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「RPGパラレル・パラドックス」  作者: しんTAKA


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RPG FINAL STORY EXTRA2

【フェーズ FINAL STORYが始まる二週間前(Song for KAREN)】


「ここよ、入って」

「え、私が入っていいの?」

「いいわよ。だってそうしないとあなたがどうしたいか伝わらないでしょ?」

「まぁ、そうなんだけど。……ちょっと怖いな」

「大丈夫よ。やさしいから」

「うん、わかった」


ヨウコは扉を開けて中に入った。

そこにいたのは、


「こんにちは、しんTAKA さん」


と、しんTAKAはスボンのベルトをしっかり握った。


「心配しないで。もうズボン脱がそうとしたりしないから」


なおも警戒するしんTAKAを無視してヨウコは話を続けた。


「今日は会ってほしい人、連れてきた」

「誰?」

「さあ、入って」


と、入ってきたのはユキノの娘の遙だった。


「こんにちは。あなたがしんTAKAさん? はじめまして」

「あ、はじめまして。……ヨウコ、これはどういうことだ?」


戸惑うしんTAKAを笑いながら、ヨウコは喋り出した。


「遙がね、しんTAKAさんが創った恋愛ゲームアプリ、やりたいっていうの。スマホにダウンロードしてもらえない? ほらあれ、私の特注だから、ユキノと私のスマホにしか入ってないでしょ。だから遙がプレイできるようにしてほしいの」

「え、あれは一応、R18指定だよ」

「そうなの? 遙、まだ十八になってなかったっけ?」

「うん。でも明日で十八歳」

「そう。じゃあいいじゃん。一日くらい」

「いやいや、そういうわけには」

「じゃあ明日ならいい?」

「そりゃ、十八歳になったら一応いいけど、高校生だし、お母さんかお父さんの了解を得ないと」

「あ、それ大丈夫。昨日、ユキノと話はついてるから」

「そうなの?」

「ユキノが『彩乃』を使ってプレイしたログを遥に見せようとしたら怒ったんで、『じゃあ、遙が自分でプレイするのはいい?』って聞いたら、いろいろ文句は言ってたけど、最終的に『いい』って言ったから」

