RPGセカンドストーリー 第十六話 ラブロマンス?
【フェーズ Love Romance?1】
福仲先生が見えなくなると、彩乃は前を向いて、こう言った。
「うん、先生、大丈夫だ」
「ほんと?」
「うん、間違いない。あれは早まったことをする顔じゃない」
「早まったことって、まさか」
「だから、そんなことはしないってこと」
「なんでわかるんだ?」
「わかるわよ。女ですもの」
「そんなもんですか?」
「そんなものですよ〜。崇君のバ〜カ」
「何で急に怒るんだよ」
「『終止符』、録音したものがあるって、教えてくれなかったでしょ?」
「あ、ごめん」
「知ってたら、もっと早く先生に聴かせたのに」
「ああ、そういうことか。実は彩乃と付き合うようになると思ってなかったから、夏には持って帰らなかったんだ。で、今回、持ってきたんだけど、彩乃との話に夢中になってるうちに忘れちゃってた」
「みゆきとキスしたことが気になってたから?」
「え、今、それ言う?」
「言う、言う。 みゆきの前では言わなかったけど、結構、傷ついてるんだからね」
「あ、ほんとにごめん」
「うん、わかればよろしい。それと、」
「え、まだ何かあるの?」
「KAHOさんに『終止符』歌ってもらったって言わなかったでしょ?」
「へ、それもだめ?」
「ダメじゃないけど、教えておいてほしかったなぁ。私と崇君の二人だけの歌だと思ってたから」
「あ、これも、ごめん。でも、KAHOちゃんが歌ったの聴いたら、きっと彩乃、驚くだろうなって思ったから」
「だから、それはいいんだって。ちゃんと伝えてくれていないことに怒ってるの」
「はい、わかりました。これからは何でも言うようにします」
「じゃあ、さっきの録音の続きをかけて。他にも曲、あるんでしょ?」
「うん、あるよ。彩乃にいろいろ聴いてもらいたい曲。……そうだ、まず『カクテルグラス』からにしよ」
俺は、音楽プレーヤーのディスプレイに、『カクテルグラス/モラトリアム』を表示させて、再生ボタンを押した。
♪背中越し 窓に映る視線 グラスを持つオマエの手・・・
「これが赤田さんの声?」
「そう」
「この人も上手ね。KAHOさんとは全然違う。都会っぽい感じがする」
「だろ。たった二歳違いなのに、こんな大人の歌聴かされて、俺、全く書けなくなっちゃったんだ」
「なるほど、それは、そうなるかもね。でも、さっきの福仲先生、見たでしょ? 崇君の歌が好きっていう人もいっぱいいるんだよ」
「そう……なのかなぁ。 今の俺には自信がない。でも、」
「でも?」
「うん、彩乃にもらった万年筆でいっぱい落書きしてるよ。今は無理でも、ずっとこれを続けていけば、きっとまた書けるようになる」
「そうなんだ。……よかった、万年筆渡して」
「感謝してる」
「へへ」
曲を聴くうち、車は街外れに差し掛かっていた。
いつもなら、この道は通らないのだが、今日は山峰公園に寄って、さらに福仲先生を送って行ったため、別の道で帰ることになった。
ここを通らず、彩乃と待ち合わせた交差点へ行くには、かなり遠回りになる。
この辺りは、いわゆる『ラブホ』が点在しているエリアだ。
と、彩乃が、
「あ、ラブホがある」
「え?」
俺は動揺した。
(しまった。遠回りでも、違う道にした方が良かったかなぁ)
そう思っていると、
「ねえ、そこ、入ろうよ」
あっけらかんと彩乃が言った。
「え、ええ? いや、だって福仲先生にちゃんと送っていけって言われたし……」
「ふふ、崇君のま・じ・め。いいじゃない。今日は私、のっこのところに泊まることになってるから帰らなくてもいいんだ」
「え〜」
「何? それとも崇君は、おうちが恋しい?」
「いや、俺は帰省した時は、岸本や佐久本なんかのうちによく泊まってるから、急に帰らなくても大丈夫だけど……」
「じゃ、いいじゃない。決まり。そこ入ろ」
俺は言われるまま、ラブホの駐車場に車を停めた。




