RPG FINAL STORY 第十五話
【フェーズ secret base】
「KAHO、上手くやれてるかしら?」
「どうかなぁ、安岡氏はそういうところ敏感だから」
「妬いてるの?」
「まさか。上手くいってほしいと思ってる」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
「悔しくないの?」
「どうして? こうして彼女と結婚できたのに」
「結婚した相手が他の男に夢中になってるのよ」
「ああ、そういう見方をすればそうだが、彼女の音楽は安岡氏と切っても切れないからね。それに……」
「それに?」
「彼女自身が新しい歌を書けなくなっているのをこのままじっと見ているのは辛い」
「だから私をここに?」
「君には申し訳なかったが、安岡氏が彼女との関係をしっかり思い出してもらうには君が必要だった」
「わかってる。だからこの先で安岡氏が創る歌を私に歌わせたのよね」
「ああ、そうすれば彼の中で矛盾が起こる。自分で書いた歌か、どこかで聞いた歌なのかわからなくなる。リスクはあるが、上手くすれば、彼女を、そして安岡氏をもっと大きなクリエイターに育てることができる。そういう判断だ」
「たくさん売れないミュージシャンを見てきたから、そう思うんだよね」
「そういうこと。ただ、恵理ちゃんには可哀想なことをした」
「そうね。でも彼女がいるとKAHOが安心して安岡氏と演奏できないもんね」
と、そこへKAHOが現れた。
俯いた彼女は近くまで来ると倒れ込むように椅子に座り込んだ。
「KAHO、どうしたの? 安岡氏は?」
「……急に苦しみだしたの。『頭が割れるように痛い』って倒れ込んで……。それで、『しっかりして』って体をゆすったら、……急に消えちゃったの」
「え、消えた? どういうこと?」
「わからない。でも、消えたの」
と、マスターが、
「……誰かにハックされたか」
「え、ハック?」
「たぶん、あいつだな。歌蓮もよく知ってる人」
「え、ヨウコちゃん?」
「間違いないね。前回、ユキノに徹底的に打ちのめされたから、結果を改ざんして自分が勝ったことにしようとしたんじゃないかな」
「え、そんなことしたら……」
「そう、システムに負荷がかかりすぎてプログラムが壊れてしまうかもしれない。今頃リセットしてるかもよ」
「あー、ヨウコちゃんならあり得る」
「まったく、そんなに焦らなくても、こっちの計画に乗ってくれればいいのに。……しかし、これで振り出しだな」
「……はぁ、そうね。困ったなぁ。どうしよっか?」
「そうだなぁ……。ま、ヨウコが再起動していれば、なんとかなるだろ」
「そうね。そこの部分は消去したってことだもんね」
「じゃ、次にフェーズへ移ることにしよう。君にも頑張ってもらうよ」
「ええ、やっと私の出番ね。あー、なんか緊張する」
「打ち合わせ通りにやればいい」
「わかってる」
「それと佳穂をあっちの部屋に連れて行って休ませておくれ」
「わかった。さぁ、KAHO、あっちで休もう」
歌蓮はKAHOの肩を抱いて『秘密基地』を出た。




