検証! 各話のつながり (その3)細かすぎるつながり
三回目は、細かすぎるつながりにスポットを当ててみました。
ファーストストーリー スピンオフ 『ユキノ、崇のいない日』より。
「あ、安岡さんの言った通りだ。上唇、泡ついてる」
背後から声がして、ユキノは肩を跳ねさせた。 そこには、少しバツが悪そうに頭をかく佐藤が立っていた。
「佐藤くん……。崇、そんなことまで話してんの?」
「あ、いや、自慢っぽくですよ? 『ユキノはいつもカプチーノの飲み方が下手なんだ』って、すげーニヤニヤしながら」
「……崇のバカ。後で絞めてやる」
ユキノは顔を赤くしながら、乱暴にナプキンで口を拭いた。 格好つけたかったのに、結局、崇の手のひらの上で踊らされている気がして、でも、不思議と胸のざわつきは収まっていた。
「座れば? 陽子ももうすぐ来るから」
「え、陽子さん来られるんですか?」
「知ってたくせに」
「……やっぱりユキノさんには隠せませんね」
「そうよ。私を誰だと思ってるの? 陽子に会いたくてきたんでしょ」
「それも安岡さんから聞いたんですか?」
「そんなの聞かなくたって、見てたらだいたいわかるわよ。気づいてないのは陽子だけ」
「やっぱり、そうですか。はぁ、僕じゃダメなんだろうなぁ」
「そんな弱気でどうすんのよ。陽子はね、待たれるより、ぶつけられることで“本気かどうか”を見るの。逃げ腰のままだと、何も始まらないわよ」
と、そこへ、
「ごめん、遅れた……って、え? 佐藤くん? なんでここにいるの?」
陽子が、少しだけメイクの濃い顔で入ってきた。
「安岡さん来れないので、ユキノさんの様子見てこいって言われて……」
「そうなの? ふ〜ん」
陽子はユキノの隣に座るなり、彼女のカプチーノを覗き込む。
「ユキノ、またそんな不味そうな顔して。崇さんのこと考えてるんでしょ、どうせ」
「……うるさいわね。陽子こそ、今日は一段と気合入ってるじゃない」
「はあ? これくらい普通よ。私、か弱い女なんだから、武装くらいしなきゃやってられないわよ。あ、ママ〜、ブレンドちょうだい」
カウンターの中から、わかったとママが手を上げた。
陽子はわざとらしく髪をかき上げたが、その指先が少し震えているのをユキノは見逃さなかった。強がって、奔放なふりをして、でも誰よりも一人になるのを怖がっている。それが目の前の従姉妹。
少しして、ママが運んできたブレンドを運んでくると、陽子はそれに砂糖とミルクを入れた。
「あれ、あんたブラックじゃなかったっけ?」
ユキノが怪訝そうな声で聞いた。
「うん、前はブラックだったけど、このところ、疲れてね。なんか甘いのが欲しいの。体が糖分を欲してる〜。男も欲してる〜」
「バカね。佐藤君がいるのに」
「あ、失礼しました。ごめんね、下品なこと言って」
「……いえ」
佐藤は陽子の方を見ず、コーヒーをスプーンでかき混ぜた。
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セカンドストーリー第八話より。
俺とみゆきは車を降りて『オアシス』に入った。
俺はいつものようにカフェオレを頼んだ。
「みゆきは何にする?」
「ブラック」
ウエイトレスの子が去った後、俺はみゆきに話しかけた。
「ブラックなんて大人だね〜」
「砂糖やミルクの後味が好きじゃないのよ。それだけ」
「そうなんだ。高校の時、毎日会ってたのに、知らないこと多いね」
「崇が知ろうとしなかっただけでしょ」
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セカンドストーリー第十一話より。
「お待たせいたしました」
そう言うと、テーブルの俺の前にカフェオレ、彩乃にカプチーノ、そしてみゆきにブラックコーヒーを置いた。
みゆきは、なぜか、砂糖とミルクを入れるとひと口飲んだ。
「あれ、みゆき、ブラックじゃなかったっけ?」
「え?」
「後味が嫌だからって昨日……」
と、みゆきは明らかに(しまった)という表情をしたが、すぐに、
「今日は甘いもの、飲みたい気分なの。さあ、あなたたちもどうぞ」
と促した。
「変だなぁ…….。そんなに簡単に好みが変わるかなぁ。まぁ、みゆきだからなぁ」
俺はボソボソ言いながら、カフェオレをひと口飲んだ。
その横で、彩乃もカプチーノをひと口飲んだ。
すると、彩乃の顔を見たみゆきが、
「彩乃、あなた……」
「え、なに?」
「上唇に泡がついてるわよ」
「え?」
彩乃は慌てて口元をハンカチで拭った。
ハンカチについた茶色いシミを見て、
「わ、恥ず」
……と、彩乃は、何かに気づいて、
「もしかして、前に崇君と一緒に飲んだ時も泡ついていた?」
「え?……あー、どうだったかなぁ」
「やっぱりついてたんだ。ちゃんと言ってよ」
「なんでそうなるんだよ」
「だって崇君がごまかす時はほんとの時なんだもの」
「あ、そっか。でも、その姿が可愛いなって。彩乃と逢ってるっていう気持ちになれたから、下手に何か言って、それが無くなると寂しいから言わなかった」
「ダメよ。それはちゃんと言わないと。私だって女の子なんですからね」
セカンドの十一話はヨウコがみゆきを、そしてユキノが彩乃を操っていたので、それぞれの癖がつい出てしまった回でした。
飲み物にはいろいろつながりがありましたね。
恵理のアイスティーと現実の崇のアイスティーも捻じ曲げたストローがキーになってた。
そんなところもこの物語には欠かせない要素でした。




