147.未来からのメッセージ その2
『さて、んじゃ話をする前に番号を選んでくれ。
選べばそれぞれの記録に飛ぶようになってる』
……番号?
何のことかと思っていると、アナウンスが流れた。
『キャプチャーから希望のメッセージを再生してください
現実が変わらなかった場合は 1 を
現実がアルタナと融合したような世界だったら 2 を
現実が江戸時代と融合したような世界だったら 3 を
メッセージの冒頭に戻る場合は ♯ を頭の中に思い浮かべて下さい』
テレフォンサービスかよ!
無駄に芸が細かいな、未来の俺!
頭の中でツッコミを入れつつ、俺は3を選択する。
すると、映像が切り替わった。
『3を選んだか……どうやら最悪の状況のようだな……』
未来の俺の格好が変わっている。
マント姿ではなく、なんかタンクトップぽい服を着ていた。
収録は別々なのか……。
凄い真面目な映像なんだけど、なんか釈然としないな……。
『あ、ちなみにこのメッセージは最後まで見れば
キャプチャー設定で、好きな場面を選べる
もし他の映像が見たい場合は、それで見直してくれ』
親切設計!
てか、未来の俺、結構余裕あるな。
出会った時は、この世の全てを恨んでいるような表情してたのに。
いったいこの映像はいつ撮ったのだろうか?
『さて、じゃあ話を進めよう。
3を選んだって事は、現実が江戸時代と融合したような世界になっていた、か。
想定していた中では、最悪の展開だな
これは俺が、メインストーリー7をクリアした後に起こった事だ
ログアウトすると、現実が変化し、歴史が大きく変わり、
徳川ロドリゲスと名乗る将軍が日本を支配していた』
メインストーリー7って事は、あの魔女の弟子さんと飲み会をした後か。
名前は確かリリアンヌさん。
祠を壊した後、亜人の魔女っ子ラヴィと出会い、彼の家で飲み会をしている最中に乱入し、そのまま楽しく騒いだ。
……ほんと、なんであれでクリアになったんだろうか? 謎である。
(そういえば、未来の俺はエイトさんとの共闘戦をしていなかったな)
未来の俺は、予定を一日ズラしたといっていた。
そのせいで、エイトさんは終末世界で、黒い巨人によって姿を変えられ、無限ログイン状態に陥り、結果現実でも昏睡状態になった。
俺はメインストーリー6→エイトさんを救出、共闘戦→メインストーリー7→未来の俺との決戦の順だから、この時点でかなりの差異はある。
とりあえず今は映像に集中しないとな。
俺は映像に視線を移す。
『まず結論を先に言おう。
現実が変わった原因はデイリーダンジョン『戦国乱世』だ』
未来の俺の言葉に、俺は内心「やっぱりか」と呟く。
予想はしていたが、やはりそれが原因だったか。
『デイリーダンジョンは現実と強くリンクしている
『終末世界』が未来に影響を与えるなら、『戦国乱世』はその逆
過去に影響を与える力を持っている
そして過去を改変した結果、それが現在にも反映されるんだ』
……改めて聞くととんでもないな、異世界ポイントって。
現実にあっていいアプリじゃないだろこんなの。
……ん? てことは、『廻転輪廻』も現実への影響があるって事か?
『終末世界』が未来、『戦国乱世』が過去なら、『廻転輪廻』は……現在?
『俺はまだ当時、『戦国乱世』には手を付けていなかった。
それ以外で手一杯だったからな
まあ、そもそも余裕があったとしても出来なかったんだが……』
ん? どういう事だ?
『この映像を見ているお前がどの程度、メインストーリーを進めているかは分からない。いちおう、知らないって前提で話すが、『戦国乱世』はメインストーリー10をクリアした後でないと、プレイすることが出来ないんだ』
「えっ?」
未来の俺の言葉に、俺は少し驚く。
『戦国乱世』はメインストーリーを10までクリアした後じゃないと出来ないのか?
コンテンツとしては、解放されてたからてっきり出来るのかと思っていた。
『『戦国乱世』はメインストーリー10を、『廻転輪廻』はメインストーリーを20までクリアした後じゃないと、プレイ出来ない。
小雨の『迷宮扉』を使えば、その限りじゃないがな。
これは他のプレイヤーも同様だ
数は少ないが、俺以外にもデイリーダンジョンを複数解放したプレイヤーは居た』
あ、やっぱり俺以外にも居たのか。
井口が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、俺は映像に注視する。
『一人はバルカン。
コイツはお前も知っているだろう。有名だからな』
知ってるよ。
自販機に手足が生えたようなプレイヤーだろ。
知ったのはついさっきだけど、強烈な見た目だったから覚えてる。
『ああ、先に言っておくが、バルカンが変化できるのは自販機だけじゃないぞ?
