127.仲間が増えるよ! やったね雷蔵!
「おー、そうかそうか。仲間になってくれるか」
「ギッギャゥ! ギャッギャ♪」
ゴブリンは嬉しそうに頷く。
よし、これで3匹目のゴブリンゲットだ。
ホブゴブリン1匹と合わせて、これで4体。
「久々に大活躍だな――『美味しい餌』」
ショップで購入した『美味しい餌』はゴブリンたちに大好評だった。
警戒されないように近づき、餌を投げる。
餌に食いついたら、また餌を与えて警戒心を緩める。
後は交渉して、仲間に引き入れる。
そんな感じで、俺はゴブリンたちのカード化に成功した。
「……ウガォゥ」
そのやり取りを、雷蔵はしょんぼりしながら眺めている。
一度、俺のやり方を真似てやらせてみたのだが、どうにも雷蔵の見た目が怖いらしく、ゴブリンたちは逃げてしまうのだ。
「進化したとはいえ、元々は同じ種族のはずなんだけどなぁ……」
「ウガ……」
雷蔵はすっかり落ち込んでしまった。
体育座りで、地面にのの字を書いている。
こんな雷蔵を見るのは初めてである。
(……マッピングも9%まで広がったし、今回は次がラストかな)
周回は当然するつもりだが、せめて一回くらいは成功させてやりたい。
出てくるモンスターはゴブリンかホブゴブリンだけだったし、出来ればラストは雷蔵に任せたい。
ふーむ、他に何か雷蔵にアドバイス出来ることはないか……?
(俺と雷蔵の違いはなんだ? 見た目以外には何か……あっ)
ふと、あることを思いついた。
せっかくだし、試せるものは何でも試しておこう。
「雷蔵、一つ、アドバイスがあるんだが、やってみるか?」
「……ウガォゥ?」
俺は落ち込む雷蔵の肩に手を置く。
すがるような視線を送る雷蔵に、俺は笑顔でこう言った。
「――服、脱いでみようか?」
「………………………………」
雷蔵の顔から表情が消えた。
そんな蔑みの目を向けないでくれ。
「いや、ほら。お前、見た目だけならホブゴブリンとそんな変わらないじゃんか。でも相手はお前と違ってなにも装備してない。その武装が、相手に余計な警戒心を抱かせてるんじゃないか?」
その点で言えば、俺はほぼ全裸。
武器どころか服すら身に着けていない。
対して雷蔵は、体格以外ホブゴブリンと変わらぬ見た目ではあるが、完全武装状態。
相手にはどちらが警戒して見えるだろうか?
……いや、割とどっちもどっちな気もするが、少なくとも結果として俺は成功し、雷蔵は失敗している。
「……ウガ」
ややあって、雷蔵は剣と鎧を脱ぎ捨てた。
おお、がっしりとした筋肉である。
最初に出会った頃と同じ腰布だけの姿になると、ちょうどホブゴブリンが一体、茂みから姿を現した。
今まで出会ったホブゴブリンに比べて線が細い。
腰布だけじゃなく、胸にも布を巻いてるし、ひょっとして雌だろうか?
「ほら、雷蔵。やってみろ」
「ウガゥ」
雷蔵は俺から手渡された『美味しい餌』を片手に、ホブゴブリンに近づく。
ガッチガッチに緊張してるなぁ。大丈夫か?
「ウ、ウガォゥ!」
「……ウギャゥ?」
まるで花束を差し出すかのような仕草の雷蔵に、ホブゴブリンは少し驚くような仕草をする。
だが驚いてはいるが、逃げようとはしない。
やはり鎧を脱いだのは正解だったな。
「ウガ、ウガーオ……」
「……ウガゥ?」
「ウガ! ウガガ! ウガゥ!」
「……ウガ」
なんかウガウガ言ってるようにしか聞こえないな……。
「がんばれ、らいぞー」
「熱烈過ぎて勘違いされませんかね? ぶっちゃけあれ、告白ですよ?」
「ウッキィ~♪」
『ボー』
そんな雷蔵のやり取りを、お菓子とジュース片手に眺める一行。
完全に遠足気分である。
いや、お菓子あげたのは俺だけどさ。
というか、井口。お前、雷蔵の言葉分かるのか?
