RPG FINAL STORY 第十六話
【フェーズ TAKASHI Reboot】
目覚めると自分の部屋だった。
(……俺は何をしてたんだ? いろんな夢を見てた気がする……)
しかし、何もはっきりしたことが思い出せない。
俺はベッドから起き上がり、作業デスクに座った。
デスクには作詞ノートがあった。
何も思い出せない俺は、仕方なく、ノートを開いて思いついた言葉を乱雑に書いた。
と、ひとつ、詩が頭の中に浮かんだ。
俺はページをめくって、真新しいページに言葉を紡いだ。
『君をさがしてる』
早い黄昏が街を包む
背中丸め足早に家路を急ぐ
そんな気がして振り向いても
いつもの街並さ
求める人はそこにいない……
君をさがしてる あれからずっと
君をさがしてる ほらまたさがしてる
通りのカフェ
駅のベンチ
行き交う人波にさえ
あきれるほど 君をさがしてる
なぜか、この詩が頭に浮かんだ。
(俺は誰をさがしてるんだ?)
と、一瞬、笑った女性の顔が思い浮かんだ。
しかし、誰か思い出せない。
なんとなく大切な女性という気がした。
(俺にとっての『大切な女性』って……)
考えれば考えるほど、白いモヤの中に記憶は閉ざされる。
(このまま俺は死ぬのか?)
ふと、そんな不安が頭をよぎった。
俺はそんな不安をかき消そうと、また何か詩を書こうと思い、ヒントがないかとパラパラ、ノートをめくった。
すると、花火をスケッチした絵があった。
(ああ、大学の時に見た花火を思い出して、落書きしたんだった)
俺の頭に、その時の花火の映像が浮かんだ。
(あの時は岸本たちと見たんだったな。そういや、佐久本とユミちゃん、いい感じだった)
佐久本がほとんど喋らず、動作だけでユミちゃんをガードしていた姿を思い出し、少し心が温かくなった。
俺は、そのシーンを思い返しながら、こんな詩を書いた。
「のすたるじあ」
洗った髪の匂いがした八月の夕暮れ
浴衣の君ははしゃぎながら 僕の手を引っ張る
わたあめ 金魚すくい……
立ち並んだ露店の前で
君は子どもの目を輝かせていたね……
と、そこまで書いて、
(あれ、あの時、綿菓子屋の前で女の子に声をかけられた気がする……誰だっけ?)
思い出そうとするとモヤの中に姿が消えてゆく。
ただ、とても大事な瞬間だったという記憶だけが頭をよぎった。
(何か手掛かりはないか……)
俺は花火のスケッチがあるページの前後に書かれた自分の言葉を追った。
と、
(あ、これ……)
俺はノートにあった言葉の断片に強く惹かれた。
夕暮れの交差点
お返しのキス
二人で見た夜景
ナイトドライブ
午前二時の誘惑
バラバラの言葉に一つ一つの断片が重なり、はっきりとはしないが、一人の顔になっていく気がした。
俺はなおも他のページをめくった。
すると、また違うフレーズが目に止まった。
独りよがりにもなれない
ここは現実と虚構が交わる場所
捻じ曲がったストロー
指切り
崇の『シ』
それらの言葉が、さっきとは違う女性の顔にまとまってゆく……
そして俺は、車でHere Afterに向かった。




