繋ぐ手と、大砲の解放
五回表、本川中学校の攻撃。打順は六番・源田亮輔から。
野村の右肩は、三回から明らかに硬さを増し、外角ストレートの高さが浮き始めていた。
源田は二塁打で出塁すると、続く高木、佐野の連携で一点をもぎ取る。1対1の同点。
なおも一死三塁。打者は一番、杉谷拳士。
拳士は初球を三塁線へ転がした。三塁走者・佐野が音を聴いた瞬間にスタートを切る。送球より速くベースを駆け抜け、2対1。逆転。
さらに二死二三塁、源田がセンター前へ弾き返し、2点を追加。4対1。
ついに野村はマウンドを降りた。その背中は、頂点を極めた者特有の哀愁と小ささを湛えていた。
代わって登板した丸岡は、緊張で指先が滑っていた。
打席には四番・宮﨑俊平。
「……また来た」
マウンド上の丸岡の初球。インコースを狙った直球が、緊張で指先から浮く。
宮﨑のバットが止まり、爆発した。
──ドゴォォォォン!!!!!
打球はバックスクリーンへ吸い込まれるスリーランホームラン。7対1。
ベンチが崩壊した。石井が咆哮し、源田が空を見上げ、神里が義足のブレードで地面を蹴り跳ねる。
拳士はその光景を静かに見ていた。もはや彼のシステムは、個人の指示を超え、ナインが自律的に相手を「ハック」する軍団へと変貌していた。
スタンドでは、まきが胸の前で両手を重ねている。隣の古い防具袋が、勝利の風に揺れていた。




