RPG FINAL STORY 第八話
【フェーズ ERI & TAKASHI are meant to be2 】
それから彼女と話すことはなく二年経ったある日、Here Afterで彼女を知ることになった。
俺は彼女の演奏に感動した。
それと同時に、あの時、『紲』のことを聞いた彼女の姿を思い出していた。
その後、俺たちは一緒に演奏するようになり、やがて付き合うようになった。
ある日、恵理の部屋で次のライブの打ち合わせをすることになった。
いろいろ構成を話してると、恵理が訊いてきた。
「崇さんは自分の曲、演奏しないの?」
まだ『シーさん』と呼ばれる前のことだ。
「え?」
「だって高校の時は歌ってたんでしょ? 『紲』とか」
「ああ、よく覚えてたね。そういや、恵理と相合傘したことあったな」
「私は、ちゃんと覚えてるよ。崇さん、傘、忘れたんだよね」
「いや、遅くなると思ってなかったから大丈夫だろうって……ハイ、傘、忘れました」
「正直でよろしい」
恵理と俺は笑い合った。恵理の笑い顔が高校時代の友達の誰かに似ていた気がした。
「ところで、崇さん。そろそろ教えてもらってもいい?」
「何を?」
「『紲』のこと。相合傘で約束したでしょ?」
「ああ、したな。でも、そんなこと覚えてると思わなかった」
「あ、ひど〜い。私はいつ言ってくれるか、ずっと待ってたのに」
「ごめんごめん。でも……どうしてそんなに『紲』が気になるの?」
「え、あ、いや、崇さんの高校時代ってどんなだったのかなって」
「ああ、そういうこと。そっか、じゃあ、どっから話そうかな」
「え、そんな長い話?」
「いや、そうでもないけど。まぁいいや。この曲、高校三年の時の文化祭で歌った曲なんだよね。で、控え室代わりに図書室を使ってたの」
「え、図書室?」
「そうなんだ。で、図書室でライブの構成資料の最終まとめをしてたら、現代国語の先生が来て、図書委員が貼ったアンケート結果を剥がし出したの」
「え、なんで?」
「あ、『愛の光』っていうテーマで学ふ生全員に『あなたにとって愛とは何ですか?』みたいなアンケートをとったんだけど、高校生でしょ。男の子は、まぁ、いわゆる性に直結する言葉を書いたりするんだよね。それを図書委員の子がそのまま表にして貼ったから、先生が剥がしちゃった」
「あちゃ〜、やっちゃった感じね」
「そうなんだけど、図書委員の女の子が怒ってね。『私たちに何の説明もなく剥がすってどういうことですか!』って」
「ああ。それはそれでわかるけど、ちょっと痛い感じ?」
「まぁ、客観的に見ればね。でも、その時は真っ直ぐだから。それで夕方、先生と向き合って膠着状態になって。どうしようもなくなった時に、英語の先生が『もう帰りましょ』って入ってくれて、なんとか和解になったんだけど、みんなモヤモヤしてて。で、ギターがあったんで、みんなでなんか歌おうってことになって『紲』を歌ったんだ。先生も巻き込んで」
「え、先生方も知ってる曲?」
「いや、英語の先生以外は知らない。でも図書委員の子は俺たちの練習をずっと見てたんで知ってた。それで、みんな、納得ではないけど、歌うことでケリがついた感じになったってことがあったの。だから、この曲はきっとみんなで盛り上がるのに向いてるんだろうなって思って、飲み会の時にやってみたってわけ」
「そういうことだったのね。ずっと疑問だったのよ。飲み会で自分のオリジナル歌うなんて度胸あるなって」
「度胸はないけど、曲は信じてる」
「はぁ、いいな。そんなこと言えるなんて。私はそんな自信ない」
「いやいや、何をおっしゃる。『パラドックス・プレイス』を書いたお方が」
「自信なんかないよ〜。あの時、録画で見た崇さん、輝いてた。私もあんな風に人前で歌いたいって」
「あ、そういうことだったんだ。でもなんかうれしい。俺のこと、ちゃんと見ててくれたんだよな」
「崇さんって、自分では音楽の話だと思ってるけど、本当は人を見捨てられない話しかしてないんだよね」
「え、そう? そんな話だっけ? 俺は単純に音楽の力ってすげーなって。自分がその表現ができる人物で良かったって思ってるだけ」
「この自覚の無さが罪といえば罪。魅力といえば魅力」
「それ、褒めてんの?貶してんの?」
「う〜ん、どっちも」
「恵理!」
「ふふ、ウソ。褒めてますよ〜だ」
「……ったくもう」
俺は、ふと気づいて腕時計を見た。
「お、もうこんな時間か。じゃあ、俺の曲やるかどうかは二人で合わせてみてってことでどう?」
「そうね。そうしよう」
「じゃあ、来週またHere Afterで練習しよ」
「わかった」
「じゃ、帰るね」
俺は恵理に背を向けて帰ろうとした。
「待って、忘れ物」
「え?」
振り返ると恵理の唇が俺のほっぺに当たった。
俺はびっくりした。
「な、どうした?」
「だって急に帰るって言うんだもん。寂しいじゃない」
「……あ、ごめん」
「いいの。私のわがままだから」
「……忘れ物」
「何?」
「どっかで聞いたような気がする」
「そうなの? いいじゃない、そんなことどうだって。私とあなたの忘れ物なんだから」
「そうか。そうだよな。じゃ、俺からも『忘れ物』」
俺は恵理に口づけをした。
恵理は驚いたが、そのまま目を閉じた。
「へへ、恵理とはじめてのキス」
「……もう、こんなの、ずるい」
「恵理の真似しただけだよ」
「えー。ま、そうだけど」
「ほんのお返し」
「ふふ、お返しされちゃった」
と、不意に俺は夢から目が覚めた。




