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「RPGパラレル・パラドックス」  作者: しんTAKA


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RPG FINAL STORY 第十一話

【フェーズ KAHO&TAKASHI2】


「そうそう、安岡氏。私、新曲書いてきたんだよ」

「え、新曲?」

「そう。『あなたと愛の丘で』に続く第二弾『真実の愛の丘へ』」

「また『愛の丘」?」

「またとは何よ。聴きもしないうちから否定するの?」

「いや、聴きます。是非とも聴きたいです」

「うん、わかればよろしい」


そう言って、彼女は前奏を弾き出した。


「へぇ、三連符なんだね」

「そうよ」


と、彼女は歌い始めた。


♪「幸せの青い鳥が舞う今日の空

 未来を誓った二人に鳴る鐘の音〜

 青春のすべてをかけて育てた愛が

 ここに一つになる

 今、あなたは真実の愛の丘へと駆けてゆく

 あなただけを想う人の元へ 愛だけを見つめて


「どう?」

「なんか結婚式の歌みたい」

「正解。友達が結婚するんで、そこでオリジナル、歌ってって言われたから創ったの」

「なるほど」

「でも、最初に聴かせたのは安岡氏だからね。感謝しなさいよ」

「えー、それ、どんな反応か試してるだけじゃないの?」

「あ、気付いた?」

「KAHOちゃん!」

「まぁまぁ、そう怒らず。安岡氏なら的確に意見言ってくれると思ったんだよ」

「あー、それはそれは。大変光栄でございます」

「で、どう?」

「ああ、結婚式の歌としては最高」

「だよね。で、ライブでは?」

「どうかなぁ。『あなたと愛の丘で』の二番煎じに聴こえるかもしれない」

「やっぱりね。私もそう思う。だから安岡氏に聴かせたんだよ」

「うん、でもいい曲なのは間違いないから、歌っていけばいいんじゃないかな?」

「そう? 安岡氏がそういうなら、やってみようかな? リードギター頼むぜ」

「おう、まかしとけ」


と、マスターが控え室に入ってきた。


「いや、ずっと休憩せずにやってるから大丈夫かなと思って」

「え、そんなに長くやってました?」

「もう午後三時だよ。お腹空かないの?」

「あ、今の言葉で急にお腹空いた。マスター、なんかある?」

「そう言うだろうと思って、あっちにスパゲティー用意しといた。安岡氏も食べるだろ?」

「あ、ありがとうございます。KAHOちゃん、行こ」


俺は先にテーブル席へと向かった。


「あ、待って、安岡氏、ずるい」


KAHOちゃんとマスターが後から出てきた。

テーブルにはミートスパが二皿、用意されていた。


「うわぁ、美味しそう。ね、安岡氏」

「うん、マスター、食べてもいい?」

「どうぞ」

「いっただっきま〜す」


そう言うと俺は、フォークでスパゲティーを食べ始めた。


「うん、美味い。マスター最高っすよ」

「ほんと、マスター、いい味。ありがとう」

「いやいや、大したことないって。この店にとって偉大なスター二人のためですから。もちろん、お代はしっかりいただきますけど」


「ブッ」


俺は吹き出しそうになりながら、


「しっかりしてますね〜。わかってますよ、ちゃんと払います」


そう言ってスパゲティーをかき込んだ。


「ところで、安岡氏」

「ん、何? KAHOちゃん」

「安岡氏は曲、書いてないの?」

「え、いやぁ……。あれ、どうだったかな? 最近、なんか書いたっけ?」

「自分の歌のことだよ。わかるでしょ?」

「ああ、なんか書いたような書いてないような……」

「ノートとかないの?」

「ノート?」

「ほら、私にくれたじゃない。ノートとカートリッジタイプの万年筆」

「ああ、そうだったね」

「私、今でもあれ、使ってるよ」

「え、この携帯時代に?」

「安岡氏は使ってないの?」

