RPGセカンドストーリー EXTRA
【フェーズ Outside the Narrative】
朝、スマホをチェックしたヨウコの顔色が変わった。
「え、どういうこと?」
何度、確認しても、「FIN」の文字は消えることなく、また強制的なリスタートもできなかった。
ヨウコは怒りが収まらず、しんTAKAの部屋に怒鳴り込んだ。
「ちょっと、どういうことよ」
と、しんTAKAと話している女性に気づいて、
「あ、ユキノ、あなた、何やったの? なんで物語が終わってるのよ? 昨日、私がちゃんと阻止したでしょ?」
ヨウコは矢継ぎ早に言葉をまくし立てた。
「ふふ、私の勝ちね。ヨウコの出番は、やっぱり、もうなかったのよ」
「ふん、ヨウコ、ユキノにしてやられたな」
しんTAKAも相槌を打った。
「昨夜、何があったの? 私、まだ続くと思って寝ちゃったから、何もわかんない」
しんTAKAはデスクのPCを操作して、昨夜のログにアクセスし、ヨウコにリプレイを見せた。
「え、2時4分? 何? ……なんかゴソゴソ。あ、崇が目覚ましてる…… …… …… …… 。 ええー! ……そんなぁ〜 それで『FIN』…… ……はぁ。」
「わかっただろ。ユキノは手強いよ」
「ふふふ、ヨウコが用意したビールってわかってたけど、わざと崇に飲ませたの」
「え、なんで?」
「だって、あのまま行為に入ったら、疲れと緊張でうまくできないかもしれないでしょ。少し眠らせてからの方が確実だって判断」
「え〜、そこまで考えてたの?」
「そう。そして、あんたを呼び出して悔しがって見せたの。そしたら、あんたの邪魔は、もう入らないと思ってね」
「だって、『自業自得か、悔しい!』って言ってたじゃない」
「まだ、あんたが見てると思ったからね。ああ言っとけば、油断してもう出てこないという読み」
「あー、完全に騙された。完敗だわ」
「な、だから言っただろ。一人プレイでそれぞれやった方がいいって。対戦型にしたら、後のショックが大きいからって」
「うん、めちゃくちゃ、ショック。立ち直れない」
ヨウコはその場に崩れ落ちた。
「それにしても、TAKAさん、このゲーム、面白かったわ。創ってくれてありがとう」
「どういたしまして。ユキノは大人だから、うまく遊ぶと思ってたよ」
「どうせ、私は子どもですよ。ふん」
ヨウコの怒りは収まらない。
「プレイしようとすると、真から呼び出しがあるのよ。あいつ、呼び捨てにしてって何回も言ってるのに、『陽子さ〜ん、陽子さ〜ん』ばっかり言うんだもの。相手するのに疲れてゲームに集中できなかったのも敗因の一つ。って、あ、佐藤君と待ち合わせてるんだった。私、行くね」
言うだけ言って、ヨウコは飛び出して行った。
「自分でも『佐藤君』って言ってるじゃない。あれは気づいてないね」
ユキノは呆れたようにため息をついた。
「では、あらためて、これどうぞ」
しんTAKAが、胸から封筒を出して、ユキノに渡した。
「中身は君のお望みの5泊7日ハワイの旅ペアチケット。崇君といってらっしゃい」
「ありがとう。崇、喜ぶと思う」
「しかし、『勝利者賞がほしい』って君が言うなんて、思わなかったなぁ」
「だって、いきなりヨウコに呼びつけられて、これおもしろいから、一緒にやろうって言うんだもの。いくら私が嫌だって言っても聞かないから、『じゃあ、勝利者賞くれるならやってもいい』って言ったの」
「そうだったのか。ヨウコが俺のところに来て、『ユキノと対戦することにしたから、勝った方に賞品ちょうだい。ユキノの頼みなの』って言うから、『ユキノが言うんじゃ、しょうがないな。用意しておくよ』って言ったんだよ」
「ヨウコ、そんなこと言ったんだ。やっぱりね。私には『しんTAKAさんが出してくれるって』としか言わなかったから、そんなことじゃないかと思った」
「まぁ、ヨウコらしいといえば、ヨウコらしいだろ?」
「そうね。あの子らしい。ちなみにヨウコの勝利者賞はなんだったの?」
「え、聞いてないのか?」
「ええ、何も」
「聞かない方がいいんじゃないかなぁ」
「何? 『崇をくれ』とか?」
「おー、鋭いね」
ユキノの顔が曇った。
