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「RPGパラレル・パラドックス」  作者: しんTAKA


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RPG FINAL STORY 第十七話

【フェーズ Here After Again】


車を駐車場に停めると、俺は Here Afterの扉を開けた。


「いらっしゃい、安岡氏」

「こんばんは、マスター」

「空いてる席にどうぞって誰もいないけど」


俺はカウンターの前のテーブル席に座った。


「そろそろ来る頃だと思ってたよ」

「え、どうして?」

「君、記憶がほとんどなくなってるだろ?」

「なんでわかるんですか?」

「まぁ、いろいろと情報があったからね」

「情報?」

「いいの、いいの。気にしないで」


マスターは俺が座ったテーブルに水を運んできた。


「何か飲むかい?」

「あ、じゃあアイスティーを」

「へえ、めずらしいね。いつもはカフェオレなのに」

「たまには気分を変えてみるのもいいでしょ」

「ま、そういう日もあるな」


マスターはそう言って、カウンターの奥へ入った。

と、歌蓮が入れ替わるように出てきて、


「いらっしゃい。崇さん」

「ああ、歌蓮ちゃん、来てたの?」

「ええ。っていうかここが私のお家だからね」

「え、お家?」

「あれ、言ってなかったっけ? マスターは私のお父さんなの」

「え、ええ? それほんと?」


その声を聞いたマスターが奥から顔を出して、


「まぁ、義理の父親だけどね」


と言った。


「そして佳穂は私の妻だ」


俺はわけがわからなかった。


「まぁ、去年、再婚したばかりだけどね」


と歌蓮が言った。


「え、じゃあ……」

「そう、私の父親は別の人」

「それって……」

「そう、崇さん。あなたよ」

「な、何をバカな……」

「ほんとにそう言える? 私はね、未来から来たの。ほんとの父親に会うためにね」

「いや、そんなことできないだろ?」

「そうかしら? 現にここにいるでしょ? あなたの目の前に自分の将来の子どもが」

「俺がこの先、KAHOちゃんと結ばれるっていうのか?」

「そうよ。だから私は崇さんが、……パパがこれから創る歌を知っていたのよ。Literacy Monsterも、Chronos Rulerも、Rebellionも」

「いや、俺はそんな歌創ったことない」

「これから創るのよ。この矛盾した現実を見たから、あなたの心に新しい感性が宿ったの。これは運命なのよ」

「いや、そんなこと……信じれるわけないだろ」

「私、崇さんのために歌うわ。マスター、いえ、お義父さんいいでしょ?」

「ああ、もちろんだ」

「崇さん、私の歌、聴いて。それで判断してちょうだい」

「やめろ、聴きたくない」

「無理よ。あなたは聴く運命にあるの。それがママのため、そして将来生まれる私のためだから」


そう言って歌蓮はギター片手に歌い出した。


♪ I’ll wait for you, my love ずっと待っている、愛しいあなたへ

Forever and always 永遠に、そしていつもあなたを……


『あなたと愛の丘で』だった。


(歌蓮、マーチンのギター使ってる。KAHOちゃんのギターを借りたんだな。しかし、これは……すごい……)


それは、本当にKAHOちゃんが歌っているとしか思えないものになっていた。

歌蓮の歌声は俺をひたすら侵食した。

聴いてるうちに俺の記憶はKAHOちゃんとの思い出一色染まって、他の思い出がなくなっていく気がした。


大学の時の野外ライブ。

伸びのあるKAHOちゃんの歌声。

俺のリードギター。

そして、ここでのライブ。

変わらないKAHOちゃんの声。


もう全てが二人のためだけにある気がしていた。


そんな俺の状態を確認して、歌蓮とマスターは互いに目を見合わせて頷いた。


(ああ、やっぱりKAHOちゃんと一緒に演奏するのが俺の幸せなんだ)


そんな気持ちに支配されかけた俺の前のテーブルに、マスターは俺がさっき注文したアイスティーを置いた。

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