戦況によっては、宇宙人やサボテン、たい焼きにも変身する。
アイツ以上に多彩で、対応力のあるプレイヤーを俺は知らない』
「ぶほぁ!?」
「ちょ、先輩!?」
「りゅーぅきたない!」
「ウッキィ……」
「げほっ……いや、ごめん。でも、だって……」
俺は慌てて口を拭う。
宇宙人やサボテン、たい焼きにも変身する自販機ってなに?
バルカンさんってどういう職業なんだ?
『性別も正体も不明だが、強い事だけは確かだ
大河さんが火力に特化したプレイヤーなら
バルカンさんは対応力特化。……火力も強いけどな
彼は『戦国乱世』と『廻転輪廻』を解放していた
大河さんは『戦国乱世』だけだった
どうやらデイリーダンジョンの解放条件はプレイヤーによって違うみたいだ
3つ以上解放したプレイヤーは、俺の知る限り他には誰も居ない』
小雨の『迷宮扉』で現れた扉も三つだった。
てことは、デイリーダンジョンは最大でも三つまでってことか?
……あんな難易度のダンジョンが他にもあるとは考えたくない。
『話が逸れたな。当時、大河さん、バルカンさん、絶頂会長の三名が中心となって『戦国乱世』を進めていた。
そして『終末世界』同様、『戦国乱世』にも『えねみー』は居た
将軍と女王と呼ばれる二人だ』
将軍と女王、ね……。
『女王の名はアウロラ・バルカディア
そして将軍の名は――徳川ロドリゲス』
「ッ……!」
『もう分かっただろう。今の日本を支配しているあの男こそ、この騒動の元凶だ
コイツを倒せば、現実は元に戻る。そういう風に設定されている』
設定されている、だと……?
『メインストーリー11だ
そのEXシナリオのクリア条件に『徳川ロドリゲスの撃破』がある
逆に言えば、それ以外では奴を倒すことは出来ない
異世界ポイントがそういう風に設定しているからな
言ってしまえば、この状況すら異世界ポイントのイベントの一部って訳だ』
俺のメインストーリーに徳川ロドリゲスの撃破があるだと……?
他の――『戦国乱世』をプレイしていた彼らじゃなくてどうして俺なんだ?
いや……そういえば、ノンノンデニッシュと最初に戦った時も、彼のイベント発生条件に『俺が隠しダンジョンを発見する』というのがあった。
プレイヤー同士のメインストーリーは複雑に絡み合っているってことか。
『だからこの状況をどうにかしたければメインストーリーを進めろ。
8~10は連続した一つのイベントになっている。
やろうと思えば、すぐに終われるはずだ
ただ内容については、アドバイスは出来ない
その理由も、大河さんを救う方法も、プレイすれば分かるだろう』
内容について教えられない?
何か制約があるのか?
もしくは……話すことで内容や難易度が変わる、とか?
『ここまで話しておいてなんだが、あくまで俺の言葉は参考程度に留めろ
俺とお前が違うルートを進んでいる以上、差異は必ず生じているはずだ
決して優位に進められるとか、攻略本を手に入れたなんて慢心するな
その僅かな心の隙が、アイツにとって絶好の好機だからな』
またアイツ、か。
――お前が弱いからアイツに取り込まれた! お前が弱いから全てを失ったんだ!
未来の俺はそう言っていた。
アイツとは、いったい誰の事なのか?
『そうだな。じゃあ、次はお前が一番知りたい事について教えよう
お前も随分、気になっているだろうからな』
……俺が一番知りたいこと?
もしや未来の俺が言っていた元凶の事か?
未来の俺が何やらもぞもぞと動く。
やがて手に持ったソレを見せた。
『――クジャクパンツ。変態職が装備できる最上級装備の一つだ
コイツの入手方法を教えよう』
脱ぎたてほやほやのクジャクが「クワァ~~~」と室内に響いた。
「それじゃねえよ!」
いや、役には立つかもしれないけどさ!
でも今の流れで出す内容じゃないだろ!
思わず声を出して、俺は画面に突っ込んでしまった。




