『RPG』メイキングシーン セカンドストーリーある日の撮影現場
ラブホテル前。
車の中。
スタッフ「本番5秒前 4、3 ・・・」
ユキノ「あ、ラブホがある。」
真顔。
三秒沈黙。
ユキノ「……」
しんTAKA 「カ〜ット! ダメ(笑)」
「しんTAKAさん、この歳になって、こんな初々しい言葉言えない」
「でも、『ふふ、お返しされちゃった』とか言ってたじゃない」
「あの時は自然に彩乃だった。でも、今は戦略の方が頭に浮かんで彩乃になりきれない」
「じゃ、戦略だと思って『あ、ラブホがある』って言ってみて」
「まぁ、それならできるかも」
「できるんだ。よかった」
「でも」
「でも?」
「彩乃には見えないかもよ」
「え〜、それは困るなぁ」
「ま、やってみるわ」
スタッフ「ハイ、本番5秒前 4、3 ・・・」
ユキノ「あ、ラブホがある」
しんTAKA「カ〜ット!」
「ユキノ。セリフは完璧だ。でも顔が妖しすぎる。20歳の女の子じゃない」
「だから言ったでしょ。戦略にしたらこうなるって」
「もう少し、『彩乃ちゃん』になれないかな?」
「なれない」
「いや、それは困る」
「なれないものはなれない」
「じゃ、休憩!」
スタッフ「しばらく休憩に入りま〜す」
他のスタッフ「……」
と、ヨウコがやってきて、
「ね、監督。そんな言葉言わせないで、いきなり崇にキスさせたら?」
「車運転中に危ないだろ。それにそれだと余計妖しい女になるじゃないか」
「ダメか。私ならうまくやるんだけどなぁ」
「ヨウコはヨウコらしく負けてもらわないと困る」
「なら、ここで私が妨害してもいいよね?」
「いや、それはできないだろ。いきなり車の後ろにお前が変装したみゆきがいたら、それこそ崇、事故っちゃうよ」
「えー、だって見てるだけなんてつまんないもん」
「いや、ここは……」
「ハイハイ。ユキノ、私、ここ出番ないんだから、もう少し彩乃っぽくやってよ。でないといつまでも私のシーンにならないでしょ」
「わかった。もう少し努力してみるわ」
「ほんと? 監督、ユキノ、やってみるって」
「お、そうか。じゃ、すぐ本番!」
スタッフ「え。しばらく休憩って……。まったく、すぐ気が変わる監督だなぁ」
「じゃ本番行きます。5秒前、4、3・・・」
ユキノ「あ、ラブホがある」
しんTAKA「カット!」
「彩乃、今のよかったよ」
「監督、私、ユキノ。『彩乃』じゃない」
「あ、ごめん。彩乃に見えたからそう言っちゃった」
「……するいわね。そんな言い方するなんて」
「いや、ほんと」
「……ま、ヨウコに迷惑かけるのもよくないから。ヨウコにお礼言ってね」
「ああ。わかってる」
「ほんとにわかってる? しんTAKAさん、ヨウコのこと、都合よく使いすぎじゃない?」
「いや、そんなつもりはないんだが……」
「ヨウコだって傷つくんだから、ちゃんと扱ってよね」
「わかった。心がけるよ」
「ヨウコが前に言ったでしょ? 『私は止まらせる役じゃなくて物語を動かす役だ』って」
「ああ、確かに言ってた」
「だから、ヨウコの言うとおり、物語を進めたのよ。ただそれだけ。だからヨウコに感謝してね。監督」
「わかった。ちゃんとお礼を言うよ」
「今、言って」
「わかった。ヨウコ、ありがとう」
「よしてよ。そんなの言われるの私のキャラに合わないから。それより、次は私の番よね?」
「ああ、ユキノが『そこらへんで見てるんでしょ?出てきなさいよ』っていう場面」
「もう、ずっとみゆきの格好して待ってるんだから、早く本番お願いね」
「わかった。おい、みんな次のシーン、いくぞ」




