表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「RPGパラレル・パラドックス」  作者: しんTAKA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/86

RPGセカンドストーリー 第十四話

【フェーズ Night Drive2】


「あの、すみません……」


四十前後といった感じの男だった。

俺と彩乃は身構えた。

しかし、黙ったままというわけにもいかない。

俺は恐る恐る、返事をした。


「何でしょう?」

「あの、あっちにいる女性、麓のタクシー拾えるところまで車に乗せてやってもらえませんか? 私、帰るんで」

「へ?」

「いや、見ての通り、喧嘩になっちゃって、一緒に帰りたくないって言うんでね。このまま一人にしておくわけにもいかないし、申し訳ないが、乗せてやってほしいんですよ。もちろん、お車代は出しますから」


と男は財布から一万円札を出して、俺に渡そうとした。

俺は、カッと頭にきて、


「なに、言っ――」

「なに、言ってるのよ。あんた」


俺の言葉をひったくるように、彩乃が大きな声を出した。

男はびっくりして、


「あ、足りません?」


と、もう一枚、お札を出そうとした。


「そうじゃない。何で彼女をほっといて帰ろうとするの? どんな理由で、どんな喧嘩をしたか知らないけど、それはやっちゃいけないこと」


男はようやく彩乃が怒っている理由を理解したようで、


「はぁ、そうなんですが、私が何を言っても麻菜美……、いえ彼女が一緒に帰るのは嫌だって言うもんで」

「え、マナミ?」


俺がその言葉に気を取られてると、


「崇君、彼女のところに行って」

「え?」

「この人とは、私が話をつける。だから崇君は彼女を」

「わかった」


俺は彩乃の言う通り、女の前に向かった。



(マナミって、まさかな……。 どうか違う人でありますように)


近くまで来ると、女性の顔がだんだんとはっきり見えてきた。

女は目を真っ赤にして泣き腫らした顔を見られたくないのか、顔を背けた。

しかし、俺の願いは……外れた。


(いや、落ち着け。ここは普通に話しかけるんだ)


「あれ、もしかして、福仲先生?」

「え?」

「やっぱり。俺ですよ。安岡です。二年前に卒業した」

「安岡君って、SKYの安岡君? 『紲』を歌ってた」

「あ、先生、『紲』覚えててくれたんですね」

「うん、私、あの歌大好きだったから、今でも文化祭のSKYのライブ録音、よく聴くの」

「え、そうなんですか? なんか恥ずかしいなぁ」


その言葉にふと気づいたように、


「恥ずかしいのはこっちよ。こんなところを安岡君に見られるなんて」

「ああ、いやぁ、まぁ、でも、俺だからいいじゃないですか?」

「ダメよ。元教え子にこんなとこ見られたら、もう教師なんてやってられない」

「そんなこと言わないでくださいよ。先生は俺の憧れの先生なんですから」

「じゃあ、余計、がっかりさせちゃったわね」

「だから、そんなことないっす。今だから言うけど、俺、ずっと先生のこと好きだったんです」

「え?」

「あ、いや、恋愛とかじゃなくて。ほら、文化祭で重松先生と対立した時、助けてくれたでしょ?」

「ああ、あれは、いい加減、遅くなってたし、重松先生も三井さんも引きそうになかったから……って、あの子、三井さん?」

「はい、そうです」

「安岡君、三井さんと付き合ってるんだ。てっきり栗山さんと付き合うと思ってた」

「あ、俺の気持ち、先生にもバレてました?」

「バレるというか、栗山さん、いつも『こういうのは崇が得意』『先生、これ崇にやらせて』って言ってたから」

「え、そうなんですか?」

「知らなかったの? 余計なこと言っちゃったかなぁ」

「いえ、大丈夫です。……それより、……先生、何があったんですか?」

「あ、」

「言いたくないかもしれないけど、俺たち、ここで見たこと、聞いたことは誰にも言いませんから。『紲』を書いた安岡の言葉を信じてください」

「『紲』かぁ。……わかった。話すわ」


と、そこへいつの間にか彩乃がやってきた。


「どう、福仲先生と話はついた?」

「え、気づいてたの?」

「当たり前よ。遠くから見た感じが似てたし、あの親父が『マナミ』って言った途端にピンときたわ」

「で、あいつは?」

「とっくに帰ったわよ。あんな最低男、追い返してやった」

「強え〜」

「先生、もう大丈夫ですよ。私たちと一緒に帰りましょう」

「え、でも、二人は、ここの夜景を見にきたんでしょ?」

「ここは、またいつでも来れます。今は先生を無事に送り届けることが先決。そうでしょ、崇君」

「ああ、そうだな。先生、一緒に帰りましょう」

「ありがとう。でも、あなたたちに甘えるわけには……」

「この後に及んで何言ってるんです。ここに一人残ってどうするんですか?春とはいえ、まだ夜は肌寒いですよ。それに、こんなとこ、一人でいたら死んじゃいます」

「そんな大袈裟な」

「大袈裟じゃないです。とにかく先生は、俺たちの大切な先生なんですから、送らせてください」

「……わかった。じゃあ、お願いするわ」


俺と彩乃は、福仲先生を後部座席に乗せて山を降りることにした。


車が動き始めてしばらくは沈黙が続いたが、やがて福仲先生はポツリポツリ喋り出した。


「私、あの人と三年前に知りあったの。彼、その当時、S高の教師をしていてね、職員研修会で出会ったの。独身だって言ってた。年は離れてたけど、彼の教員方針や考え方にものすごく惹かれちゃって、奥さんがいるってわかった時には、もう離れられなくなってた」


彩乃と俺は、黙って、次の言葉を待った。


「……でも、やっぱり、別れなきゃいけないって思って、ほら、山峰公園に行ったカップルは別れるってウワサあるでしょ? だから、彼を誘って、この公園に来たの」


俺たちは顔を見合わせた。なんと言っていいか、わからなかった。

俺が口を開こうとすると、彩乃が、(ううん)と首を振って遮った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