第一章 第十一節 俺が今日「彼女の運命の人」になった件について
※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。
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さて、ディストピアの門から現れし、漆黒の美人はどうなるのでしょう?
カノンは?
物語は、ここからはじまるーーーー
人生はじめてのキスは
人か、人外かわからない
でも美しい人でしたーーーー
「貴方。あの人の、生まれ変わりかしら?」
彼女の柔らかな唇の熱が、そっと離れる……。
「えっと、あの人って……」
「それは……教えてあげない」
ふふっと、彼女の唇に、魔性の笑みが浮かぶ。
吐息がかかりそうなほど近くに、彼女の顔があって。その白い華奢な指先が、俺の頬をやさしく撫でていた。
「なんで、こんな……キスとか」
……こんな風に甘えられると、彼女がディストピアの門から現れたことを、忘れそうになるって!
だって、背に2枚の翼が生えてる以外は、どう見たってただの綺麗な女の子だから。
「……君は、人。それとも人外?」
「さあ、どちらかしら」
クスッと蠱惑的に微笑むと、腰まであるサラツヤ髪をかきあげて、「ん〜」と口をとがらせる。
どんな小悪魔美人だよ、かわいいわっ!
「……だってこの唇、どこか懐かしいもの」
「懐かしい……?」
「そうよ。もう一度ここに重ねたら、想いだしてくれるかしら」
彼女は夢みるように甘く囁くと、そっと人差し指を、俺の唇にそえた。
刹那、心臓がドキリとする。
こんな風に美人に迫られたこと、ないって!!!!
慣れてないし、ときめくし、顔近いし、睫毛ながいし、薔薇のようないい薫りにクラっとするし、ぶっちゃっけドタイプ美人降臨だしで。
え、ちょっ、どうすればっっっ!?
「おっ?」
氷点下の如き視線を感じて、おそるおそる横を見ると……
いやいやいやいや、めっさカノン見てたあああああああああーーーーーーーーーーー!!
「あ、アレキ……?」
「あ」
蒼白の表情。
ですよね。この状況、なんなんですかね?
マンティコア、ザックザック仕留めたあと、ディストピアの門からスタスタ歩いてきた美人に、いきなりキスされてますもんね。意味わからんしで蒼白にもなりますよね。すまん、俺も絶賛、意味がわからないーーーーーーーーー!!!!
「あら、誰かしら?」
「あ、あたしは……カノンっていいますっ。アレキとは、お、幼馴染っていうか、その……あのっっ!」
「そう」
彼女は俺の首筋にゆっくりと腕をからめると、カノンに花のような笑みを向けた。
「私はラウム。彼の、運命の人になるわ」
「えっ……?」
「もう決めたの」
えっと、運命の人って誰
……俺の事か?
大胆発言すぎてどうしていいか、わかんない。あと、俺の胸のあたりに黒き翼美人の顔がある。なにこれ凄カワイイっっ! でもカノンの眼コワイ。
凄いカワイイと×コワイが複雑にループする中、眼の端で倒れていたマンティコアが、爪を奮いたたせ、ゆっくりゆっくりと……立ち上がってくるのが見えた!
「アレキ、マンティコアが……!」
この喧騒の中、ダリウスが近くまで来てくれていた!
ありがたい。俺もそっちに合流したい! んだけど、なんか凄い美人が胸元で……。
スリスリ
スリスリ
甘えてる。う、お、おう……かわいいいいいいい。
じゃない! なんかこう動きづらいっっっっ!!
「ダリウス、すまん! どうしたらいい?」
ダリウスは、スッと真剣な眼差しで俺に言葉を放った。
「あれはフォルネウスって魔獣を体内に取り込んだ奴だ。前よりパワーアップしてるに違いない。俺が察するに、これは全員生きて帰るのは……厳しい状況だ」
「ああ、誰も犠牲にせずに、こっから逃げるのには、どうすればいいのか……!」
その時、俺の心臓の音を目を閉じて聞いている、黒き翼の美人が顔をあげる。濡れたまつ毛に潤む瞳がうつくしい。
なにも知らない無垢な少女みたいな表情で、俺をじっと見つめる。
「アレキって、呼んでもいい?」
「え、あ、いいよ」
「アレキ。マンティコア……あの魔物が、邪魔なのね」
「ああ」
「殺めてあげましょうか?」
「は?」
「貴方はおそらく、反魂使いではないでしょう、アレキ」
「な! なんで、そんな事……!」
「わかるわ。ずっとディストピアにいたもの。恐らく反魂の書が選んだのは、そこにいる男なのね」
ラウムと名乗った美人が、まっすぐに指差したのはダリウスだった。虚をつかれたように、ダリウスは新鮮な驚きの表情を浮かべる。
「鋭い人だね、君は」
「そうね、長き眠りの中にいたけれど、それくらいは解るわ」
「なあラウムっていったっけ、あのマンティコアどうにかできるのか?」
マンティコアがズズズ……と、体制を立て直している。マズイ! 時間がないことだけは俺にもわかる。彼女の方に視線を戻すと、背中の翼がなにか威嚇でもするかのように、バサッバサッと羽ばたいていた。
そうして俺をかばうように、スッと一歩前に立つ。
背中越しにふりむいた彼女は、子猫みたいに無邪気な瞳でつぶやいた。
「どうにかね〜。できるわよ」
「本当に?」
「ええ。殺めてあげるねわね、アレキ」
それは、懐かしい誰かを呼ぶような声だったーーーー。
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