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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第五章

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140.終末世界に花束を 前編


 そこには未来の俺が居た。

 顔だけじゃなく、その体も露わになる。


 …………七色に光る星乳首、クジャクパンツにガーターベルト、網タイツ。


 あと手にはなんかモザイク処理された何かが握られている。

 流石、未来の俺。

 変態装備もバージョンアップされていた。


「……絵面ぁ」

「自覚はある」


 そこだけは未来の俺も、申し訳なさそうな顔を浮かべた。

 ああ、どうしようもないもんな。なんもかんも職業が悪い。

 未来の俺が、終末世界を引き起こしたっていうこの上なくシリアスな場面なのになんだこの締まらなさは。


「リュウ……?」

「そんな、どうして彼が……?」


 とはいえ、未来の俺の姿にはエイトさんもノンノンデニッシュさんも衝撃を受けている。

 井口やセイランも呆然としたまま固まっていた。


「でもどうして……? どうして未来の俺が終末世界なんて引き起こしたんだ!?」

「言っただろう? お前が――弱いからだよっ!」


 未来の俺が動く。

 見えなかった。

 気付いたら、宙を舞っていた。


「ぐっ……ごはっ!?」


 殴られた?

 いや、蹴られたのか?

 時間を止めた? いや、それなら俺にも分かるはず。

 単純に向こうが速すぎるんだ。


「リュウ!」

「先輩!」

「影共! ソイツらを足止めしろ!」


『『『『GIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII!!!』』』』


 エイトさんたちの邪魔をするように、再び影の軍勢が現れる。

 その数は、地下の更に倍以上。

 まだこれだけの数を隠していたのか。


「分断されたか……。でも空中なら」


 二段飛びがある俺に分がある。

 一瞬だけそう考え、即座に自分の思考の愚かさを呪った。

 未来の俺の縦横無尽に空を駆ける姿を目にしたから。


「クジャクパンツは宙を舞う! 空は俺の独壇場だ!」

「ぐっ……」


 クジャクパンツの羽が舞う。

 宙を自在に舞う未来の俺は、その見た目の悍ましさだけでなく、どこか神々しさすら感じた。

 駄目だ。この動きはとても二段飛び程度じゃ、対応しきれない!


「お前が弱いからアイツ(・・・)に取り込まれた! お前が弱いから全てを失ったんだ!」

「だから……なんのことだよ!」


 速すぎて見えない。

 それに腕を脱衣状態にさせられてるせいで、武器も装備できない。

 相手は未来の俺だ。完全な上位互換。素手でどうにか出来るわけがない。


「お前はこれから全てを失うことになる。なんで大河さんもエイトさんも未来に居なかったと思う? お前が(・・・)殺した(・・・)からだよ(・・・・)

「ッ……!? そ、そんなわけがあるか!」


 あり得ない。

 俺が大河さんやエイトさんを殺す?

 そんなのあるわけがない。


「事実だ。セイランも、ラヴィも……メイちゃんだってお前がその手で殺すことになる」


 嘘をついているようには思えなかった。

 俺が殺した?

 セイランも、ラヴィも、メイちゃんすらも?


「あり得ない!」

「そのあり得ない未来の結果がこの俺だ。お前は小雨の世界扉を悪用し、アルタナのモンスターを現実に解き放った。釈迦蜘蛛も黒い巨人も、瓦礫蟲も。お前がこの世界に連れて来たんだ」

