146.未来からのメッセージ その1
大河さんが国際指名手配犯になっていた。
同時に何故連絡がつかないのか、その理由も納得した。
そりゃ、こんな事になってれば連絡なんて取れないわ……。
「えっと、この人が先輩の言ってた大河さん、ですか? 隣に住んでるっていう……」
「そういえば、井口はまだ会ったことがなかったな」
大河さんと世界扉の検証をしたのは、井口が仲間になる前だった。
セイランはテレビを見ながら、「あー、とぉーらだ」と指をさしている。
何気に人嫌いのセイランが懐いた数少ない相手でもある。
てか、今更だが、セイランは大河さんのこと、とぉーらって呼ぶのか。
「あとの二人は誰でしょうね? 先輩、知ってますか?」
「……いや、分からないな。でも多分、プレイヤーだろうな」
大河さんと一緒に映し出されている二人の人物。……いや、人物と言っていいのだろうか?
鳥谷部桔梗と巳波バルカン。
鳥谷部桔梗は、シルクハットを被り、のっぺりとした白い仮面で顔の半分を覆っている。オペラ座の怪人のような姿だ。手に持っているのは……大根? え、なんで?
マスクや服装の所為で、男か女かも分からない。
もう一人の巳波バルカンはもっと分からない見た目をしていた。
自販機に手足が生えたとしか言いようがない姿をしている。
手足の生えた自販機が、缶ジュースが連なって出来た蛇腹剣を振り回して暴れていた。
更にその周囲に浮かぶ無数のラムネ瓶からは、ビームまで発射されている。
SMバニーメイド女王様がミサイルをぶっ放し、シルクハットの怪人が大根片手に、畑を耕すようなトラクターを爆走させ、手足の生えた自販機が投げた缶ジュースが爆発している。
その攻撃で、警官や自衛隊っぽい人たちがやられまくっている。
……世界観、おかしくない?
まるで風邪を引いた時に見る夢みたいな光景だった。
「……なんというか、普通に悪人っぽい三人組ですね。写真はともかく、映像の方は合成じゃなくガチっぽいですし」
「……」
井口の感想に、俺は何も言い返せなかった。
うん、本当に見た目と映像だけなら、どこからどう見ても国際指名手配犯だ。
とはいえ、大河さんがそういう事をする人物ではないことを俺は知っている。
「まあ、プレイヤーが日本政府に敵対するなんて、クエストかえねみー関係だろうな……」
というか、それ以外に考えられない。
「つまり、この徳川ロドリゲスって人は、えねみーって事ですか?」
「もしくはプレイヤーか。どちらかである可能性は高いな」
おそらくはえねみーだとは思うが……。
どちらにしても、要注意人物には違いない。
「というか、このバルカンってひょっとして、掲示板でよく目にするあの☨バルカン☨さんか?」
自称無双プレイヤーで、あの大河さんから『自分よりも強い』と言われていたプレイヤー。
そうか……バルカンさんは自販機だったのか。意味わからん。
「このはこみたいなひと、かっこいい!」
「ウッキィー♪」
セイランと夜空にはバルカンさんの見た目はアリだったらしい。
目を輝かせながら、テレビに見入っている。
……なんで?
「というか、先輩。この状況で言うのもなんですけど、『世界の記憶』の方は、確認しなくていいんですか? あと今回のクエストで手に入れたアイテムとか」
「あっ」
そうだった。
そもそもそれを調べようと思ってたのに、現実でのインパクトと情報量が多すぎたせいで、完全に意識が逸れてしまっていた。
「世界の記憶……ひょっとしたら、『戦国乱世』に関する情報もあるかもしれないな。そうだな、『戦国乱世』に行くよりも、まず先にそっちを確認しよう」
テレビを消すと、俺は収納リストから『世界の記憶』を取り出す。
『世界の記憶』は見る者によって形を変える。
俺には古びた手帳にしか見えないが、雷蔵たちには別の形に見えているはずだ。
「……きれいなかぎ」
じっとセイランが『世界の記憶』を見つめる。
どうやらセイランには鍵の形に見えているようだ。
「ウッキィ……」
じっと夜空が涎を垂らしながら、『世界の記憶』を見つめる。
どうやら夜空にはバナナの形に見えているようだ。
……そういう見え方もあるの?
「先輩、どうですか? 何が書かれていたんです?」
「ちょっと待て……、えーっと……」
俺はさっそくページを捲ろうとする。
すると、次の瞬間、『世界の記憶』が光り輝いた。
「な、なんだこれ――!?」
俺は咄嗟に雷蔵の方を見る。
雷蔵は無言で頷くと、即座に雲母やセイランを庇うように動いた。
俺も咄嗟に『世界の記憶』を手放そうとするが、その瞬間、『世界の記憶』は光の粒子となって、俺の中へと吸収された。
「な、なんだ……?」
これって『世界の記憶』が俺の中に入ったってことか?
