RPG FINAL STORY 第十九話
【フェーズ The other side of the truth】
「シーさん!」
俺の記憶にある顔と名前が、その瞬間に一致した。
(……恵理。そうだ、恵理だ)
「もういい。やめてくれ!」
俺は歌っている歌蓮にそう叫んでいた。
歌蓮とマスターは驚いた顔で俺を見ている。
「俺が一緒に演奏していたのはKAHOちゃんじゃない。恵理だ」
「え、どうして恵理の名を?」
歌蓮はマスターの方を見た。
マスターは首を振った。
「そんなはずはない。安岡氏が恵理ちゃんを思い出すはずがないんだ」
「確かに今の今まで思い出せなかった。だけど、俺のノートにあった言葉。今、飲んでるマスターが出してくれたアイスティーのストロー。そして、歌蓮、君が歌った『魔女』が恵理の歌のタイトルを思い出させてくれた」
「『魔女』が?」
「そう、恵理が書いたのは『キミは魔法使い』っていう歌だけど、KAHOちゃんの『魔女』ってタイトルから発想したんだ。それを思い出した」
「え、じゃあ、私が思い出させたってこと?」
「そう。歌蓮がこの歌を歌わなかったら、完全には思い出せなかった」
「そんな……」
と、奧の部屋から声が聞こえた。
「歌蓮、もういいわ。これで終わりにしましょう」
出てきたのはKAHOちゃんだった。
「ママ、だって……」
「いいのよ。あなたの気持ちは嬉しかったし、実際、安岡氏とまた音楽できて楽しかったわ。だから、もういいの」
「ほんとに?」
「ええ、ほんとよ。ずっと忘れてた青春時代にまた戻れた。そして新しい想い出ができた。こんな素敵なことはないじゃない。ここで終わりにするのが一番いいのよ。ね、誠治さん」
「佳穂がそう言うんなら、それでいい。歌蓮、もういいんじゃないか?」
「……わかった。ママがそういうなら、ここでやめる」
「安岡氏、ごめんね。いろいろ迷惑かけちゃって。でも、安心して。あなたはちゃんと自分の記憶を自分で取り戻した。私たちがどんなに変えようとしても、あなたは自分の中にある言葉を信じた。……そんなに大切にしている人に勝つことなんて出来ないわ」
「KAHOちゃん。じゃあ、君は本当にKAHOちゃんだったんだね」
「そうよ。何、今頃になって『惜しかったなぁ』って思ってる?」
「うん。あ、いや……」
KAHOちゃんは苦笑した。
「正直ね。でも、私はあなたの心には入れなかった。だからここで消えるね」
「え、消えるって?」
「あなたの記憶から、ここでの私や歌蓮とのやり取りはなかったことにするわ。できるよね、誠治さん」
「ああ、ちゃんと消すよ。安岡氏が将来書く歌も聴いてないことになる。ただ、『誰かよくわからない大切な人にあった気がする』くらいの違和感は残るだろう。それくらいの痕跡は安岡氏に残った方がいい」
「マスター、あなたは……」
「ただの音楽好きのマスターさ。未来を夢見る若者を見守るだけのね」
そう言うと、マスターやKAHOちゃん、歌蓮の顔がぼやけてきた。
「ああ、あと、歌蓮はあなたの子じゃないわ。わかってると思うけど……」
その言葉を最後に、三人の姿がスッと消えた。と、同時に俺は、次元の闇に堕ちたように眠ってしまった。