「使って……。あれ、使ってたよなぁ?」


俺は自分のバッグの中を漁ってみた。

すると、B5のノートが出てきた。


「あるじゃない」

「うん、あった」


俺はノートを開いた。

パラパラめくると、高校時代に書いた歌や、同級生からもらった詩などが書いてあった。

さらにめくると、赤田さんの『カクテルグラス』が出てきた。さらにめくると、


「なんだ、これ?」

「何? 何が書いてあるの?」


そこには、こんな詩が書かれていた。


♪冬を歩こう


二人で歩いた粉雪のレンガ道

繋いだあなたの手が少し冷たくて

僕のコートのポケットに

そのまま手を入れた

溶け込むように温もりが一つになってゆく

冬を歩こう あなたと二人心あたたかくして

真っ白な雪 空から落ちて街を彩る

冷たい頬を寄せて笑顔で歩こう



「へえ、ロマンティックな詩ね。安岡氏やるじゃない。曲ついてるの?」

「いや、これ、俺が書いたのかな? あ、でも……『♪ふ〜ゆ〜を〜あるこお〜あなたとふたり〜』っていうメロディー」

「え、いいじゃん。安岡氏、やるねぇ。今度一緒に歌おうよ」

「あ、ああ、いいね。……でもなんで俺、これ知ってるんだ?」

「自分で書いたからでしょ?」

「そうか。でも、記憶ない」

「は? 意識なしに創ったっていうの? 確かに安岡氏は天才肌のところがあるけど」

「いや、そんなつもりは……」

「まぁ、いいわ。そんなところも安岡氏の魅力といえば魅力だもんね」

「街を彩る……『彩』る……」

「何?」

「いや、なぜか、この『彩』っていう字に引っかかるんだよね」

「綺麗な字だからじゃない?」

「そうなのかなぁ……」

「きっとそうよ」


俺は不可解な現状を受け入れるしかなかった。

そして、不可解なことはその後も続いた。


KAHOちゃんとのライブ中、ふと隣で歌う彼女の顔が全く別の女性に見えた。

ずっとKAHOちゃんと歌ってきたはずなのに、会ったこともない女性が歌っている。


(……パラドックス)


矛盾と訳せるその言葉が脳裏をよぎった。しかし、次の瞬間にはまたKAHOちゃんが歌っていた。

ライブの後、控え室で俺は頭が混乱していた。


「お疲れ。安岡氏、今日もギター良かったよ」

「……ありがと」

「どうしたの? 元気ないみたい」

「うん、なんか変なんだ」

「何が?」

「今日のライブで歌ってるKAHOちゃんの顔が急に違う女性に見えたんだ」

「え?」

「パラドックス……」

「パラドックス?」

「うん、パラドックス・なんとかっていう言葉が頭に浮かんで消えないんだよね」

「パラドックス・なんとか?」

「そう、パラドックス・ランドとか、パラドックス・ワールドとか、そんな感じの言葉。でもなんか違うんだよ」

「う〜ん。……ああ、安岡氏、『パラドックス』って言葉使って歌書こうとしてたじゃない」

「え、そうだっけ?」

「うん、よく言ってるよ。『矛盾した現実』みたいな歌が書きたいって」

「ああ、まぁ確かにそういう歌書きたいとは思ってる」

「矛盾なことばっかり考えてるから、私の顔が他の人に見えたんじゃない?」

「そう……なのかなぁ?」

「そうそう、そうに決まってる。あんまり考えすぎないほうがいいよ」

「ああ、そうかもね。このところ仕事も忙しすぎるから余計に考えすぎてるのかもね」

「そうだよ。安岡氏には私がついてるんだから、心配しないで」

「ありがとう。心強いよ」

「ふふ、やけに素直ね」

「え、いつだって俺は素直だよ。KAHOちゃんのこと信頼してるからね」

「……ありがとう。信頼してくれて」

「ねえ、KAHOちゃん。今、付き合ってる人、いるの?」


俺の質問に彼女は一瞬、目を大きくした。

そして二回、首を横に振った。


「じゃあ、俺と付き合わない?」

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