「~~~~! 黙れ! 脱衣パージ――腕装備!」


 聞きたくないとばかりに、俺は未来の俺へ向けてスキルを放つ。

 だが、奴の手から装備は消えなかった。

 モザイク処理された武器が不気味に音を奏で、鞭のように伸びた。

 強かに胴体を打ち付けられ、激痛が走る。

 そのまま地面に叩きつけられた。


「ぐはっ!?」

「そんなもん、とっくの昔に対策済みだ。当然だろう。俺はお前なんだからな」


 てことは、催眠や他のスキルも対策済みだろう。

 いや、おそらく俺の持つすべてのスキルに対して、未来の俺は対策をしている。


 ――勝てない。


 勝てるはずがない。

 相手は俺で、俺よりもずっと異世界ポイントをプレイしてきた。

 レベルも、スキルも、装備も、何もかもが完全な上位互換。


「ゴアォオオオウ!」

「ウッキィ!」


 雷神形態になった雷蔵と、夜空がこちらへ駆け寄ってくる。

 雷蔵から雷撃が、夜空から炎嵐魔法が、それぞれ未来の俺へ向けて放たれる。


「お前ら、来るな!」

「――夜神」

『UGIIIIIIIIII!』


 二人の放った攻撃は、夜神と呼ばれた影が放った炎であっさりと防がれてしまう。

 いや、それどころか二人の攻撃を飲み込み、炎の龍となって、そのまま二人へ襲いかかった。


「ウガォ……」

「ウッキィ……ッ」


「雷蔵! 夜空!」


 二人とも全身に火傷を負い、所々が黒ずんで炭化している。

 死んではいないが、ギリギリだ。

 マズイ……早く治療しなければ死んでしまう。


「力の差も弁えない……馬鹿な連中だ」

「お前――がはっ」


 立ち上がろうとした瞬間、再びモザイク武器で叩きつけられる。


「誰が動いていいって言った? ……夜神」

『UGII……』


 夜神と呼ばれた影が、俺に杖を向ける。

 放たれた炎弾が、俺の足を焼いた。


「がっ――ああああああああああああああああああああ!?」

「これでもう逃げることも出来ないだろう? ああ、回復アイテムを使おうとしても無駄だぞ? 脱衣の副次効果で、お前はアイテムを取り出せても、持つことは出来ないからな」


 激痛が走る。

 滝のような汗に、激しい寒気。内側からおろし金で削られているような耐えがたい苦痛。

 今すぐ気を失いたいのに、レベルアップしたステータスがそれを許さない。


「そ、その場――」

「『その場しのぎ』は発動できないぞ? あれは、ダメージの累積は出来ない。もう一度、使いたいなら、さっきのダメージを戻すんだな」

「ハァ……ハァ、ハァ、アァ……ハァ」


 短い呼吸を繰り返しながら必死に意識を紡ぐ。

 痛い、痛い、痛い、痛い。

 

