128.お主、あの祠を壊したのか……?
魔女の弟子?
魔女っていうと、俺が飲み会してたあの魔女だよな、多分。
「呪い人形、魔女さんに弟子っていたのか?」
『……? 多分、居ナカッタト思ウ』
「そうだよな。日誌もそれらしい人物は書いてなかったし……」
一応、掲示板でも調べてみるか。
魔女の弟子と打ち込んでみる。
「……特にそれらしい書き込みはないな」
検索ワードで引っかかる本文やスレッドタイトルは出てこない。
まあ、メインストーリーはプレイヤーによってかなり差があるみたいだしな。
(もしくはぽるんがさんが消した、か……?)
様々な情報を独占し、プレイヤーに高値で売り付けてるらしいし。
あり得なくはないだろう。
個別に情報が欲しい場合は、ぽるんが(管理人)に直接メッセージを送ればいいそうだ。
(メッセージを送るだけで10ポイントかよ……)
取れるところでしっかりと取ってやがる。
しかも相手がログインしていなければ、返信が来るまで時間もかかる。
掲示板には管理人がログインしているかどうかが表示されて、分かる仕組みになっている。
それを確認すると、今はログインして居ないようだ。
(ならメッセージを送るだけ無駄か……)
現実と異世界ポイントの流れる時間が違う以上、いつまで待てばいいか分からないし、時間の無駄だ。
「帰らずの森ってのは分かるか?」
『ソレナラ分カル。アポリスノ町カラ西ニアル。パルムール王墓ヘ行ク為ノ森』
「アポリスの町か。分かった、ありがとな」
帰らずの森で魔女の弟子と出会う。
前回がグランバルの森で終わったから、また向こうに移動しなきゃいけないのか。
まあ、小雨の『空間移動』があれば、大した問題じゃないか。
「皆、聞いてくれ――」
雷蔵たちにサブクエストの内容を伝える。
装備やアイテムを整え、遠征メンバーを選出。
「満月、遠征組の方は頼んだぞ」
「ウキキッ!」
遠征組の方は、射手猿の満月に任せておけば大丈夫だろう。
美味しい餌や、交渉に使えそうなアイテムもいくつか渡しておく。
仲間が増えればよし、増えなくとも、マッピングを進めればおそらく新しいフィールドが解放される。
そうなれば、出現するモンスターの種類も増えるだろう。
情報と、報酬の防具が手に入るだけでも成果としては十分だ。
「それじゃあ、行くか」
俺はサブクエストを選択する。
『サブクエストを開始します』
『クリア条件 帰らずの森で魔女の弟子に出会う
成功報酬 緑の鉱石、3,000イェン』
――視界が切り替わり、俺たちはグランバルの森に移動した。
俺はさっそく小雨を召喚する。
「んじゃ、小雨、『空間移動』を使ってくれ」
『ボー♪』
小雨は俺の周りをクルクルと回る。
俺と小雨の体が白い光に包まれた。
再び視界が切り替わり、アポリスの町へと転移する。
場所はステージ5の舞台だった養護院の近くにある裏路地だ。
「おっと、まずはローブを羽織らねば」
人目が少ないとはいえ、町中だ。
俺は収納リストからあらかじめ用意しておいたローブを羽織る。
派手なマントは目立ちすぎるからな。
これでどこからどう見ても普通の旅人だ、
でもローブの下は変質者! ちくしょう!
「それじゃあ、帰らずの森ってところに向かうか」
『ボー』
町を出るまでは、小雨には一旦カードに戻ってもらう。
ついでにあの養護院がどうなっているか、遠巻きに確認しておいたが、特に人が出入りしている様子はなかった。
廃墟のまま放置されている。
立ち入り禁止の立て札があるだけだ。
地下の施設とかもそのまま放置してんのか?
『……コレ、結界ガ張ラレテル』
「結界?」
『入レバ直グニ術者ニ感知サレル。迂闊ニ近ヅカナイ方ガ良イ』
「分かった」
しっかりと対策済みってことか。
無駄に騒ぎを起こしたくないし、俺たちはそのまま帰らずの森へと向かった。
呪い人形に案内してもらい、帰らずの森へとやってきた。
帰らずの森は薄暗く鬱蒼としており、いかにも何か出そうな雰囲気の森だ。
この森の中に魔女の弟子が居るのか。
『コノ森ハ侵入者ヲ迷ワセル。普通ニ入レバ二度ト出ラレナイ』
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
『アレ……』
呪い人形は森の入り口にある祠を指さす。
石が積み上げられて作られた古い祠だ。
『アノヲ壊セバイイ』
「……それっていいのか?」
祟りとかあるんじゃないの?
『アレガ森ノ結界ノ制御キー。壊セバ結界ハ作動シナイ。大丈夫。時間ガ経テバ元ニ戻ル』
「それなら大丈夫か」
俺は呪い人形の言う通り、祠を壊す。
すると、パリンッと何かが砕けるような音が周囲に響いた。
結界とやらが破壊されたのだろう。
「よし、これで入っても大丈夫だな」
「おい、貴様! 何をやっている!」
森へ入ろうとすると、誰かに呼び止められた。
振り向けば、誰かがこちらへ向かって駆け寄ってくる。
真っ黒なローブに身を包み、つばの広いとんがり帽子。手には捻じれた杖を持つその姿はいかにも魔女といった風体だ。
飲み会した魔女さんが若くなれば、きっとこんな感じだろうと思えた。
「な、なんてことを……! まさか、その祠を壊したのか!?」
魔女っぽい女性は壊れた祠を見て、わなわなと震えている。
ひょっとしてこの人が魔女の弟子さんだろうか?




