RPG FINAL STORY 第十話
RPG FINAL STORY 第十話
【フェーズ KAHO&TAKASHI1】
「あ、安岡氏、遅いじゃない。三十分遅刻よ。相変わらず時間にはルーズだねぇ」
「え、KAHOちゃん? 久しぶり。……何年ぶりだろう?」
「何年ぶりって、先週だってライブ、一緒にしたし、昨日も新人の子のライブ、二人で見たじゃない」
「……俺、KAHOちゃんとライブしたの?」
「何、『記憶喪失です。』みたいなこと言ってるの? 毎回毎回、その手には乗らないんだから」
「いや、ほんとに……」
「ハイハイ、そんなすぐに忘れられるような存在ってことよね。私は」
「そんなことあるわけないだろ。俺、ずっとKAHOちゃんのこと考えてた」
「え、ここで愛の告白? 七年前は抱きしめようとしてやめたくせに?」
「あ、いや、あれは……」
俺は、顔から火が出るほど恥ずかしくなった。
「ふふ、ごめん。ちょっと意地悪だった」
「あ、ああ」
少しほっとした。
「でもね。あれ、嬉しかったよ」
「え?」
俺は、再びドキドキしだした。
「あのまま、引き寄せられたら、私、きっと受け入れちゃってただろうな」
「え、そうなの? 俺はあの時、自分にはそんな資格ないと思って……」
「うん、資格ない」
「そんなはっきりと……」
「資格ないからやめたってわかったから、嬉しかったんだよ」
「え?」
「安岡氏、いい加減な気持ちで抱きしめようとしたんじゃなかったんだって」
「KAHOちゃん……」
「でも、だからって今、抱きしめようとしてもダメだからね」
「しないよ。そんなこと、するわけないだろ」
「さぁ、どうだか……」
彼女はニヤッと笑った。
「それより、今度の曲順、決めようよ」
「え、あ、うん」
KAHOは俺に、七年前に二人でやったいた曲のリストを見せた。
「これ、先週もやったの?」
「やったじゃない。まだとぼけるの?」
「いや。ほんとに忘れてて……」
「しょうがないなぁ。じゃ、一緒に歌ってみる?」
「え?」
「いいじゃない。練習もしとかないとね」
「あ、ああ……。それは確かにそうだな。わかった。やろう」
俺は控え室に置いてあったマスターのギターを借りてKAHOちゃんと一緒にギターを弾くことにした。
(マスターはTaylor使ってるんだ。しかもこれ、上位のタイプだな)
軽く弾いてみると抜けのよい綺麗な高音が部屋に響いた。しかも弾きやすい。
(歌蓮、このギター使ってたなぁ。マスターのを借りたのか)
「安岡氏、もういい? チューニング大丈夫?」
「ああ、大丈夫。マスターのギター、いい音だなって思って」
「弾いたことなかったの? ああ、いつもは自分のギターだからね」
「そっか」
「KAHOちゃんは相変わらずマーチン使ってるんだね」
「そうだよ。やっぱりいい音だし、私の曲に一番合ってると思うんだよね」
「ああ、俺もそう思う」
「じゃ、やろっか」
「OK」
そして二人はギターを弾き始めた。
♪ I’ll be waiting for you, my love
ずっと待っている 愛しいあなた〜
それは懐かしい声だった。あの頃のままの俺に戻った気がした。
ギターの音色……
KAHOちゃんの声……
(ああ、やっぱりいいなぁ……)
そして、気づくとだんだん記憶の中に先週のことが浮かび上がってくる気がした。
……なんか、一緒に演奏した気がするなぁ。
……あれ、最初からそうだったっけ?
……ああ、そうだ。先週もKAHOちゃんと一緒にギター弾いたんだ。
……な〜んだ、俺、何、寝ぼけてたんだろ……