でも体には特に変化は……。
「ッ――!?」
次の瞬間、莫大な情報が頭の中に流れ込んできた。
「ぐっ、がっ……あがああああああああああああ!?」
「せ、先輩!? 大丈夫ですか、先輩!」
「りゅーぅ!?」
「ウッキィ!」
ガン、ガン、ガンと頭を内側からハンマーで叩かれているかのような激痛が襲う。
気を失いそうになるほどの痛み。
『プレイヤーの脳が膨大な情報量への耐性を獲得していません』
『脳の一部が破損しました』
『情報の開示を制限』
『破損した脳の一部を修復します』
『修復……修復……成功』
『追加修正及び―――を導入……成功』
『ササキ リュウジに『世界の記憶』がインプットされました』
『現在開示可能な情報を閲覧しますか?』
「ハァ……ハァ……ハァ……」
頭痛が収まったかと思うと、今度はいつものアナウンスが聞こえてくる。
なんだったんだ、今のは……?
アナウンスから察するに、『世界の記憶』とやらが膨大過ぎて俺の脳がパンクしたって事か? なんか脳の一部が破損したって聞こえたけど、大丈夫か……?
それにアナウンスの一部が聞き取れなかったような気がしたけど気のせいか?
痛みでそれどころじゃなかったし……。
「せ、先輩?」
「りゅーぅ、大丈夫?」
「ウッキィ……」
井口たちが心配そうな眼差しで俺を見つめてくる。
「だ、大丈夫だ。『世界の記憶』よ……現在可能な情報を開示してくれ」
俺がそう口にすると、目の前に無数のモニターが出現した。
『現在閲覧可能な情報』
・並行世界におけるササキ リュウジからのメッセージについて
・メインストーリー プレイバック
・終末世界のモンスターについて
・■■■■■■■■■■■■
・職業別の特殊装備の入手方法について
・攻略情報(一部のみ閲覧可能)
・■■■■■■■■■■■■
・世界の記憶の閲覧方法の広げ方について
・■■■■■■■■■■■■
・■■■■■■■■■■■■
・■■■■■■■■■■■■
・■■■■■■■■■■■■
・☨バルカン☨の無双戦闘術について(自販機編)
・3+3=8の数字スキルについて
・ノンノンデニッシュのドM殺法について
・絶頂会長の零式戦術について
・ぽるんがのノーライフについて
・リラ・アルカアムの知識について
・大河茜の性癖について
・魔女の継承について
・アルタナの国々について
・■■■■■■■■■■■■
・塔への挑戦 出現モンスターについて
・えねみー 『魔女』について
・えねみー 『将軍』について
・えねみー 『女王』について
・えねみー 『道化』について
・■■■■■■■■■■■■
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・■■■■■■■■■■■■
・■■■■■■■■■■■■
ずらりと並んだ様々な項目。
その数はゆうに数千はくだらないだろう。
そのほとんどが黒く塗りつぶされている。
アナウンスにあった情報の制限ってやつか。
タイトルが表示されている部分については閲覧することが出来るらしい。
気になる項目がいくつもあった。
中でも一番最初の項目――。
「並行世界におけるササキ リュウジからのメッセージについて、か……」
未来の俺が言っていたアイツとは誰なのか?
どうして未来の俺は世界を終末に変えたのか。
それも、これで全て分かるはずだ。
俺はその項目に触れる。
すると、目の前の映像が切り替わった。
『――よう、俺。
これを見てるって事は、未来の俺に勝てたって事だな。
自分で言うのもなんだが、良く勝てたな。
俺と全く同じルートを辿っていれば絶対に勝てなかったはずだ。
だから……これを読んでいるお前は、俺とは違う俺なんだろう』
そこには未来の俺が映し出されていた。
格好は……マント姿で上半身だけ。
うん、普通だ。そこはなんか安心した。
「あ、りゅーぅだ」
「ウッキィ」
「これ、私達にも見えるんですね」
どうやらこの映像は、俺以外にも見えているらしい。
声も聞こえているようだ。
『さて……何から話すべきだろうな。
どうして俺が世界を終末世界へ変えたのか。
その元凶は誰なのか……話すべきことは色々ある。
だがその前に一つ確認しておこう。
お前の現実は――今、どんな状態だ?』
未来の俺は、まるで画面の前に居る俺達に問いかけるように言う。
『何も変わっていなかったなら問題ない
だが、もし現実がアルタナと融合したような世界や、
江戸時代と融合したような世界になっていたら厄介なことになる』
その場にいる全員に緊張が走る。
それはまさに今俺達が直面している状況だったからだ。
『もしそうだったら、お前はこれから先、大切な人達を失う事になる
友人も、家族も……大河さんやセイランも死ぬことになる
だから、そうならない為の方法を教える
お前が未来の俺のようにならない為に――』
未来の俺の言葉に、俺は息を詰まらせた。
大切な人達が……死ぬだと? 大河さんやセイランまで……?
いや、未来の俺は戦っている最中に似たような事を言っていた。
「……最悪の可能性は、まだ消えてないって事か」
その場にいる全員の視線が、未来の俺へと向けられる。
俺達はじっと、未来の俺の言葉を待った。
読んでいただきありがとうございます
更新遅れてすいません
お詫びと言ってはなんですが、3話ほど毎日更新したいと思います
よろしくお願いします




