RPGセカンドストーリー 第九話
(前回からの振り返り)
俺は咄嗟に、
「待って、忘れ物」
「え?」
振り返ったみゆきに俺は今度こそ、口づけをした。
みゆきは、驚いたように目を大きくしたまま、俺を振り解いた。
「何するのよ」
「わからない。でも、勝手に体が動いた」
「バカ。崇のバカ。こんなことしたら崇を忘れられなくなるじゃない」
「そうだよな。でも、お前だって、このまま終われないだろ?」
「……うん。本当は終われない。わかってる。崇、……ごめんね」
そう言うと、みゆきは目を閉じた。
俺は、彼女にもう一度、キスをした……。
【フェーズAYANO→YOKO】
と、目の前が急に真っ暗になった。
・・・・・・・・・・stop system
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>フェーズAYANOへの移行を中止します。
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>フェーズYOKO起動。
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気づくと、俺は見知らぬ部屋にいた。
部屋は夕焼けみたいな琥珀色の光に包まれている。
席は三つだけ。
半透明のレースカーテンの向こうに、 誰かが座っている気がするのに、 顔は見えない。
壁の時計は動いていないのか?
やけにゆっくりしているように見える。
部屋の奥では、 古いジュークボックスが、 ノイズ混じりのラブソングを流している。
その曲に合わせるみたいに、笑い声が聞こえてきた。
「ダメじゃない、あそこでキスしちゃ」
その声に聞き覚えがあった。
「ヨウコ?」
「ほら、あそこでキスするから彩乃に会えなくなったでしょ。ここでGAME OVERね」
「GAME OVER?」
「でも、さすが、みゆき。魔性の女の本領発揮ね。あれに耐えられる男はなかなかいないわ」
「どういうことだ?」
「のっこちゃんが『彩乃を泣かせるようなことしたら承知しないから』ってあれだけ忠告したのに。あと一日、我慢すれば、彩乃が帰ってきたのに。……残念ね」
俺はわけがわからなかった。
「せっかく私がこの物語を乗っ取って、あなたにもう一度、チャンスをあげたのに。崇、ダメね」
「何言ってるんだ? 俺はただ、みゆきと——」
「みゆきと何? 恋人同士になるとでも言うの?」
「いや、そんなことは思ってない。ただ、これで終わりにできると思ったんだ」
「言い訳ね。自分の性欲に負けただけじゃない」
「違うって!」
「ムキにならなくていいわよ」
と、そこへ一人の女が現れた。
みゆきだった。
「あ、みゆき。……そうだ、みゆきからもなんとか言ってくれよ」
「何を? 崇は結局、私に堕ちたんでしょ」
「みゆき……。お前、わざと……」
「そうよ。あなたの意思が本物かどうか確かめたの。ねえ、ヨウコさん」
「ふふ、みゆきはやっぱりすごいわ。私でも敵わない」
「崇を彩乃に渡すわけにはいかない。私のプライドが許さない」
「ですって。どうする?崇君」
「ヨウコ、お前、彩乃をどこにやった? 何かしたのか?」
「何もしないわよ。あなたが勝手にドロップアウトしただけ」
「俺は、ほんとに彩乃のことを」
「ウソウソ。まぁ、いいわ。そんなに言うんなら、今のあなたの姿、彩乃に見てもらう? さっきのみゆきとのやりとり、しっかり記録されてるから、いつでもリプレイできるわよ」
「それは……」
「ふふ、ちょっとかわいそうか。崇は何も知らないんだものね。いいわ。もう一回だけ、チャンスをあげる」
「チャンス?」
「このまま、彩乃と会ってらっしゃい。今度は失敗したらダメよ」
と、ヨウコは俺にキスをした。
……ヨウコの顔がぼやける。
……みゆきの声も遠ざかっていく。
俺は何か大切なものを忘れていく気がした。
まるでスローモーションのように、俺はだんだん深い眠りに堕ちて行った。
……遠くでヨウコの声がした。
「いい? 今度は失敗しないでね。もちろん、この空間での記憶はなくなるから…… ふふふ……」




