RPG FINAL STORY 第十二話
【フェーズ KAHO&TAKASHI3】
KAHOちゃんの目は一段と大きくなった。
「本気で言ってるの?」
「ああ、もちろん本気だよ」
「大学の時、私が『安岡氏は好きな人がいるの?』って聞いた時、『俺にはKAHOちゃんだけだよ』って冗談にしたよね?」
「ああ、覚えてる。あの時は音楽しか考えられなくて授業もろくに出てなかったし、俺なんかKAHOちゃんと釣り合わないって思ってた」
「じゃあ、今は釣り合うの?」
「少なくとも、きちんと働いて収入も得てるし、なんら恥じるところもない。釣り合うかどうかはわからないけど、自分の気持ちに素直になるなら今しかないと思って」
「ダメって言ったら?」
「仕方がない。その時こそ、KAHOちゃんから見て、俺が釣り合わないってことだと思う」
「バカね。ダメならこうやって一緒にギター弾くはずないじゃない」
「え、それって……」
「そうよ。OK」
「本当に?」
「本当に。……長かったぁ。七年もかかるとは思わなかった。でも、マスターに呼ばれて、ここで演奏するようになって、再び、安岡氏に会えて……。やっと私にも青い鳥が来てくれた」
「KAHOちゃん……」
「安岡氏、握手しよ」
KAHOちゃんは右手を差し出した。
「え?」
「あの夜の続き」
「あの夜……」
ーー
七年前の冬の日。
「安岡氏!」
そう呼んでKAHOちゃんは声をかけてきた。
「今、暇? 久しぶりに一緒にオアシス行かない?」
「うん、いいよ」
そして、喫茶店で新しい彼氏の話を聞かされた俺は、
「良かったね」
としか言えなかった。
喫茶店を出て、彼女のバイクが止めてある大学の駐輪場まで歩いた。
冬の日はとっぷり暮れて空は真っ暗。
やけに寒くなっていた。
歩いているうちに雪が降りはじめた。
自分のバイクのところまで行くと彼女は、
「じゃあ」
と俺に向かって右手を出した。
「うん?」
「握手しよ!」
なんか照れくさくて、じゃれるように彼女の頭をくしゃくしゃってしながら、
「もうそんなことするなよ」
笑いながら俺は言った。
しかし彼女は右手を引っ込めようとはしなかった。
俺は一瞬ためらったが彼女の手を握った。
次の瞬間、不意に彼女の手を引いて抱きしめようとした。
でも今の自分にそんな資格はない。
途中でやめてしまった。
「……」
気まずさの中で一秒一秒が長く長く流れたあと、
「……は、はは」
「……ふふふ」
どちらからともなく苦笑いがこぼれて少し気まずさがとれた。
雪がだんだん強くなった。
「視界が悪いから大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。相変わらず心配性なんだから安岡氏は」
「そうだね」
「じゃあ、ほんとにこれで」
「うん、気をつけてね」
彼女はバイクのエンジンをかけるともう一度、俺のほうを見て手を振った。 俺も手を振り返した。
バイクが動き出し、ふりしきる雪の中に消えていった。
ーー
「あの夜……」
俺は全てを理解した。
自分の右手を出して彼女と握手……と同時にその手を引き寄せた。
KAHOちゃんが今、俺の腕の中にいる。
そして俺の顔を見てこう言った。
「今度は、ちゃんと受け止めてね」
「ああ」
彼女は目を閉じた。
俺は、彼女の唇に自分の唇を近づけ……
「……君は一体、誰だ?」
「え?」
驚いたKAHOちゃんが目を開けた。