「安心しろ、簡単には死なせねーよ。お前にはたっぷり苦しんで貰わねーと割に合わねぇからな」

「じ、自分で自分を痛めつけるとか、悪趣味にも程があんだろ……。俺にMの趣味はねーぞ?」

「減らず口を」


 更にもう一発、火球が俺の足を焼く。

 激痛に耐えながら、必死に意識を繋ぐ。


「そ……ソイツは未来の夜空か?」

「いや、夜空もとっくに死んでる。コイツは夜空の力を再現し、強化した亡霊だ。雷蔵や雲母も皆死んだ。……唯一、小雨の力だけは再現できなかったがな」

「……」


 かつての仲間たちの力を再現した影。

 ならば、あの雷神と呼んでいた影が雷蔵の亡霊で間違いないだろう。

 最初に現れた無数の影たちも、待機室のメンバーってことか。


「……仲間を平気で攻撃に巻き込むなんて、俺が一番嫌いな戦法だったはずだ」


 自分の仲間を平気で攻撃に巻き込んだマザー・スネイクも。

 自分のスキルの為の生贄に夜空たちを用意していた呪術猿も。

 仲間を道具のように扱ってきた連中の末路はすべからく悲惨だった。

 だが未来の俺は鼻で笑う。


「それが出来なかったから、お前は弱いままだったんだよ。必要な犠牲と割り切ってさえいれば、結果は変わっていたのにな」

「そうか……後悔、してるんだな」

「あ?」


 怪訝そうな顔をする未来の俺に、俺は言葉を続ける。


「後悔してなきゃ、そんな台詞は出てこねぇよ。だから……少しだけ安心した」

「……」


 必死に意識を繋ぐ。

 ああ、体に体温を感じない。

 このままじゃあと数分で、俺は死ぬだろう。

 それでも喋らずにはいられない。


「なら、俺がすることは簡単だな。お前を倒して、お前にならない未来を選ぶだけだ。だって、未来は変えられるんだから」


 そう、未来は変わる。変える事が出来る。

 考えるんだ。俺の手の内は全て対策済み。

 だからといって、それがどうしたというのか。

 思考を放棄するな。

 たとえ、あと数分で死ぬとしても。

 たとえ、未来の俺が相手だったとしても、可能性を模索し続けるんだ。

 勝利の鍵となるのは――。


「とてもはやくな~れ! 『8』」


 刹那、エイトさんの声が聞こえた。

 空気の爆ぜる音と共に、エイトさんが姿を現す。

 モザイク処理された謎武器と、エイトさんの槍が激突した。


「男二人で話し合いなんて妬けるじゃないか。私も混ぜなよ?」

「邪魔だ!」

「邪魔しに来たんだよ!」


 モザイク処理された謎武器と、エイトさんの槍が激突する。


「影共を倒したか……。もう少し時間を稼げると思ったが、使えない連中だ」

「……自分の仲間をそんな風に言うもんじゃないよ!」


 縦横無尽にうねるモザイクを、エイトさんは躱し続ける。


「8、9、5、3、4、6!」

「無駄だ! 数字スキルの詳細も知っている! エイトさん! 今のアンタじゃ俺には勝てない!」

「勝てないからと諦めるような性根なら、私はとっくの昔にアイドルなんて辞めてるよ! アイドルはファンを喜ばせるために常に笑顔を忘れない! アイドルは誰よりも負けず嫌いなんだよ!」

「戯言を!」


 クジャクパンツの羽が舞う。

 エイトさんからも、無数の数字が舞い続ける。


「数字の力よ! 私の武器に宿れ!」


 無数の数字がエイトさんの槍へと吸い込まれてゆく。

 やがて槍は数字になった。

 数字の羅列が、点描画のように槍の形を成している。


「数字武器か! 懐かしいな!」

「へえ、これも知ってるんだ。流石、未来のリュウだね」


 ……なにそれ、知らない。

 数字武器って……なに?


「君は驚かないのか、俺が終末を引き起こしたことを? 俺が……君を殺したってことを」

「驚いたさ。メンバーの一人が私のクレカを勝手にリボ払いで使ってた時くらいには驚いた」

「なにそれ、酷い」


 なにそれ、酷い。

 メンバー最低じゃねーか。


「でも――それ以上に、私自身に失望したよ!」

「……なに?」

「リュウは私を救ってくれたのに、未来の私は……リュウを救えなかった。その事実が、どうしようもなく胸を締め付けた! ごめんね、助けてあげられなくて」


 その言葉に、未来の俺の手が少しだけ緩む。


「だから、同じ過ちは繰り返させない。君にならないような未来に、私が――私たちが君を救ってみせる!」

「昏睡弾!」

「すごいうでー!」


 エイトさんの動きに合わせるように、井口、セイランが攻撃を畳みかける。

 即席のコンビネーションとは思えないほどの息の合いようだ。

 その猛攻に、未来の俺は一気に後ろに飛んで距離をとった。


「……眩しいな。流石、トップアイドル」

「よせやい、照れるじゃないか」

「ああ、残念だよエイトさん。……そんな君を、二回も殺すことになるなんて、本当に残念だ!」


 ズォッ! と未来の俺の足元の影が広がる。

 この威圧感は……まさか!?


「――雷神!」

『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』


 迸る青い稲妻と共に、破壊の化身が姿を現す。

 まさかもうCTが終わったのか。

 まずいぞ。流石にもう一度、あの攻撃を受けたら――。


「心配するな! 私が居るッッッ!!」

「ノンノンデニッシュさん!?」


 刹那、ノンノンデニッシュさんが俺たちの前に出る。

 

 ズドォォォォンッッ!


 爆発。

 粉塵が舞い、周囲の建物が崩壊する。


「ッ……ど、どういうことだ?」


 だが破壊の規模に対して、俺たちには瓦礫一つ飛んでこなかった。

 視界が晴れる。

 そこには蜘蛛の巣のように張り巡らされたローションによって絡め捕られた瓦礫の山。

 そして無傷のノンノンデニッシュさんの姿があった。


「言っただろう? 私は死んだ原因に対して、耐性を獲得する。もうその攻撃は、私には通用しない!」


 わずかに焦げたブリーフの汚れを払いながら、ノンノンデニッシュさんは何でもないことのように言う。

 耐性って……まさか自分だけじゃなく、自分が作り出したローションにも適用されてるのか?

 じゃなければ、この状況の説明がつかない。


「なん、だと……!?」


 流石にこれは予想外だったのか、未来の俺すら驚愕の声を上げる。


「そして更に――ドM返し!」

「ぐっ……がはっ!?」


 突如として未来の俺が苦しみだす。

 今の攻撃はいったいなんだ?

