかを切り裂く音がした……
その音の方向、その惨劇の中に辿りつく。萌黄色に煙る草いきれの只中に、漆黒の髪揺らす美人がいた。
ラウムだ……!
鴉の姿から再びメタモルフォーゼして、女性姿へと変化してたのか。大丈夫かよ、間に合ったのか!?
「ラウム、一体どうなって……!」
彼女の足元には鮮血が、小さな水たまりを作っていた。
血溜まり真ん中には、ミノタウロスが目を見開いて倒れてる。その腹には、爪で傷つけたような大きな裂傷があった。
あ、これって……もう遅かったって……こと?
「ダリウス、血溜まりが……!」
「ああ、息があるといいけどな」
ダリウスが、ミノタウロスの首筋に指を添える。脈を測ってみたけど、ゆっくりと首を振った。
「ダメだ。既に心の臓が動いていない」
「そうか……」
最悪のシナリオだ。
彼女を止めるつもりだったのに、ミノタウロスを殺めてしまうなんて……!! 俺はふと、ミノタウロスを見下ろす、ラウムの方へと視線を向けた。
そこには蒼白の、彼女がいたんだ。
思わずラウムの肩に、そっと手を添えてみる。
「ラウム……?」
ーーーーーーあれ、ラウムの肩……震えてる?
カタカタと小さな振動を感じて、俺は思わずハッとした。
くるりと振り返った、ラウムの瞳
そこには、雫が浮かんでたんだ。
「ごめんなさい、私が……!
殺めてしまいましたのっ……!」
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