129.それは果たして本当に魔女と呼べるのか……?
魔女っぽい姿の女性が、怒りの形相でこちらに近づいてくる。
いったいどこにいたのだろうか?
……いや、祠を壊してすぐに出てくるとか、タイミングが良すぎないか?
「ウガゥ……」
「ウキキ……」
雷蔵や夜空が武器を構える。
気が早いって。
今回はサブクエストだから、戦闘はないはずだ。
とはいえ、ノンノンデニッシュさんの時のように、そのままメインストーリーに移行する場合もあるから、いつでも動けるように気構えておく方がいいのは間違いないか。
「おい、お前、『ぷれいやー』だろ!」
「……何故、そう決めつけるんだ?」
……近くで見るとかなり小柄だな。
セイランよりも少し大きいくらいか?
声は中性的だが、身なりからして多分、女性……いや、女の子か?
せいぜい中学生くらいにしか見えない。
つまり魔女っ子か。
魔女っ子はこちらをビシッと指さしてくる。
「とぼけても無駄だ! こっちはお前らみたいな怪しい連中が何度も何度も祠をぶち壊して頭に来てるんだ! 直す方の身にもなれってんだ!」
「……え?」
祠を直す?
この祠って時間経過で直るんじゃないの?
俺は呪い人形に目をやると、彼女はこくりと頷く。
「……祠は時間経過で直るんじゃないのか?」
「ああ、少し前まではそうだった。だがお前らぷれいやーが何度も祠をぶっ壊すせいで、自動修復が機能しなくなったんだ! ふざけるな!」
お、おぅ……それはなんとも……。
『……エェー』
呪い人形もこれは予想外だったようで驚いている。
「体が8みたいな化け物や、パンツ一丁のハゲ親父、バニーガールみたいな際どい姿の女! 後は……ああ、全身黒タイツ男も居たな! 祠を壊した連中は、どいつもこいつも怪しさ満点の姿で、皆一様に『ぷれいやー』と名乗っていた! だからお前も絶対に『ぷれいやー』に違いない!」
「……」
どうしよう、説得力が凄い。
最後の一人以外は、多分、全員、俺の知っている人たちだ。
エイトさんに、ノンノンデニッシュさんに、大河さん。
……皆、祠壊してたのか。
そりゃあ、そんなポンポン壊されれば、システムに不具合くらい発生するわ。
「その……ごめんなさい」
「うむ! 素直に謝れるのはいいことだ! だが許さん!」
魔女っ子はたいそうおかんむりである。
「あの……どうすれば許してもらえるかな?」
「直すのを手伝え! そうすれば許してやる! そもそも何故ここに来た? 目的はなんだ?」
「えーっと、ここに来れば魔女の弟子に会えると聞いて……」
「何? 魔女様の弟子? そんな者が居るなど、聞いたことがないぞ?」
意外そうに驚く魔女っ子に、俺は首をかしげる。
というか魔女様?
