RPG FINAL STORY 第七話
【フェーズ ERI & TAKASHI are meant to be1 】
俺は夢を見ていた。
ダイコーの工場で製品試験が長引き、帰るのが遅くなった日の夢だ。
事務所から外へ出ると雨が降り出していた。
(雨か。さっきまで降ってなかったのに)
社員の駐車場は来場者用とは別に少し離れたところにあった。
(仕方ない、駐車場まで走っていくか)
そう思って、走り出すと前に一人、女性の社員が傘をさして歩いていた。
俺は冗談で
「おおい、入れてくれ〜」
と言ってみた。
横まで来ると営業部の新人の子だった。
俺は恥ずかしくなって、
「あ、冗談。気にしないで。走ってくから」
と言って先に行こうとした。
「あ、あの、どうぞ」
彼女は自分の傘を少し前に差し出してそう言った。
「いや、それは申し訳ないから」
「いいえ、大丈夫です。濡れて風邪ひいたら大変ですから」
「いやぁ……」
「どうぞ」
彼女はもう一度、でも少し強い口調でそう言った。
俺は少し照れながら彼女の傘に入った。
「安岡さんですよね。品質管理課の」
「え、知ってくれてるの? 光栄だな」
「知ってますよ。私は……」
「立山さんでしょ? この春、営業に入った」
「そうです。覚えてもらえてるんですね」
「そりゃ、営業部期待のニューフェイスだから知ってますよ」
「私も安岡さん、知ってますよ。この前の飲み会で自分で作った曲をカラオケにして歌ってたじゃないですか」
「え、でも、あの時、いなかったよね?」
「はい。でも営業の先輩が録画してて、そこで安岡さんが歌ってるの見たんです」
「ああ、そういうことか。恥ずかしい〜」
「いえ、よかったです。あれ、なんて曲ですか?」
「ああ、あれは高校の時につくった『紲』って歌。あれ、みんなで歌うと盛り上がるんだよね。だからやってみた」
「そうなんですね。いいなぁ、ああいうの好きです」
「へえ、君も音楽好きなんだ」
「はい」
そんな話をしているうちに自分の車があるところまで来ていた。
「じゃあ、俺の車、これだから。傘入れてくれてありがと」
「あ、あの……」
「ん?」
「また、歌ってください」
「え?」
「あの曲」
「ああ、『紲』?」
「はい」
「機会があったらね」
「約束ですよ」
「うん」
「……あと」
「ん?」
「あの歌って、誰に向けて書いた歌なんですか?」
「え?」
「あ、すみません。変なこと聞いちゃいました」
「ああ、まぁ、あの歌にはいろいろ思い出があるからね。また機会があればね。今日は雨だし、せっかく傘に入れてもらったのに、ここで長話して風邪ひいたら、それこそ意味なくなる」
「そうですね。今日は帰りましょう」
「うん、ありがとね。立山さん、運転気をつけて帰ってね」
「はい、気をつけます。では」
「じゃあね」
そう言って、俺は車に乗り込んだ。
エンジンをかけようとして、ふとバックミラーを見ると、立山さんはまだそこにいた。
俺と目が合うと、小さく頭を下げて自分の車へ向かっていった。
(変わった子だな)
そう思ったが、不思議と悪い気はしなかった。