「……ウガゥ」
「! ウッガァ~~♪」
そうこうしているうちに、雷蔵がついに交渉に成功した。
頬を染め、コクリと頷くホブゴブリンを、雷蔵が思いっきり抱きしめている。
雷蔵は嬉しそうにホブゴブリンを連れて、俺の方へとやって来た。
「ウガォウ♪」
どんなもんだい、とドヤ顔の雷蔵。
そんな雷蔵にぴったりと寄り添うホブゴブリン。
……うん。井口じゃないが、これ仲間にする交渉じゃないな、告白だ。
大丈夫か雷蔵? お前今、けっこう大事なことをしたっぽいぞ?
(……まあ、成功したからいいか)
俺は考えるのを止めた。
後は雷蔵とホブゴブリンに任せよう。
ホブゴブリンをカード化すると、ちょうどアナウンスが流れた。
『おめでとうございます。デイリークエストをクリアしました』
白い光に包まれ、俺たちは待機室へと戻るのだった。
今回のデイリークエストで仲間になったのは、ホブゴブリン2体とゴブリン3体。
早速カード化を解除する。
「雷蔵、お前がゴブリンたちのまとめ役だ。頼めるな?」
「ウガォゥ」
ゴブリンたちのリーダーは勿論、雷蔵にやってもらう。
合成(共存)はまだ行わない。
まずは待機室の環境に慣れてもらい、皆に馴染んでからだ。
「ウガ~♪ ウガウガァ~♪」
「ギギゥ♪ ウガギゥ~♪」
最後になったホブゴブリンはさっそく雷蔵と仲良くなっている。
他のゴブリンたちはまだ警戒モードだが、いずれは馴染むだろう。
その辺は、雷蔵の手腕に期待だな。
「手に入った防具はどれも性能はいまいちだったな……」
ポイントと共に入手できた装備は『古いマント』と『壊れた籠手』。
どちらもほぼハズレ装備だ。
討伐クエストと同じように、回数をこなせばよりいい装備が手に入るだろう。
遠征は可能みたいだし、もう何度か周回したら、遠征メンバーも加えるか。
「仲間が増えるとなると、待機室ももっと広くしないとな」
前回、『温泉』が解放されたときに、そちらも可能になっていた。
特に必要がなかったからしなかったが、今後は必要になるだろう。
土地を広げるのにかかるポイントは100ポイント。
そのくらいなら全く問題ない。
増えた土地には、また森林や川、池などを増築する。
「さて、デイリークエストを周回するか……」
その後、俺たちは『調査』クエストを周回し、仲間を増やしていった。
マッピングを広げると、出てくるモンスターの種類も増えていった。
討伐クエストで戦ったモス・ボーイやモス・ダディも仲間にすることが出来た。
『マッピングが100%になりました』
『新たなマップが解放されます』
どうやら『調査』クエストは今までと違い、複数のフィールドが用意されているらしい。
新たに解放されたフィールドは森林だった。
こちらでは シャドー・スネイクや森猿。
狂鎧大猪の下位種である鎧猪なんてモンスターも出てきた。
他にも初めて見るモンスターも何匹か仲間に出来た。
その中でも特筆すべきはコイツだ。
『モンスター図鑑№24 悪夢妖狐
アルタナ全域に生息する狐のモンスター
知能が高く、様々な支援魔法や妨害魔法を習得する
カーバンクルの血を引いていると言われているが、詳しくは不明
討伐推奨LV6』
ようやく見つかった雲母と合成(共存)可能なモンスターだ。
見た目は狐だが、尻尾が三本ある。
「きゅー、きゅきゅ~♪」
「コンコォーン♪」
悪夢妖狐は三匹仲間に出来た。
雲母もようやく増えた仲間にご機嫌だ。
これで雷蔵、雲母の合成候補も集まった。
「さて、後は遠征組に任せるか。次は――」
俺は画面を開いて、フレンドリストを確認する。
「……大河さんとエイトさんはログインしてないのか」
二人ともまだログインしていなかった。
まあ、売れっ子エロ漫画家とトップアイドルだもんな。
忙しいのかもしれない。
事前にライ~ンでメッセージは送っておいたし、連絡が来るのを待とう。
(それじゃあ先に、メインストーリーを進めるか)
俺はメインストーリーの項目をタップする。
『メインストーリー7を開始するには、以下の条件を満たしてください』
『サブクエスト
帰らずの森で魔女の弟子と出会う』
「……魔女の弟子?」