「つかぬ事を聞くけど、君が魔女の弟子とかじゃないのか? なんかいかにもそれっぽいし?」
「ハッ、ボクが魔女様の弟子などと大それたもののわけないだろ! ボクはただの魔女様のファンだ!」
「……ファン?」
魔女っ子はキラキラと目を輝かせて。
「ああ、ファンだ。お前らぷれいやーなら当然知ってると思うが、このアポリスの町には古くから魔女様が住んでいるという伝説がある。魔女様はボクにとってあこがれの存在なんだ!」
いや、伝説って言うか、割と普通に郊外に住んでたような気もするけど。
もう見た目、完全にザ・魔女って感じの見た目だったし。
『……認識阻害ノ魔法ヲ使ッテタ。ダカラ、長年誰ニモ気付カレナカッタ』
「……なるほど」
呪い人形がぽそりと耳打ちしてくれる。
認識阻害の魔法――スキルか。だからあんなコテコテのルックスでも身バレせずに済んでたのか。
おそらくは最初から魔女と認識していれば、効果はないのだろう。
プレイヤーにはバレるが、現地民には正体はバレない仕様って訳だ。
「……魔女に憧れるって大丈夫なのか? ほら、宗教的に」
「だからこうして郊外に住んでるんだ。ほら、そこにボクの家があるだろ?」
「あ、ほんとだ」
魔女っ子の指さす方向を見れば、森の木々に隠れて小さな小屋のような建物があった。
よく見なきゃ気付かないな、ありゃ。ボロボロだ。
てか、普通に迫害されてんじゃんこの子。
「この祠はかつてその伝説の魔女様が作ったとされる祠で、ボクにとっては魔女様に繋がる唯一の手掛かりだ! だからボクは怒ってるんだ! お前らぷれいやーは魔女の伝説を足蹴にしている!」
「いや、それは――」
俺は事情を説明しようとしたが、その前に呪い人形が前に出た。
『悪イケド、ソレハ筋違イ』
「ぬぉ!? なんだ、コイツ!? に、人形が喋ってる?」
『アナタノ言ウ通リ、コノ祠ハ魔女ガ作ッタ。デモ彼ハ、ソノ魔女カラ全テヲ受ケ継イダ正当ナ後継者。ドウ扱オウトモ、彼ノ自由』
「な、なんだと……!?」
呪い人形の言葉に、魔女っ子は膝から崩れ落ちる。
そうか、この祠を作ったのは、魔女さんだったのか。
パルムール王墓へ向かうには、この帰らずの森を通らなければいけない。
その行き方は魔女さんだけが知っている。
その理由も、帰らずの森の結界装置――つまりこの祠を魔女さんが作ったのであれば納得だ。
「……つまり、お前は魔女様の弟子だったのか……? こんなパンツ一丁の変態男が……!?」
「いや、違うけど」
弟子じゃなくて、どっちかと言えば財産の相続人です。
悪かったな、パンツ一丁の変態男で。
「そんな……そうとは知らず、ボクはなんて無礼を……」
「いや、だから違うって」
話聞かねえな、コイツ。
魔女っ子はバッと顔を上げると、俺の方を見た。
「お願いします! どうかボクを貴方の弟子にして下さい!」
「やだよ!?」
なんでそんな流れになるんだよ?
意味分かんねぇよ。
てか、コイツこんな見た目で魔女の弟子でもなんでもなかったのかよ。
じゃあ本物の魔女の弟子はどこにいるんだ?
『おめでとうございます。サブクエストをクリアしました』
『メインストーリーが解放されます』
「……え?」
なんで?
不意に頭の中に流れたクリアアナウンスに俺は首をひねる。
クリア条件は魔女の弟子に出会うだ。
コイツが魔女の弟子でないなら、その条件は満たしていないはず。
なのにどうしてだ?
『貴方ハ、先代魔女カラ全テヲ継承シタ者。ツマリ実質魔女』
「……え?」
魔女って俺のこと?
魔女の財産を相続したから、実質二代目魔女ってこと?
いやいや、その理屈はおかしいだろ?
まず性別違うじゃん。
『今ノ時代ハ、ジェンダーフリー。魔女トハ称号デアッテ、性別ハ関係ナイ』
「関係あるだろ!? あとなんでお前がそんな言葉知ってんだよ!?」
どこで覚えた、そんな言葉?
「はい! 私が教えました!」
「井口ぃ!」
手を上げる井口に、俺は眩暈がした。
コイツ、俺が居ない間に何無駄な知識を仕込んでるんだ。
「お願いします、二代目魔女様! どうか! どうかボクを弟子にして下さい!」
「……」
どうやら俺は職業『変態貴族』兼『存在破廉恥男』兼『魔女』になってしまったようだ。
……どうしてこうなった?
新年あけましておめでとうございます
更新が遅れてしまい大変申し訳ありません
元日から胃腸炎で寝込んでおりました
人生で初めて正月太りならぬ正月痩せを経験しました
体重が4キロも落ちたぜ!ちくしょう
というわけで、今年も何卒宜しくお願い致します