 ノンノンデニッシュさんがこちらへ近づいてくる。


「大丈夫かい、リュウ? 今のうちに、回復する。少々不快だろうが我慢してくれよ。――癒しのローション」


 ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞっ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~……」


 ノンノンデニッシュさんがマットプレイのように俺に体をこすり付ける。

 すると、全身の傷が治り、焼け焦げていた足も元通りになった。

 だが同時に、例えようのない感覚が全身を駆け巡る。

 ぬるっとして、なんかこう……不快な……いや、そんなこと思っちゃ駄目だ。

 本人は真剣なんだぞ。


「癒しのローションは呪いも払う。これで脱衣の効果も解除できたはずだ」

「あ、ありがとうございます……」

「むしろ抵抗なく受け入れてくれてありがとう。これ……みんな、拒否するんだ。性能は最高なんだけど」


 そりゃそうだよ。

 ブリーフ一丁のおっさんにローションプレイかまされるとか、心に癒えない傷ができる。トラウマものだ。


「ちなみに今の攻撃は?」

「受けたダメージをそのまま相手に返す『ドM返し』だ。とはいえ、自分のダメージがゼロになるわけじゃないし、返せるダメージ量に限界はあるがね」


 ドM豚野郎すげぇ。攻守回復共に高水準。

 名前も見た目も最低にクソだけど、本当に強力な職業だ。


「……ノンノンデニッシュさん、俺は」

「何も言わなくてもいいさ。だいたいの事情は把握した。だが、私にとっての恩人は君だ。彼じゃない」

「でもどっちも俺だ」

「いいや、別人だよ。少なくとも、私や彼女にとってはね」


 ノンノンデニッシュさんは喋りながらも、体からローションを飛ばし続ける。

 それが絶妙な牽制となって、未来の俺や影たちを寄せ付けない。

 エイトさんもこちらにやってくる。


「私の知っているリュウは、どんな時だって仲間を見捨てなかったよ」

「そうだとも。私と妻に希望を与えてくれた。どんな時でも諦めない不撓不屈の心の持ち主だ」


 エイトさんとノンノンデニッシュさんの声が重なる。


「「私にとってのリュウは君だ。彼じゃない」」


「ッ……」


「未来は変えられるんでしょ? なら今ここで変えてみせようよ! 私とリュウとノンノンデニッシュの三人で! 諦めるのはまだ早いよ!」

「はは……本当にカッコイイな、エイトさんは」

「むぅ、そこは可愛いって言われた方が嬉しいんだけどな」


 ごめんなさい。

 でも本当にカッコいいよ、二人とも。

 未来の俺に動揺してしまった俺よりもずっと。


「でもエイトさん、一つだけ勘違いしてるよ。俺は……全然、諦めてなんていない」

「……! いいね、それでこそリュウ!」


 力の差がなんだ?

 未来の俺がなんだ?

 その程度で折れるな。

 考えろ、足掻け、勝利の糸口を見つけろ。


「二人のおかげで策を思いついた。……エイトさん、ノンノンデニッシュさん、もう少しだけ時間を稼いでくれないか?」

「何か思いついた?」

「ああ、上手くいくかは賭けだけどやってみる価値はあると思う」


 俺の言葉に、エイトさんとノンノンデニッシュさんは笑みを浮かべる。


「その言葉を待っていたよ、リュウ」

「ならせいぜい時間を稼ごうじゃないか。耐えるのはドMの本懐だ」


 ありがとう、二人とも。

 さあ、逆転の一手を打とうじゃないか。

 その為に――。


「まずは――服を脱ぐ!」


 変えてみせる。

 このクソッたれな未来を。

 そして――俺自身を。



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― 新着の感想 ―
こンな場面でも、先ずは脱ぐの..ネ...っ wwww
変態の度合いがますます高くなって絵面がものすごいことになってしまいましたね。 もともとコミカライズ(コミック化)アニメ化は難しいと思っていましたが、ここまでくると もはや「不可能」では?
うん、とってもアガる展開なのに絵面が凄いwww ただ、未来デニッシュさんの恩人はむしろ未来リュウですよね? という冷静なツッコミが頭によぎってしまいましたw
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