「そうか。まぁ、ユキノがいいなら……」

「だって。よかったね、遙」

「うん」

「でも、明日になってからだぞ」

「え〜一日くらいいいじゃん」


遙はヨウコのように甘えて見せたが、しんTAKAはピシャリと言った。


「その一日を待てる大人でないとダメ」

「……わかった。我慢する。その代わり……」

「ん?」

「私の作戦室を創って、私の参謀になってほしい」

「え、俺に遙の親の攻略手伝いをしろと?」

「そう。なんとかお母さんに勝ちたいから」

「そりゃ、俺が手伝えば問題なく勝てるだろうけど、それじゃゲームにならないだろ?」


と、ヨウコが、


「だから、私は遙の味方はしない。私は私でユキノを掻き乱すし、遥にも負けないつもりでゲームする」

「お、それは確かに手強そう」


しんTAKAは、またズボンのベルトを締めなおした。


「コラコラ。なんで、しんTAKAさんがベルト締めるのよ」

「いや、何されるかわからんからな」

「するか! あれはユキノに負けた時に頭がちょっと混乱しただけよ」


しんTAKAは、またベルトに手をやって身構えた。


「もう、いい加減にして。それより遙の手伝いしてくれるの?」

「ああ、するよ。まぁ十八歳と言っても大人がついていた方がハメを外さないだろうから、俺が面倒見るよ」

「そ。じゃあ、よろしくね。遙、お互い頑張ろうね」

「うん、ヨウコちゃんには絶対、負けないから」

「そう、その意気。じゃ、しんTAKAさん、あとはよろしく」


そう言ってヨウコは画面の中に消えた。


「ところでしんTAKAさん、私のアバターなんだけど……」

「おう、遙ちゃんはどんなのにしたい?」

「ヨウコちゃんが見せてくれたプレイヤーの中でいうとKAHOを使いたいのよね。私、自分で音楽作りたいって思ってるし」

「あ、そうなんだ。何か曲とか書いたことあるの?」

「ない。でもやってみたい。……やってみたいけど、どうやったらいいかわからない」

「そうか。じゃあ、崇が創った歌を参考にしてみたら? あ、崇ってお父さんじゃなくてアバターの崇ね」

「わかってる。そっか、崇さんが作る曲を参考にしたらいいのか。そうします。あと……」

「何?」

「KAHOでプレイするのはいいんだけど、ちょっと古い感じがするんだよね。今の女性じゃない」

「そっか。……じゃあ、KAHOの娘のキャラクターを創ってあげるから、それでプレイしたら?」

「ほんと? それなら今の感覚でできるかも」

「ああ、その方が俺も面白い気がする。名前はどうしようか?」

「もう決めてある」

「え、決めてるの? どんな名前?」

「歌蓮」

「カレン?」

「そう。歌に蓮って書くの」

「ああ、歌蓮ね。なんで、この名前?」

「私が将来、人前で歌うことがあったら、そういう名前にしようと思ってたから」

「へぇ、そんなこと、考えてたんだ」

「笑わないでね」

「笑わないよ。……歌蓮。いいじゃない」

「ありがと。あとはどう戦略を立てるかだけど……」

「そうだなぁ。KAHOちゃんは一度結婚したことがあって、その人との間にできたのが歌蓮ってことにしよう」

「そうか。それでしんTAKAさんは、どうするの?」

「うん、KAHOちゃんが離婚したことにして、去年再婚した相手っていうのはどう? 歌蓮から見たら義理の父親」

「そっか。それなら自然か」

「でね、義理の父親が音楽好きでライブ喫茶を経営してるってことにする。店の名前は、そうだな……『Here After』でどう?」

「Here After?」

「来世っていう意味もあるし、素人のミュージシャンが集まるにはちょうどいいだろ」

「なるほど」

「そこのマスター、……水澤誠治って名前で、KAHOちゃんは再婚後、水澤佳穂。そして娘の水澤歌蓮」

「待って、歌蓮はステージでの名前でしょ。本名は変えたい」

「じゃあ、はな、中華の華っていう文字で華蓮っていうのはどう?水澤華蓮」

「ああ、それいい。それでいこ」

「あとは作戦室だな。そうだ。ライブ喫茶の中に秘密基地を創ったらどうだろう?」

「うん、いい。じゃあ、それでお願いします。明後日、また来るから、その時、また打ち合わせさせてください。そろそろ帰らないとお母さんが心配するから」

「わかった。それまでにだいたいの設計しておくよ」

「ありがとう、しんTAKAさん」


そう言うと、遙も画面の中へ消えた。



しんTAKAは、誰もいなくなって気づいた。


(……しまった。知らず知らずのうちにヨウコと遥にのせられたな)


少し、後悔が頭をよぎったが、


(まぁ、新しい物語が生まれるからいいか)


クリエイターとしての気持ちがしんTAKAに前を向かせた。


五日後、遙が一人の女の子を連れて帰ってきた。


「お、どうした? システムはまだ完成してないぞ」

「うん、ちょっと考えたことがあって、相談しに来たの」

「何かな?」

「この子、玲奈さんって言うんだけど」

「遙、玲奈でいいよ」

「だって一つ上だし、こういうこと、しんTAKAさんうるさいのよ」

「え、俺のせい? まぁ、普段呼んでる通りでいいよ」

「あ、そう。じゃ、玲奈のことなんだけど、彼女、KAHOさんの娘なの」

「え、そうなの? どこで知り合ったの?」

「ライブハウスでバンドの推しが一緒だったので、なんか意気投合しちゃって。話してたら、玲奈のお母さんも音楽やってたって」

「そう。それで遙が『私のお父さんもやってた』っていうから、『安岡』ってもしかして『安岡崇』って聞いたらそうだって言うから。『じゃあ、KAHOって知ってる?』って聞いたら、ね」

「ああ、『魔女』歌ってた人って答えたの。それでわかったのよ」

「へぇ、どこでつながるかわからないもんだねぇ」

「そうなの。お互いびっくりしちゃって。それで、『お父さんと言えば、こんなゲームあるよ。KAHOも出てくるよ』って教えたら、やりたいって言うから連れてきた」

「おいおい、また勝手にそんなこと……」

「だってヨウコちゃんが大丈夫って言ったもん」

「ヨウコのやつ……」

「ね、いいでしょ。私はゲームするより見てる方が面白いから、私の代わりに玲奈を歌蓮にして」

「え、そりゃできるけど、玲奈ちゃんはそれでいいの?」

「うん。私が歌蓮になって、ママを助ける」

「まぁ、創る手間は変わらないし、いいけど」

「やった! よかったね、玲奈。ヨウコちゃんの言ったとおり、しんTAKAさんってやさしいでしょ」

「うん。ヨウコちゃんの言ったとおりだった」

「玲奈ちゃんまで、『ヨウコちゃん』って言ってるの?」


と、遙が、


「だって、『ヨウコちゃん』って言わないと怒るんだもん」

「玲奈ちゃんにも?」

「そう。『私はおばさんじゃないわよ』って」

「はぁ、ヨウコは相変わらずだなぁ。ま、仕方ない。玲奈ちゃん、君がプレイできるようにしてあげる」

「ありがとうございます。で、あの、しんTAKAさん、言いにくいんだけど、もう一人、使えるようにしてもらえないかな? このゲーム」

「え? 未成年者はダメだよ」

「未成年じゃない。立派な大人」

「まぁ、それなら……。一体、誰がやりたいっていうの?」

「……KAHO」

「え? か、KAHOってまさか……」

「そう玲奈のお母さん」

「ええ〜」

「そりゃ、びっくりするよね。でも、絶対、やらせたいんだ」

「やらせたいってことは、まだKAHOちゃんの承諾はとってないってこと?」

「うん」

「じゃあ、無理だ」

「無理なのはわかってる。でも、離婚して一人で私を育ててくれたお母さんに、もう一度、青春時代を思い出してほしいの」

「えー、KAHOちゃん、ほんとに離婚してたの?」

「知らなかったの? でも遥にゲームの内容聞いたらKAHOは離婚してるって言ってた」

「そういう設定にしようって話しただけでほんとに離婚してるとは思わなかった」

「そうだったんだ。私も変だなとは思ったのよね。なんで離婚したこと知ってるんだろうって」

「知らない知らない。ただの設定。それより、なんでKAHOちゃんにやらせたいの?」

「だって、ずっと『安岡氏とやってた頃は楽しかったなぁ』って言ってたから。このゲーム見た時、これやらせたら、きっと昔を思い出して、元気になってくれるって思ったんだ」

「お母さん、元気ないの?」

「元気だよ。元気だけど、私にはわかるの。無理してるって」

「だから助けたい?」

「助けになるかどうかじゃなくて、昔の楽しかった頃に戻れたらいいかなって」

「なるほど、わかった。協力しよう」

「わぁ、やったあ」

「じゃあ、よろしくね」

「あ、引き続き、しんTAKAさんは玲奈の参謀ってことでよろしく」


そう言って、二人は画面に消えた。


「ちょ、おい……」


しんTAKAはやれやれと思ったが、少し心があたたかくなるのを感じた。


「仕方ない。頑張るか」


FIN

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