「と言いたいところだけど、ほんとは私をもっと優しくて素敵な女性に書いてくれって」
「あ、ああ、そう」
「ユキノ、ホッとした?」
「しんTAKAさん、意地悪」
「ハハ、ごめん、ごめん」
「でも、あの子、ほんとは優しい子なの。わかるよね? だから、私からもお願い」
「わかった、考えとくよ。まぁ、ほっといても、どうせ、またすぐにいろいろ言いに来るだろうけど」
「そうね。それがヨウコだもんね」
「って言ってたら、帰ってきたりして」
「え?」
しんTAKAとユキノは、入口の方を向いた。しかし、なんの変化もない。
「ね、来るかな?と思ったら、来ないのがヨウコ」
「そ、裏切りのヨウコ」
二人は、笑い合った。
「ところで、このゲーム、やってみてどうだった?」
「最初はヨウコに言われて、仕方なく始めたし、操作がうまくできなかった。それに、高校生の崇とどう距離を詰めたらいいかわからなくて……」
「へぇ、そう? なんかほっぺにキスとか自然な感じで上手いなって思ったけど」
「高校生の女の子だし、彩乃って清純なイメージだから、あまり過激なこともできないでしょ? ほっぺにキスくらいかなぁって」
「正解です」
「あれで、ようやく道筋が見えて、基本操作もスムーズにできるようになったので、なんとかなるかぁって思ってるうちに、ゲームにハマっちゃった」
「そう、それはよかった。でも、なんで『彩乃』でプレイしようと思ったの?」
「いろんなキャラクターを比べてみて、崇が一番、堕ちそうだと思ったのが『彩乃』だった」
「『みゆき』とか『KAHO』って思わなかった?」
「『みゆき』はそれこそ、ヨウコのキャラだし、『KAHO』は、私、歌を創ったことないので、操作できないでしょ? 私は『彩乃』で勝負するしかない」
「まぁ、賢明な判断ってとこか」
「そういうこと」
「それにしても、『ふふ、お返しされちゃった』とか、『男の人とこんなところに来るのは初めてよ』とか、どっから、そんなセリフ出てくるの?」
「え、なんで?」
「崇がキュンキュンする言葉を上手く使うなぁって」
「だって、それがこのゲームの基本でしょ。どうやって相手をその気にさせるかってことを考えて進めないと、次の展開に持ち込めないじゃない」
「ああ、そういうことね」
「でも……」
「でも?」
「あの時は自然に出た。 『ふふ、お返しされちゃった』って」
「自然に?」
「あれは、意識してなかった。たぶん、彩乃が私の中に入り込んでたんだと思う」
しんTAKAはユキノの才能にすっかり感心した。
「でも、しんTAKAさん。私、ずっと不思議だったんだけど、どうして、この恋愛ゲームのスマホアプリ創ったの?」
「あ、言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
「ヨウコがさ、ファーストストーリーが終わった時、終わり方が納得できないって俺をPCディスプレイの中に引きずり込もうとしたの」
「わ。あいつ、そんな過激なことしたの? 後でとっちめてやる」
「で、俺も吸い込まれるわけにいかないから、必死で抵抗したら、『どうしてもこっち側に来るのが嫌なら、私にこの物語をもう一回、書かせて』って言ったんだ」
「そんなことしたら、話がとんでもないことになるじゃない」
「そう。だから、それはできないので、その場しのぎで、『わかった。この物語のキャラクター使ってプレイできるアプリ創る』って言っちゃったんだ。そしたら、『私、スマホしか持ってないんだから、スマホだけで使えるアプリにしてね』って」
「ああ、それで、こんな形になったってことか」
「そういうこと。やり方は強引だったけど、結果的に新しいゲームの開発ができたので俺も満足だよ」
「そう。じゃ、とっちめなくてもいいか」
「ああ、いいよ」
「じゃ、そろそろ、崇のところに帰るね」
「おう、また遊びに来いよ」
「しばらく来な〜い」
「なんで?」
「崇とハワイ、行くから」
ユキノはそう言って、勝利者賞の封筒をひらひら振って、ディスプレイの中に消えた。
しんTAKAは、ゲームアプリが無事に動いてよかったと心から思った。
『フェーズ Outside the Narrative』
FIN




