表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディストピアの反魂使い  作者: 柊アキラ
10/33

第一章 第十節 黒き翼の人ラウム

※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。

シェアワールド『テラドラコニス』のリンクはこちらです。

https://terradraconis.com/

それは、雪に咲く薔薇のように美しい

黒き翼の人だったーーーーーーーーーーー



漆黒の羽が、はらはらと舞い降りる洞穴

渦巻くディストピアの門から、現れたのは

禍々しい獣でも

地獄の邪神でも

鬼や悪魔なビジュアルでもなくて



黒髪サラツヤの、夢のような美人だった。

え、あれ……俺すごい好きかも。好みかも……。


「アレキ、気をつけて! あの人、敵かもしれないもん」

カノンがツンツンと、俺の袖を引っ張る。


「心配なのか。大丈夫だよ! 俺が守ってやる」

「うん、心配。だって、地獄の門から現れた人だもん」

「そうだよな」

「すごい美人だけにさ、なんか怖いよ……」


俺の右肩にギュッと体をあずけるカノン。ちょっと、かわいい。改めて漆黒のドレスを翻し、マンティコアの正面に凛と立つ彼女をみつめる。


うん。どうみても、美人だ。

角や尻尾はない。ただ、おおきな黒い翼が、堕天使みたいに背中からバサリと生えていた。


「てことは、やっぱり人外だよな……」


その唇は、凍てつく花びら

陶器めいた肌は雪華のよう

おおきく潤んだ瞳は、深紅のジュエルみたいで

ーーーーー俺はすこし、魅了されていた。


ゴオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアア

「マンティコアが、吠えた……!」


咆哮のために、大きく開けた口を……

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ


漆黒の彼女が、その翼の一撃で、ズバーンと跳ねとばした……!


黒い蛍みたいに舞う、羽。

はらはらと降りてくる、その羽毛の下、艶めいた笑みを刻んだ彼女が立っていた。


こんな時なのに、じっちゃんの言葉を思い出すーー


「マンティコアはペルシア語で『人を喰らう生き物」って意味があるんだ。あれは強いぞ、尾に24本の棘もある。ライオンの如き生き物だ。もしもこの先戦うハメになったら、命がけで挑めよ!」


そう、強い筈

強い筈なんだよ!

なのにマンティコアが倒れてる。強すぎだろう、彼女……!


ズズズ……と、あの24本の棘を携えたマンティコアは、尻尾をブンブン振ると、ゆっくり立ち上がった。驚いたのは、マンティコアも同じだろう。姿勢を低くすると、闘牛みたいにドドドドドド! と突進した!


「あぶなっ!」


声の刹那、彼女は天使が羽ばたくみたいに、フワッと飛翔する。激突する寸前で、目標が消えたマンティコアは、そのまま岩に頭突きをかましたっ!!!


ゴッッッッッッ!!!

破裂音がして、マンティコアは岩にブチ当たった。空中では彼女の白い腕が、みるみる鳥の羽に覆われていく……!

え、ちょ、待てよ……巨大な鴉の姿にメタモルフォーゼしていくんだけど!


「うっそだろ!」

「アレキ! あれカラスだよね……」


そう、巨大な鴉が上空にいた!

足には金色の鋭い爪。そのまま真っ直ぐに、マンティコアの背中を鷲掴みにいくっっ!!


「ギョアアアアアアアアアアアアアアアア」


悲痛な叫びと、咆哮と、血の匂い。

圧倒的な強さで、さっきまで歩いていた漆黒の美人が、マンティコアをその鋭い爪先で、ザクザクと鮮血に染めていく。


はらりはらり

ただただ、降りそそぐ黒い羽


「これさ、夢じゃないよな?」

「アレキ、あの人こっちに来る……!」


その声ではじめて気づく。

いつの間にか勝負はついていたのだろう。マンティコアは荒い息を吐き、ピクピクと足を震わせ、地面に倒れていた。


「ねえ、鴉だったのに……人に戻っていくよ、アレキ」


カノンがぎゅうううっっと、俺の右手を抱きしめる。ムリもない、俺も恐怖だ。


おおきな漆黒の鳥は、その巨大な羽を2枚だけ残して、あの美しい女性の姿へと変化していく……!

それは、すこし怖くて

それは、とてもキレイで

それは、おそらく悪魔の化身。


あっという間に、黒い羽でおおわれた体が、肌色にかわり、そしてブラックのドレスへと華麗に変身を遂げる。


黒いシルクのような髪がサラサラと揺れると、もうそれは鴉じゃなくて。ディストピアの門から現れたままの、美女の姿になっていた。


彼女の濡れた瞳が、その視線が。俺の目を捉える。


「あなたが、私を呼んだのかしら?」

「え、俺……?」


しゃ、しゃべった……!

マンティコアみたく、言葉は話せないんだと思ってた。言葉通じるのかよ!? えーー、ちょ、どうしよう……。

俺は背後に隠れているカノンに、ヒソヒソと小声で言葉を告げた。


「カノン、言葉が通じるみたいだ」

「うん、だ、大丈夫かな?」

「少し話してみる。カノンは、ダリウスとルダの方に行ってて」

「そんなっ!!」

「危険な事はしない。少し話すだけだからさ、……頼む」

「……アレキ……わかった」


おずおずと離れていくカノンの気配を見送ったあと、俺は改めて漆黒の美女と、正面から対峙する!


……氷細工のバラみたいな、美しさだ。

でも、敵かもしれない……!

俺は唇をギュッと噛みしめて、彼女をキッと睨む。


と、彼女が飛んだ。

「え?」

背中の巨大な翼をバサバサと羽ばたかせ、フワッと浮かんだと思った刹那、もう俺の眼前にいた。


「貴方、あの人に似ているわ」


舞い降りた彼女は、懐かしい誰かを想うように呟いた

夢のような声

あまい花のような薫り


「あ、あの……?」

いつしかその白い指先が、俺の唇を優しくなぞる。


「声もすこし、似てるのね?」

「ちょ、近い……です」

「そうね。近くで聴かせて? その懐かしい……声を……」


大きく広げられた翼は、ゆっくりと俺の両肩を抱くように閉じていく。

深紅の花びらのような唇が



俺の唇にそっと触れたーーーーーー

ブックマーク、評価、していただけますと

とても励みになります。

(最新話のページの下部に評価を入力する場所があります)


感想、レビューもうれしいです!今後の参考にいたしますので

ぜひ、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今回は、黒き翼の美人☆ラウムに魅せられる章でした!! 堕天使ちっくな冬の薔薇。。。大好きです!! ラウムの黒いシルエットが鴉へと化してゆくあたりも幻想的!! [気になる点] 今回は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